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「娘を注意した教官に二度と会わせないで」“度を超えた要求”する自動車教習所のカスハラ客たち

教官を指定してくるようになり…

翌日になると母親から電話で「昨日は娘が〇〇という教官にこんなことを注意された。だから二度とその教官には会わせないでほしい」とまくし立ててくるのです。当然、技能練習ごとに教官を変えていくことになるわけですが、それにも限界があります。次第にその母親は、どの教官なら娘のことを注意しないのか、毎日娘から聞き取りをして、教官を指定してくるようになりました。 教官を指定すること自体は問題ありませんし、そういった指名制度のようなものは多くの教習所で用意しています。しかし、その母親の要求は、ほんの些細な注意すらするなというのです。 教習生は運転を習いに来ているわけですし、故意ではないにしろ危険な運転につながるようなことがあれば、命に関わることもあるので、当然教官は注意せざるをえません。でもその母親はそれすらもするなというのです。娘さんと接する際に、なにか教習所側として特別に配慮しなければならないことがあるのか聞いても、特に回答はありませんでした。

「卒業試験に3回も落ちたこと」に関しては…

結局、ほぼ注意することなく技能教習の全過程を終え、卒業試験に挑むことになりましたが、残念ながらというか、当然というか、試験は3回も不合格に。その原因が、教官が注意しなかったためなのかどうか、そこまで分析できていませんが、少なくても、ひとまず試験に受かるように細かい指導を受けていれば、3回も試験に落ちなくて済んだのではないかというのが教官たちの見解でした。 不思議なことに、その母親は娘が卒業試験に3回も落ちたことに関してはクレームなど何も言ってきませんでした。注意や指導を受けなければ落ちて当たり前と思っていたのか、真相は不明です。 こうしたケースを受け教習所では、理不尽で不適切な指導(叱りや叱責)は言語道断としながらも、親などから注意するなという要求には一切応じないようになりました。適切な指導はもちろん、教習生のためになるアドバイスを積極的にしていこうということになったわけです。何も指導しないのであれば教官は必要ありませんし、自分(教官)たちの存在意義を改めて考えさせられた出来事でした。
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「免許の不正取得」を後押した教習所の末路
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自動車ライター。出版社の記者・編集者を経て、指定自動車教習所の指導員として約10年間勤務。その後、自動車ライターとして独立し、コラムや試乗記、クルマメーカーのテキスト監修、SNS運用などを手がける。
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