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生活保護を受給していた78歳の父が“腐敗した状態”で発見。納骨までにかかる「驚きの金額」と、実娘が知った福祉葬の実態

身分証を身につけていないとDNA鑑定

田口ゆうさん介護

DNA鑑定の押収品目録交付書(※一部モザイク処理)

佐藤さんの話に戻る。筆者の父は遺体の発見まで1か月かかり、腐敗が進んでいた。だから、本人特定するためにDNA鑑定を受けたのだと思っていた。 「DNA鑑定をするしないに期間は関係ありません。そもそも本人だと特定する制度がおかしくて、服のポケットに身分証でも入れてない限り、自室で亡くなっていようと、DNA鑑定をして本人だと特定をします。だから、独居の人が亡くなると、絶対にその人以外にあり得ない状況でもDNA鑑定を受けることになります」  筆者は警察から「検死が終わるまでは遺体を預かりますが、火葬までの間は保管料がかかります」と言われたが、父が生活保護だったため、請求は役所に直接いった。結局、保管料はわからないままだったが、実際にはいくらくらいかかるのだろうか。 「昔は、検死が終わるまでは遺体を預かってくれるということはありませんでした。検死に時間がかかるのではなく、DNA鑑定に時間がかかり、1日1万円×1週間~2か月が目安です。ただし、警察署で遺族が『お金がないから早く遺体を返してください!』とごねて、面倒ごとになるとDNA鑑定の期間が早まったという話も聞きます。いずれにせよ真似してはいけませんが。今回の福祉葬の場合、遺体の保管料は『正当な事由』なので、葬祭扶助費で出ます」

まるで『進撃の巨人』!遺族感情への配慮とは

有限会社佐藤葬祭

分骨したお骨

 福祉葬には警察付きの葬祭業者がおり、金額はブラックボックス化されているという。 「遺体は冷凍か冷蔵保管されます。腐敗体の場合、デリケートな状態なので、長期保管すれば風体が変わります。『安らかな状態で送りましょう』というのが、死後処置の目的です」  筆者が父の顔を見られたのは、警察署で「写真で」のみだった。腐敗した父の顔は、漫画『進撃の巨人』に登場する巨人のようだった。葬儀の折には、説明しづらそうな葬祭業者に仕事柄、遺体の話には慣れている旨を伝えた。  一切の遠慮が取っ払われ「それはありがたい! お父さんの遺体からは体液が噴き出し、黒くなった状態で、とても臭いのでお顔は見られません」という説明を受ける。遺族感情への配慮とは……。
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独居で腐敗して亡くなった時のお値段
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立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1

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