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“看板の下敷きに”車椅子になったアイドルの今。事故から6年、自分を「唯一無二」と思えるようになるまで

「猪狩さんにしかできないことがある」と言われた

猪狩ともかさん――確かに、場の空気もそちらの方が気持ちいいですね。 猪狩:迷惑をかけているという意識がずっとあったんですが、ダンスの先生が「猪狩さんが加わることで新しいパフォーマンスが生まれるよ」と言ってくれて、自信を持てるようになってきましたね。入院していた時にも看護師さんから「仮面女子は、正直言って猪狩さんがいなくても回る。でも、猪狩さんにしかできないことがある」と言ってくれたんです。勇気付けられましたし、今でも思い出す言葉です。 ――猪狩さんにしかできないことはなんだと思いますか? 猪狩:車椅子でアイドル活動をしていることは唯一無二だと思います。また、一人ではなくグループでパフォーマンスを行うということは、フォーメーションなども含めて他ではできないことだと思っています。 ――猪狩さんがいることで、これまで仮面女子を知らなかった人にもリーチするきっかけにもなっていると思います。 猪狩:ありがとうございます。

車椅子になって「変わったこと」と「変わらないこと」

――事故後、歌やパフォーマンスに対しての向き合い方は変わりましたか? 猪狩:意外とそこは変わっていません。車椅子に乗るようになったという「状態」が変わっただけで、思いは同じですね。 ――では、生活の中で喜びを感じるポイントが変わったなどありますか? 猪狩:怪我をした直後は、当たり前だったことがこの先もうできないんじゃないかと思いました。例えば、この体でスポーツなんて……とも思いましたが、スキー板に椅子をつけた「チェアスキー」というものがあることを知って。チャレンジした結果、「車椅子でもゲレンデにこれるんだ」と嬉しくなりましたね。それに、小さいことでも嬉しくなれるようになりました。例えば、床に落ちたものが拾えるようになった時は喜びを感じますね。 ――自分が体験してみないとわからないことって多いですよね。 猪狩:それまでだったら、坂道になっているなんて考えたこともなかった道が、車椅子になって、すごく大変な坂だったりと気付かされたりすることも多いですね。他にも「この駅は、遠回りしないとエレベーターに乗れないんだ」とか、世の中がどれだけ健常者目線で作られているのかということを痛感しました。 先日、左利きの方と話していた時に、その方が「社会は右利き用にできている」という話をしていました。自動改札のICカードをかざす部分も右にありますし、ハサミも右利き用ばかり売っています。人間って、マイノリティになってみないと気づけないんだなと思いました。
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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