縦列駐車よりも“S字・クランク”が難関。元教習所の指導員が振り返る「技能試験で失敗しがちな人」の特徴
警察庁が発表した運転免許の保有者数は8,186万人(令和5年)。日本の全人口(16歳以上)に照らし合わせると74.8%の人が免許を持っているということになります。そのうちほとんどが教習所に通って免許を取ったことでしょう。しかし、教習内容のほとんどは事前に知らされることがなく、はじめて習うことばかり。とくに難しいという声を聞くのがS字&クランクや縦列駐車など、教習所独特の技能試験だと思います。
そこで今回は、指定自動車教習所の指導員として約10年間勤務した経験を持つ筆者が、教習所の技能試験で失敗しがちな課題ベスト3を紹介。減点されやすい箇所を具体的に解説しますので、これから免許を取るという人の参考になるのはもちろん、すでに免許を持っているという人も、あらためて自分の運転スキルを見直す機会にしてください。
教習所の技能試験で最も難しい課題と言われるのが「縦列駐車」。この縦列駐車は、路上駐車しているクルマとクルマの間にバックで停めることを想定した技能試験です。ところが、技能試験で失敗する人が多いのは、意外にも縦列駐車ではないのです。
試験で落ちるのが多い課題は、Sの形状をした狭い道を通る課題「S字」や、角のある狭い道をゆっくり走行する課題「クランク」など、いわゆる「狭路」と呼ばれる課題です。もちろん縦列駐車が簡単とはいいませんが、S字やクランクの方が失敗しやすいというのは意外ではないでしょうか。
技能試験で失敗しがちな場所ベスト3
・S字
・クランク
・方向変換
試験で落ちる人が多い課題で常に上位に上げられるのが、S字、クランク、そして「方向変換」という3つの課題です。方向変換は車庫入れのように狭いスペースにバックで入り、縁石に乗り上げたり、後方のポールに接触したりすることなく出庫するというもの。
ではなぜ、S字やクランクの方が失敗しやすいのか具体的に解説します。
各課題の具体的なやり方はここでは省略しますが、縦列駐車の場合、所定の位置にクルマを停めて後方を確認してからゆっくりバックし、駐車スペースに停めます。ハンドルを全開に切ってからクルマを動かすため、動いている間にハンドルを切ることはほぼありません。つまり、ハンドル操作とバックを同時に行うことはないのです。
方向変換はというと、縦列駐車に似た操作になりますが、こちらは最初にクルマを停める位置と車両感覚がしっかりと身についていないと失敗しやすい課題です。人によっては縦列駐車より難しいという教習生が多くいました。
その一方、S字やクランクは、ゆっくりと動きながら(前進しながら)ハンドル操作を行います。クルマの速度調節をしつつ、ハンドルを動かすという2つの操作を同時に行います。この同時に2つの操作というのが、とくに初心者にとっては難易度が高いところです。
実際に筆者が教習所で指導員として勤務していたとき、すでに免許を持っている親や友人から、なんとなく縦列駐車が難しいと聞いてやってくる教習生がたくさんいました。しかし実際に挑戦してみると「縦列駐車よりもS字やクランクの方が難しかった」と話します。
試験で落ちる人が多い課題は…
同時に2つの操作をするときは注意
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自動車ライター。出版社の記者・編集者を経て、指定自動車教習所の指導員として約10年間勤務。その後、自動車ライターとして独立し、コラムや試乗記、クルマメーカーのテキスト監修、SNS運用などを手がける。
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