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ラーメン店の倒産が過去最多に。個人店が苦戦する中、規模を拡大する“人気チェーン”の存在感

1000円の壁に苦労する個人ラーメン店

 そもそもラーメンの価格は「1000円の壁」と言われ、いかに1000円以下に抑えながら生き残るかに腐心している。そのため粗利益が高い他の商品の品揃えで利益を確保し、経営を維持しなければならず、町中華メニューの充実を図る発想も必要だ。  地域で存在感を増す町中華やガチ中華(本場そのものの味)は、個性豊かで独自の強みを持っており、店を支える家族と常連さんで一体感が醸成されている。中華料理店は店舗数5万5000店舗、市場規模は1兆1629億円で内訳は中華料理5686億円、ラーメン店5560億円、その他が382億円となっており人気の業種である(全国中華料理生活衛生同業組合、2018年)。  独自のメニュー構成が特徴で、このオンリーワン戦略を展開すれば差別化が図れ、客はファンとなるものだ。ラーメンをロスリーダーにしてお客さんを吸引し、町中華の一品メニューの販売で利益を稼ぐのもいいだろうし、事実、それで成功したお店もある。  例えば、麻婆豆腐などは10%程度の原価であり、その他一品も30%程度に抑えればトータル原価は35%程度に抑制可能だろう。店の看板ラーメンは、食材費が高騰しても値上げするの難しいが、中華一品メニューなら代替食材に変更したり、量の配分調整が可能だから、原価調整がしやすい。

資本力が脆弱な個人店の苦難

来来亭

来来亭。チャーシュー麺は盛りが豪快だ

 一方で、ラーメン業界は特にトレンドの変化が激しく、新たな味と共に次々にオープンする新規出店者と既存店の戦いの構図が鮮明となり、生き残り競争が激化している。  スープづくりには欠かせない豚肉や鶏肉・ガラなど食材の高騰、エネルギーコストの負担も大きい。ラーメン店は特にスープづくりのためにガスをよく使用するので、ガス料金の値上がりは相当に苦しい。特に過小資本の個人営業のラーメン店の経営は大変苦しそうだ。  売上と利益を確保するためには、限りあるキャパシティを有効に活用し、客席回転率の向上が望める時間帯は別として、お客さんの滞留時間を延ばし、追加点数を増やして客単価を上げるのも得策だ。カウンター席はラーメン客で高回転、テーブル席は飲み客やファミリー客を誘致し、店内を有効活用する営業政策も必要だ。  売上=客数×客単価を再認識して客数を伸ばすのか、客単価を上げるのか、自店の実情を踏まえた上で、店の方針を決定したほうがいい。1000円程度の一人客が多いラーメンだけでなく、2000円単価の飲み客や週末のファミリー客に町中華メニューで対応すれば、客数も客単価も上昇し、経営は楽になるはずである。実際にそれで成功している店はある。
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ラーメン店経営はそれほど甘くない!
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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