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「指紋が全部なくなった」特殊清掃現場の“危険すぎる”実態。猫に噛まれて破傷風、HIVの感染リスクも

 特殊清掃の現場は、常に危険と隣り合わせ。思わぬところで怪我をしたり、病気で1週間ぐらい寝込んだり、精神的におかしくなって退職するスタッフなどもめずらしくはない。  都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに詳しい話を聞いた。

現場では“防護服”の着用が重要

防護服

作業中は防護服を着用する。画像提供:ブルークリーン(以下同)

 従業員たちは破傷風や肝炎などの予防接種を行っているそうだが、リスクはゼロにはならない。 「孤独死の現場には血液や体液が残されている状態です。もし体液が口に入ったり、怪我をして傷口から入ったりすると病気になる可能性があります。代表的なものは破傷風やB型肝炎、C型肝炎といったものですが、まれにHIVなども潜んでいるので、最後の仕上げ状態になるまでは基本的に防護服の着用を義務付けています」 防護服 ブルークリーンではどんな状況でも防護服の着用を徹底している。 「従業員で、いくら暑いからって防護服を脱いで作業しようとする場合は厳重注意しています。自ら感染症のリスクを高める行為にあたるので、作業中は必ず着用することを徹底しています。時々ですが、一緒に現場に入りたいというお客様もいらっしゃいます。そのような場合も必ず防護服の着用をお願いしています」  お客さんが立ち会う際には、現場に入った際のリスクを全て説明しているという。それでも現場に入りたいのかどうか……。 「現場を見に来たお客さんが病気にかかっても我々は一切責任を取れないじゃないですか、お客さんが『感染しないから大丈夫だよ』と思っても実際は何があるかわかりません。防護服は使い捨てです。安いもので1着1000円弱くらいで、高いものでも3000円弱くらいです。コストはかかりますが、高いものの方が破れにくかったりするので安全です」

猫に襲われて破傷風に感染

手袋

猫に噛まれて血のついた手袋

 ここまで徹底していても感染症にかかってしまう従業員は出てくるという。 「イレギュラーなケースですが、たくさんの猫を飼っている家の清掃で、猫に襲われて防護服が破けて皮膚が傷ついて、破傷風になった従業員がいました。ワクチンもきちんと打っていたのですが、直接爪で攻撃されたのがかなり効いたのでしょう。熱が出て傷口も膿んで大変だったようです。約1週間くらい寝込んでいました。嘔吐や下痢もしてまともな生活ができなくなったようです。もしかすると破傷風だけじゃなく、別のウイルスにも感染していた可能性も大いにあります」
問診票

病院で記入した問診票。状況の欄には「顧客宅にて猫捕獲作業中に噛まれた」

 幸運なことに(!?)今のところは肝炎にかかった従業員はいないそうだ。 「防護服は汚れた体液だったり、糞尿だったり、そういったものを物理的に除去し切って、室内に除菌洗浄剤や消臭剤などを全部撒いてからじゃないと脱いではいけないマニュアルになっているんです。これは全てアメリカの特殊清掃マニュアルを参考にしています。そういったマニュアルを徹底的に守らせることが、病気の予防になっているのは間違いありません」
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現場の視覚情報が悲惨すぎて…
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(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦
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