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外国人旅行者が“子供の頃から憧れていた”日本で「感動したこと/残念に感じたこと」

夢のような一夜、ライブ中につい口ずさむと…

石原慎一さん

ミニライブ終演後に石原慎一さんとツーショット(写真:ハファエル・ヒベイロさん提供)

ライブイベントは北新宿のカフェ兼ライブハウス「ドルチェ・ヴィータ」で行われた。地下フロアのアットホームな雰囲気の会場だ。 石原慎一さんとゲストの共演での演目はもちろん大半がアニメと特撮の歌。披露された歌のほとんどをヒベイロさんは知っていたそうだ。憧れの日本での降って湧いたような年越しミニライブで、大好きな楽曲を歌手本人が歌うのを聞いて感極まり、ヒベイロさんも自然と歌声を合わせると、隣の女性客が自らの唇に人差し指を縦に当てて、静かに聞き入ることを促されたという。 ブラジルのライブでは好きな曲が演奏されたら自由に歌うのが普通なのに……と文化の違いを感じたそうだ。 ともあれ存分に楽しんだミニライブの後、石原慎一さんといくつか言葉を交わすことができたのは、恒例で行われている花園神社への初詣の際だった。 石原さんから自身の過去のブラジル・サンパウロ公演を見てもらえたかとたずねられると、見たかったが住んでいる街が遠いので……と正直に語った。同じブラジルといえどもヒベイロさんの暮らすフォルタレーザとサンパウロとでは距離が3,100kmと、東京・マニラ間より離れているのだ。

辺境の地方都市で孤軍奮闘

4歳の誕生日パーティー

和製特撮ヒーローのグッズに囲まれたヒベイロさん4歳の誕生日パーティーで(写真:ハファエル・ヒベイロさん提供)

人口約1145万人を擁するサンパウロは南アメリカ最大の商業都市だ。ブラジルの文化や経済に関する情報やイベントはこの街に集中している。そんな中心地から遠く離れたフォルタレーザに住むヒベイロさんの近辺で、いま日本の特撮ヒーローに変わらぬ情熱を注いでいる同志はわずかだという。 近年の日本アニメの爆発的な人気にもかかわらず、特撮ヒーローファンが再び増える兆しは伺えない。この度の日本旅行は、愛する特撮ドラマについて、ブラジルにいては解り得ないことを追求するのが主な目的だった。しかし、日本で撮った動画や写真などを独り占めするのではなく、知り得たことや特撮の現在地をブラジルの特撮ドラマ系YouTuberに託してファンの輪を広めたいのだという。 たかが子供向けの特撮ドラマと蔑む人もいるだろう。しかし、こうした草の根で日本文化を広める日本好きの外国人がいることと、ソフトパワーとしての文化の持つ力がいかに日本と各国の相互理解に有益かを認識し、評価すべきだろう。 ヒベイロさんは、再び日本に行ったら今回とはまったく異なる特撮の情報が得られると確信している。具体的な再渡航の計画はないが、ブラジル辺境の地方都市で再び日本を訪れる夢を温めている。 <取材・文/仁尾帯刀(海外書き人クラブ/ブラジル在住)>
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