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母の介護とバイトに明け暮れた高校時代。24歳女性、注目の新人作家が描く「ヤングケアラー」

高校生のときに経験した母親の介護をモチーフにした小説で第21回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞した、上村裕香(かみむらゆたか)さん(24)。衝撃的な作家デビューを果たした彼女は、現役の大学院生だ。
上村裕香

上村裕香さん

「わたしは不幸自慢スカウターでいえば結構戦闘力高めなんだと思う」(『救われてんじゃねえよ』本文より) そんな作品の主人公は「ヤングケアラーの貧困生活」から抜け出して、自分の人生を見つけていくが、作者の上村さん自身も自力で大学進学の道を掴み取ったという。介護とアルバイトに明け暮れた高校時代、そしてこれからの進路についても話を聞いた。

「ヤングケアラー」ではなく、「人間」を描きたかった

デビュー作「救われてんじゃねえよ」を執筆したのは、20歳のころ。 続く連作を執筆しながら、ヤングケアラーを扱ったドラマやドキュメンタリーをいくつか見ていた、と上村さんは振り返る。 「そういう作品を見ながら、自分はけっこう、ヤングケアラーは悲劇的な存在だ、というような捉え方に対して『違うよ』というか、傷つきみたいなものを感じていて。なので、そうではない形の物語を作りたいと思いました。自分の心情や、作品に存在する人間の『本当のこと』を書きたい、みたいなことはすごく思ってたので。こうやって文字として紙に刻んで、書籍として流通させることができたのは、ひとつの証になるかもしれないです。私は作品を通して、ヤングケアラーがどういうものかとか、そういうことを伝えたいわけではない。主人公の人生の断片でこんなことがあったよ、とか、リアルな目線で見たとき、介護の中にも笑いがあるんだよ、というところを書きたかったんです。それは今まで物語としてはあまり描かれてこなかったんじゃないかな、と思っていて。書くことで浮かび上がる面白さ、笑いの要素が、私にとっては大事でした」 『救われてんじゃねえよ』という印象的なタイトルは、ツッコミのような意味合いがある。 「表題作のラストシーンで、主人公が少しだけ救われた気になるんですけど、『いや、全然救われてないよ』、みたいな。一過性のおかしさ、ミラクルのような瞬間はあっても、現実には何も変わっていない。そこを俯瞰した視点で、誰か、それは作者である私であるかもしれない、が、『救われてんじゃねえよ』って突っ込むという……もちろん、自由にいろんな解釈をしてもらえたらいいなと思っていますけども」 ヤングケアラーは、依然として大きな社会的課題だ。 今、実際に苦しんでいる人たちにも読んでもらいたいという気持ちはある? 「そうですね、読んでもらいたい、というよりは、沙智が三篇目のラストで高校時代の沙智と同じような生きづらさを抱える子に対してかけてあげたいと願う言葉が、読者の方にも届いたら嬉しいなと思います」

母の介護とバイトに明け暮れた高校時代

上村裕香作品の主人公は、奨学金を得て東京の大学に進学し、ヤングケアラーの日常から脱出する。上村さんも佐賀から京都の大学へ進学。その際、必要なお金のほとんどを自分で準備した。 「私は三年次に通信制の高校に転校したんですが、通信制って4年間あるんですよ。時間はたくさんあったので、たくさんバイトしていました。バイト先は、チェーン系の飲食店。ホールで働いてました。店舗によるとは思うんですけど、私がいたところは本当に人手が足りなくて、めっちゃブラックな感じで。かなり長時間シフト入ったりしてましたね」 「いや、ほんと、めっちゃ働きました」と当時を振り返って、上村さんは笑った。 チェーン店の制服を着て、ホールを忙しく動き回っている上村さんを想像してしまう。どんな客も、あの女子高生が、まさか進学のために働いているとは思わなかっただろう。家に帰れば母親の介護をしており、やがて小説の才能を開花させるとは、よもや。 「貯まったお金を持って、ふるさとの佐賀を出ました。将来は……佐賀に帰ることは、ちょっと考えてないですね。仕事をすることを考えると、やっぱり大阪とか、東京の方が、選択肢は多いので」 目下、就職活動中だ。小説を書き続けながら、いろんな仕事をしてみたい、と語る。 小説の主人公同様、テレビや映画など、制作に関する仕事に興味があるという。
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サイゼリヤとフレンチ、どちらも幸福値は変わらない
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ライター。愛知県出身。広告代理店、編集プロダクション、リゾート施設広報を経てフリーに。得意分野はインタビュー、ライフスタイル、フード、ワインなど。フランス語をマイペースで勉強中。X:@3mo6ab3jK2IHBoV
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救われてんじゃねえよ 救われてんじゃねえよ

17歳。誰かの力を借りなきゃ、笑えなかった――。主人公の沙智は、難病の母を介護しながら高校に通う17歳。母の排泄介助をしていると言ったら、担任の先生におおげさなくらい同情された。「わたしは不幸自慢スカウターでいえば結構戦闘力高めなんだと思う」。そんな彼女に舞い降りたのは、くだらない奇跡だった。満身創痍のデビュー作。

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