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「全身に入れ墨を入れた」21歳女性が語った過去。“オール5”生徒会長の学生時代、少年刑務所…親との関係も告白――仰天ニュース傑作選

成績は「オール5」で生徒会長も

 人は見かけによらずとは言うが、乙葉さんもご多分に漏れずその例に当てはまる。学生時代はいわゆる優等生だ。しかも単に勉強が得意なだけではなく、他の人を巻き込んで前例を打ち破る機転もある。 「小学校、中学校時代の成績はオール5でした。中学校では生徒会長をやって、高校は学費免除の特待生で入学しました。中学時代、生徒会長として校内のスローガンを決めたときのことは今でも思い出深いです。これまでは『切磋琢磨』とか『質実剛健』みたいな誰でもわかりやすい標語が選ばれていて、『ありきたりだな』と思っていました。私が提案したスローガンは『料理』で、みんな『は?』となっていました(笑)。私が言いたかったのは、料理にはいろいろな食材が必要で、それぞれが違う味(個性)を出して1つになろう、という意味で。説明すると、みんなが『奇抜だし、納得できる』と喜んでくれて、決定しました。たぶん、これまでで最も異色なスローガンだったと思います」

入れ墨を入れるきっかけは「外国の少年刑務所」

乙葉さん

溺愛されていた親との関係にも変化が ©Naoto Takahashi

 だがやはり、学生時代の卓抜した成績も、親からの期待に応えようと頑張った結果にほかならない。 「当時の私ですら容易にわかるほど、過保護に育てられました。常に車で送り迎え、学校に行く荷物のチェックや宿題など、何度も何度も親の方が熱心にやっていたくらいです。今では、親が『小さい時に全部やってあげちゃってたからごめんね』と謝ってくるほど、私ひとりでは何にもできないくなっちゃったんですよね。だから、勉強をやらないなんて論外。整形や入れ墨なんて、勘当ものだと言って聞かされていました」  だが乙葉さんは勘当に値するはずの整形や入れ墨などをフルコンプリートした。その真意はこんなところにある。 「入れ墨を入れるきっかけになったのは、去年のできごとです。ある国に遊びに行って、その先でスリに遭い、帰りの運賃も失いました。仕方なく現地のキャバクラで働いていたところ、不法就労で少年刑務所に行くことになったのです。そこで一緒になった子たちのほとんどに入れ墨があるの見て、今回の戒めとして入れ墨を入れようと決めたんです。  けれども、もっと根本的なことをいえば、親との距離を取りたかったのかもしれません。明らかに干渉が過ぎる親に、どうしても期待に応えようとしてしまう私――その構図から逃れて、親を嫌いにならないために、私のことを諦めてもらう意味で入れた部分もあります。親は先生のような感じで、優しいけど常に一定の緊張感がありました。本気で喧嘩できるようになったのは、ここ1年くらいです。反抗することで、無理やりにでも私という人間を理解してもらえたことは、よかったなと思います」
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自分の子どもに「入れ墨を入れたい」と言われたら
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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