ライフ

「こんなに待たせやがって!」飲食店に響く“迷惑老人客”の怒号…女性店員が「カスハラ条例は意味がない」と嘆くワケ

 カスタマーハラスメント、通称カスハラが社会問題となって久しい。SNSを中心としたインターネット上では、店員に対する横暴を映した動画が拡散されることも珍しくない。こうした状況に東京都では全国に先駆け、2025年4月1日から「東京都・カスタマーハラスメント防止条例」が施行された。  この条例について、都議会の関係者に話を聞いた。 「小池百合子都知事は昨年、3期目初の所信表明の際も条例について言及しており、今回の条例化は知事の肝いりといえますね。ただ、カスハラと正当なクレームの線引きは難しく、罰則を設けるには至っていません。『知事のパフォーマンスで終わってしまう可能性もある』と指摘する声があるのも事実です」

カスハラをする客に共通する特徴

居酒屋

画像はイメージです 
※画像生成にAIを利用しています(以下同)

 とはいえ、問題化するカスハラに対して行政が動いたことは大きいだろう。では、カスハラに走る客はどんな傾向があるのだろうか。新宿で居酒屋を経営する店主(50代男性)に話をきいた。  この店主は大手居酒屋チェーンや老舗割烹料理など、さまざまな店で料理と接客をしてきた経験から、カスハラをする人にはいくつかの共通点があるという。 「まず酒癖が悪い人。いわゆる酔っ払うと人が変わってしまうのはキツいね。それと、店員によって態度が変わる人。女性や若い従業員、最近だと外国人従業員には横柄で、オレみたいなちょっとイカつい風体だと何も言わない人は、相手を見て自分よりも弱いと思ったらイチャモンつけるんだよ。しかもあの手の連中って、みんなカネ持ってなさそうで……。金持ち喧嘩せずっていうけど、あれは本当だと思う。それと、圧倒的にジイさんが多いね」  この店主によると、チェーン店で働いていたときは「遅めの時間に酔っ払って来る老人の1人客は要注意」だったという。

言い掛かりをするために店に来るのか!?

 大手ファーストフードで働く女性従業員(20代)はカスハラをする客について、「ああいう人たちは言い掛かりをつけるためにお店に来ていると思います」とすら話す。 迷惑老人「ものすごくちょっとしたこと、例えばストローの紙袋にドリンクの水滴が付いてふやけていたとか、そんなレベルのことで怒鳴ってきたりするんです。別にタダにしてほしいとかそういうワケじゃなくて、言い返せない私たちに怒鳴りたいんですよね。だから、お代は結構ですと言っても『カネの問題じゃない!誠意の問題だ!』とか言い返されたこともあります。テーブルが汚いって呼びつけて『お前、このテーブルでメシ食えんの? ここにポテトぶちまけて食ってみろよ』って言われて見たら、ドリンクの水滴が少しあっただけだったこともありますね……」  では、先述の居酒屋店主が話したような、カスハラをする人の傾向はあるのだろうか。 「女性よりも圧倒的に男性で、お金を投げつけるように払う人もトラブルになるケースが多いですね。老人の方も多いですよ(苦笑)。一度あったのは、『足が不自由だから注文を取りに来てくれ』っておじいさんに声を掛けられたんです。でも、そのときはちょうどランチタイムで店内フル回転。なんとかやり繰りして10分ほどお待たせしてテーブルまで行ったら、割れんばかりの大声で『こんなに待たせやがってどういうつもりだ!オレみたいな客はどうでもいいのか!』って怒鳴りつけられました」  このときは、周囲の客が間に入って「ランチで忙しいんだから仕方ないでしょう」となだめて、ことなきを得たのだとか。
次のページ
カスハラ条例の効果はあるのか?
1
2
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター

記事一覧へ
【関連キーワードから記事を探す】