更新日:2012年05月16日 16:14

AIJ事件の顛末「チビチビ勝ってドカンと負けた」

◆マネーな人々 今週の銭格言 【選者】人気ブログ「金融日記」管理人 藤沢数希氏 全国94の企業年金基金などが運用を委託していたAIJ投資顧問は約10年で247%になると宣伝していた。その投資手法は主に「オプションの売り」で、実は証券会社のトレーダーにも同様の手法を使う人は多いんだとか ◆ちょっとやられたぐらいでビクビクするな。オプションの売りには要注意 【後編】 ⇒【前編】はこちら AIJ事件の顛末「オプションの売りには要注意」  ところで、AIJの戦略はオプションを売ってプレミアムを稼ぐというものだった。オプションというのは将来ある価格で買う(コール)、あるいは売る(プット)権利のことだ。日経平均の行使価格が7000円のプット・オプションを買うと、満期で日経平均が5000円になっても、7000円で売れるのだから2000円儲かる。逆に日経平均が9000円なら何もしなくてもいいので、最初のオプション料(プレミアム)だけ損する。オプションの買いはこのようにリスクが限定されているのだ。逆にオプションを売るとプレミアムが最初に入ってくるけど、7000円より下げたらその分の損失をすべて支払うことになる。  行使価格が遠いオプションをちまちま売り続けるとめったなことでは損しないから、順調に毎年安定して利益を出すことができる。こういう戦略は一見非常に優秀に見えるので、金融機関のトレーダーもよくやっている。金融機関の経営者って馬鹿ばっかりで、こうやって毎年利益を出すトレーダーにたくさんボーナスを払ってくれるんだ。そして金融危機とかで、今までの儲けを全部一発で吹き飛ばす。でもそのときは、会社を辞めればいいだけだからね。 【今週の数字】 AIJ投資顧問が失った年金額 2000億円 日本の金融史上で最大の詐欺事件に発展したAIJ投資顧問の年金消失問題。AIJ投資顧問に資産運用を任せていた企業年金基金が、そこにあると思っていた金額。実際はすっからかん
大暴落すると大損してしまう

日経平均の行使価格が7000円で満期1年のプット・オプションの売り。1年後に日経平均が7000円を下回らなければプレミアム分だけ儲かるが、危機などで大暴落すると大損してしまう

【藤沢数希氏】 欧米の研究機関にて計算科学、理論物理学の分野で博士号を取得。その後、外資系投資銀行に転身。主宰するブログ「金融日記」は月間100万PV、ツイッターのフォロワーは6万人に及ぶ。最新刊『「反原発」の不都合な真実』(新潮新書)が発売中
物理学研究者、投資銀行クオンツ・トレーダー職等を経て、作家・投資家。香港在住。著書に『外資系金融の終わり』『僕は愛を証明しようと思う』『コスパで考える学歴攻略法』などがある
「反原発」の不都合な真実

『反原発』を冷静に論ずる

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