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生活保護を受給していた78歳の父が“腐敗した状態”で発見。納骨までにかかる「驚きの金額」と、実娘が知った福祉葬の実態

独居で腐敗して亡くなった時のお値段

有限会社佐藤葬祭

見積りを書く佐藤さん

病院で亡くなったほうが、DNA鑑定中の保管料がかからないので31万~33万円と、安く済みます。だけど、遺体が腐敗していると、臭気が外に出ないようにジップロックのような保管袋に入れるのでプラス1万~2万円かかったり、塩素系の消毒薬をかけるので追加で料金がかかったりします」  もし病院で亡くなった場合の葬儀費用の見積もりを、佐藤氏に書いていただいた。内訳は、 【葬儀費用の内訳】 基本人件費5万円 +棺桶代8万円 +ドライアイス代1万円 +役所の手続き代行1万円 +補助費2.5万円 +物品代1万円 +火葬代金9万円 +作業代 1.5万円 +お花代0.3万円 +搬送車代2万円 =31.3万円  だった。独居で腐敗して亡くなったり、変死したりした場合、そこに特殊清掃費20万円+保管料2万~3万円が加算されるので最大約54万円もかかる。そのお金が、特殊清掃会社や葬儀屋にかかり、役所に請求される。シングルマザーの筆者にそんなお金はなかった。改めて、福祉制度のありがたみを知る。

「親族の誰かが引き取りに」福祉葬の現実

有限会社佐藤葬祭

孤独死という言葉がなくなってほしい、と佐藤さん

「よく生活保護を受けている人が、お骨の引き取り手がいないと言いますが、ほとんどの場合は親族の誰かが引き取ります。生活保護受給者だったとしても、親族など誰かしらが関わっていて、完全に孤立しているケースは少ないです」 筆者の場合も、父は生前、娘の筆者と孫と最期まで交流があった。骨は分骨し、自宅に保管している。 「変死自体が少ないです。僕の感覚では、病院以外・医者が立ち合っていないなどの“変死”の割合は、全体の5%くらいです。その中でも、DNA鑑定が必要なケースは、さらに5%くらいでしょう。ほとんどの場合は、そこまで行く前に発見されます。生活保護受給者が孤立しないよう、実際に関わっている民生委員に予算を割くほうが独居死・変死対策になります」  民生委員とは、厚生労働大臣から委嘱された非常勤の地方公務員で、住民の生活や福祉に関する相談に応じ、社会福祉の増進に努める役割を担っているが、ボランティアだ。  筆者の父は“独居死”したが、生まれ育った場所で、死にたいと願っていた父には地域の人や定年退職した会社の同僚や部下が多数、焼香に訪れた。その死は、決して孤独ではなかった。死者の尊厳のためにも、正しい理解が広がることを願う。 <取材・文/田口ゆう>
立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
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