“過保護な親”を持つ女性が全身に刺青を入れたワケ「今でも両親に会うときは長袖長ズボン」
フリーランスの美容師をしながらグラビアモデルとしても活動するキヅキさんは、エキゾチックな顔立ちのなかでも涼しげな目元が特に強い印象を残す。下唇から牙のように伸びたピアスも彼女のシンボルだ。胸元に天使の刺青が顔を覗かせ、四肢も大きめの墨が覆っている。
整った顔貌をしているが、本人は「昔は本当に自分の顔が好きじゃなかったんです」と振り返る。原因は、幼い頃の記憶によるところが大きいという。
「カナダで生まれ、高校卒業までを過ごしました。姉と私が生まれる前に両親がカナダに渡り、向こうで自営業をやっていたんです。カナダの田舎で暮らしていて、地元の学校にはさまざまな人種が通っていました。幼いころから、何となく『白人が美しい』という価値観が定着していて、モテるのも白人。アジア人である私は、見た目を人並み以上に気にしていたものの、自分の容姿にはあまり自信が持てませんでした。ようやく最近になって、SNSなどで写真をあげて『可愛い』『きれい』と言ってもらえて、少し自分の容姿が好きになれそう……という段階です(笑)」
雑多な人種に揉まれ、“日本人”であるキヅキさんはこんな場面にも出くわした。
「小学生のときに、同級生から『お前の国って、パールハーバーやった国だろ?』って突然言われて。私、当時は真珠湾攻撃が何かも知らなかったので、ただ黙るしかなかったんですよね。私がいた地域では、結構大人になっても“国籍ジョーク”のようなものが横行していたように記憶しています」
下位に位置していたというキヅキさんのスクールカーストが上がらないのは、人種や国籍以外にもこんな原因があった。
「両親が過保護で、門限が5時だったんですよね。もちろん、日本のように治安がいいわけではないので、今にして思えば両親の判断も理解できます。でも当時は、ホームパーティーに呼ばれても参加できず、そのうちどんどんクラスメイトのイベントから取り残されていくことに焦りを感じていました。住んでいた地域は娯楽施設がないうえに家がかなり広大なので、かなりの頻度でホームパーティが開催されていたんです。いわゆる“ノリが悪いやつ”みたいな位置づけでした。
姉に相談すると、『卒業して仕事をするようになると、ホームパーティを含む流行なんて、どうでもよくなるよ』って言われて(笑)。今にして思えば、これも本当にその通りでしたけど。ただ、当時の私にとっては由々しき問題です。『どうして誘ってくれないの?』と同級生に聞いて、『だって親が過保護だから』と言われたとき、さすがに堪えましたね」
高校卒業までをカナダで過ごす
「門限が5時」だからホームパーティーに参加できず…
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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