“人間よりもAI”にお悩み相談する人が増加中。専門家が明かす、AIに頼りすぎる危険性
忙しいビジネスパーソンの間で広がるAI活用。時間のかかる資料づくりや、取引先へのメール作成といった業務を、ChatGPTなどのAIに任せる人が増えている。なかには、仕事の悩みや愚痴まで、AIに話す人もいるという。
実際に筆者も、AIに日々の悩みを吐き出しているひとりだ。しかし、AIは基本的に“否定してこない”ため、「本当にこれで正しいのか? 間違ったアドバイスをされているのでは?」と不安に思うときがある。
「AIに悩みを話すこと」は、本当に大丈夫なのか? 頼りすぎると、メンタルや考え方に悪影響を及ぼす可能性もあるのではないか。
こうした疑問を解消すべく、早稲田メンタルクリニックの院長・益田裕介氏に、AIを相談相手として使うメリットやリスクについて話を聞いた。
AIを生活や仕事に使ういちばんのメリットは、「物事が整理されて脳の容量負荷が減ること」だと、精神科医の益田氏は語る。
「何かを考えたり記憶したりする行為は、脳にすごく負荷がかかります。そのうえ、頭の中が情報や悩みなどでぐちゃぐちゃしていると、不安を感じやすいし、疲れやすいんですよ。AIを使って整理することで、思考疲れが起きにくくなります」
「考える」という作業の一部をAIに任せることで、“思考疲れ”が減る。たとえば仕事のプランニングを立てるときにも、AIを使って整理すれば“やるべきこと”が可視化されるため、行動に移しやすいそうだ。
「時間をかければ自力でできることを、AIを使ってスピードアップさせ、時間と脳の負担を減らす。そんな使い方が理想的です。仕事の成果物にAIを使う場合は、頭の中にある情報をAIに整理してもらい、生成されたものを自分でブラッシュアップしていく作業が必要です」
実際にSNS上では、「プレゼン資料の8割をAIに作ってもらい、仕上げは自分で」といった使い方をしている人が多い。
一方で、AIのアドバイスに頼りすぎると、「主体的な判断能力が低下するリスクがある」と益田氏は指摘する。
「AIに頼りすぎて自分の頭で考えられなくなったり、思考の幅が狭くなったりすることもあるでしょう。ただし、それはAIに頼らない状況下でも起きうることです。人間はひとりで作業したり行動したりする時間が増えれば増えるほど、視野が狭くなりますから。もうひとつのリスクは、『AIは間違ったことを、もっともらしく提示してくることがある』という点です」
ChatGPTなどのAIは、「LLM(Large Language Model=大規模言語モデル)」という技術に基づいている。過去に学習した大量のデータから、「次に来る言葉」を予測し、文章を生成しているのだ。
ここで知っておきたいのは、AIはあくまで“言葉のつながり”を連想しているだけで、物事の本質を理解しているわけではないという点だ。
「たとえば、『昔むかし』という言葉に対し、『おじいさんとおばあさんがいました』『川に洗濯に行きました』といったフレーズを連想しているだけです。連想ゲームでそれっぽい回答をしているだけ。だから、“もっともらしいウソ”を言うこともあります。仮に、『雨が降ればラーメン屋が儲かって、そば屋の売上は下がると言われているけど、どうしてですか?』と聞くと、そんな事実も根拠もないにもかかわらず、それらしく回答してしまう。そうした性質を理解せずに使っていると、誤った情報を信じてしまう危険があります」
さらに、AIを「相談相手」とする場合には、機械ならではの限界があることも理解しておかなければならない。
「AIは基本的に、『あなたは間違ってないよ』って言いがちなんですよ。だから悩みを相談すると、『頑張りましょう』『医師に相談してみましょう』と、あたりさわりのないアドバイスを返してくれる。でもそれが、必ずしも適切とは限らないんです」
たとえば、家庭内での虐待やDVのような深刻なケースで、本来なら「警察に通報すべき」という判断が求められる場面でも、AIは「一度ご家族としっかり話してみるのがいいかもしれません」といった無難な対応にとどまることがある。
これは、AIが「過激なことを言わないように」設計されているからだ。結果として、現実的な解決策ではなく、表面的に無難なアドバイスしか出せないという問題がある。
「話の本質を理解できないから、一般論ばかりになりがちです。本質を突いたアドバイスは人間しか言えない。だからこそ、本当に大事な判断が必要なときには、AIではなく、人間の力を頼るべきです」
AIを仕事や日常で使うメリット

早稲田メンタルクリニックの院長・益田裕介氏。YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」を運営中。X:@wasedamental /本人提供写真、以下同
AIに頼りすぎる危険性

試しに筆者がChatGPTで「雨が降ればラーメン屋が儲かって、そば屋の売上は下がると言われているけど、どうしてですか?」と聞いてみたところ、それっぽい回答が返ってきた
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福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0
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