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“スーツが売れない時代”でも「AOKI」が安定経営を続ける理由。「1998年」時点での先見の明が花開く

カラオケと結婚式場事業…1998年から多角化を進める

 百貨店やGMSより強いとはいえ、1世帯当たりのスーツ購入額はバブル期をピークに減少し続けており、市場環境が厳しいことは以前より認識されていました。そこでAOKIは全くの異業種に手を伸ばします。1998年からカラオケと結婚式場事業を始め、2003年には「快活CLUB」の1号店を開店し複合カフェ事業を始めました。最近では2019年に24時間営業のジム「FiT24」をオープンし、2022年にランシステムを子会社化して複合カフェ「自遊空間」を傘下に置きました。  快活CLUBは紳士服事業に次ぐ稼ぎ頭となりました。開業から3年後には100店舗、2012年には200店舗を達成し、24年3月期末時点で485店舗を運営しています。スマホの普及によりネットカフェ市場は2010年代にピークアウトしましたが、快活CLUBはネットや漫画、カラオケ、ドリンクバーや無料ソフトクリームなど、サービスを充実させ、消費者から支持を受けました。個人店や零細業者が多いネットカフェ・漫画喫茶業界において、サービスで差をつけたのです。  また、「店舗が清潔」という意見も多く聞かれます。業態問わずFC店では不潔な店舗やサービスの質が悪い店舗が現れがちなのですが、快活CLUBは全店が直営店です。

店舗数はエンターテイメント事業>ファッション事業

 2020年3月期から24年3月期における主力業績は次の通りです。AOKI、ORIHICAなどのファッション事業が苦戦する一方、快活CLUBやカラオケ、ジムなどのエンターテイメント事業もコロナ禍の影響で悪化しました。しかし店舗数自体は増えており、直近では回復しています。24時間ジムのFiT24も24年3月末時点で117店舗まで増えました。 【株式会社AOKIホールディングス(2020年3月期~24年3月期)】 全社売上高:1,802億円→1,432億円→1,549億円→1,762億円→1,877億円 ファッション事業売上高:983億円→854億円→886億円→945億円→1,000億円 エンターテイメント事業売上高:584億円→485億円→570億円→713億円→755億円  店舗数でいえば、24年3月期末でファッション事業が593店舗、エンターテイメント事業が784店舗と、既にエンターテイメント事業が主力です。なお好調な快活CLUBも既に拡大路線は止まっており、今後は店舗のリニューアルやSC内への打替えを行うとしています。  製造業や小売店による飲食業参入など、全くの異業種による多角化は失敗することがほとんどです。AOKIは珍しく多角化で成功した一例といえます。将来的には額でもエンターテイメント事業が主力になりそうです。 <TEXT/山口伸>
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
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