仕事

「あの女優の紙コップが欲しい」機内で同乗した有名女優の“使用済みコップ”を欲しがる迷惑客にとった対応

ベテランCAが出した結論

蒼井凜花さん

元CAで現在は作家として活動している蒼井凜花

 しばらく押し問答が続いた結果、ひとまず落ち着いてもらおうと、筆者は「パーサーに相談しますので、お席でお待ちください」と席にお戻りいただいた。  しかし、着席後も彼は後ろの席を振り返ってはK子さんを盗み見るばかり。他のCAたちにも迷惑客の情報を共有し、前方のギャレーにいるパーサーに事の顛末を話しに行った。  この日のパーサーは、切符のいいアネゴ肌で知られたベテランCAだった。筆者が困惑しながら説明すると、「そんなにしつこい客なら、これを渡してらっしゃい」と、パーサー自ら、真新しい紙コップを棚から取りだし、口紅を塗った唇でカップの縁をパクリ。深紅のルージュのついた紙コップを渡してきたのだ。  筆者が「えっ?」と思う間もなく、「これで問題ないでしょう?そろそろ着陸だから、準備をして」と涼しい顔。

男性客のリアクションは…

 そして、飛行機は目的地に到着。筆者は機内備え付けのエチケット袋に紙コップを入れ、くだんの男性客に接近し、小声で「今回だけですよ」とパーサーの口紅がついた「それ」を丁重にお渡しした。  何も知らない男性客は、目を潤ませ「ありがとう。一生大切にするよ」とお宝ゲットと言わんばかりの満面の笑み。  そのようなハプニングなど知るはずもない女優のK子さんは、CAたちに「お世話さまです」と一礼しながら華麗に降りて行った。 「有名税」と言えばそれまでだが、迷惑客の中にはストーカーまがいの行為をする客もいる。でも、そこはプロフェッショナルのCAたち。どんなに大金を積まれても、お客様の使用済みカップを売るような行為はしないので、有名人の皆さんは安心してほしい。  それにしても、迷惑客をいとも簡単に撃退したパーサーはお見事だった。 文/蒼井凜花
元CAの作家。日系CA、オスカープロモーション所属のモデル、六本木のクラブママを経て、2010年に作家デビュー。TVやラジオ、YouTubeでも活動中。
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