更新日:2025年09月18日 09:35
仕事

「就職氷河期世代は不幸、と煽られすぎです」もう氷河期支援はいらないと、雇用のプロが言い切る理由

大不況の1993~2004年に卒業した「就職氷河期世代」。現在40~50代で、1700万人以上いるとされる。「ものすごく損をした悲惨な世代」というイメージが定着し、7月の参院選でも各党が氷河期世代支援策を打ち出していた。
中高年

画像はイメージです

イメージとは違う、氷河期世代の実像

だが、このほど『「就職氷河期世代論」のウソ』を上梓した、雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏は、そのイメージに異議を唱える。 「確かに、氷河期の就職が非常に大変だったことは、私も当時取材していてよく知っています。でも、巷で言われるような『大半の人が就職できず、その後も非正規を転々』『低収入で年金も少なく、老後は生活保護しかない』といった氷河期世代像は、現実と全然違います」(海老原氏) 氷河期新書同書では、丹念にデータを追い、氷河期世代の意外な実像を明らかにしている。 ・大企業に就職した大卒は、バブル前より氷河期のほうが多い。 ・氷河期大卒の無業・フリーターは、大半が35歳頃までに正社員就職している。 ・低年金者(月額10万円未満)は、バブル世代より氷河期世代のほうが少ない。 以上はほんの一部だ。 『「就職氷河期世代論」のウソ』刊行にあわせて、著者・海老原氏と有識者3人の鼎談が京都で行われた。その一部をお届けする。 登壇者: 江夏幾多郎氏(神戸大学経済経営研究所 准教授) 山口理一氏(関西の大手私立大学キャリアセンター) 田中美惠氏(神戸大学キャリアセンター)
氷河期鼎談

(写真右から)江夏氏、海老原氏、山口氏、田中氏

「世代」で括った支援策はもう必要ない

海老原:政府は、氷河期世代の支援に膨大な予算を使ってるんですよ。2003年から当初10年で5000億円以上、最近だと2020~2023年で計600億円。 でも、もう「世代」で括る支援は必要ない。どの世代にもいる、本当に困っている人――心身を病んで就職できない人とか、生活困窮者、女性や非大卒、こういう人たちに税金を使わなきゃいけない。なのに「氷河期」と言い続けるから僕は怒っているんです。 例えば立憲民主党の吉川沙織議員ね、氷河期のことばっかり話してる人なんです。で、「就職氷河期世代で、偶然に運良く、職に就けて働けている人は……」って、今年3月に発言してるんですよ(参院予算委員会で)。これどう思います? 山口:逆かな、と私は思います。「偶然、運悪く職に就けなかった人」がどれだけいるか、を見たほうがいいかと思います。 海老原:ですよね。じゃあ運悪く新卒で職に就けなかった人はどのぐらいいるか。氷河期が苦しかったのは確かなんですよ。2000年卒と2003年卒は異常なほど厳しくて、大卒の新卒無業・フリーターが14万人以上。とはいえ、この最悪期でも正社員就職した大卒は年30万人以上いるんです。 山口:氷河期の頃に、私は、いわゆるD・Fランクとされる大学で就職支援をした経験があります。有効求人倍率が1を切って本当に最悪の時期でしたけど、それでも多くの学生は正社員で就職できていたんですよね。大手企業には行けないけれど、まったく就職できなかったというのには違和感を覚えます。

氷河期に起きた“1ランク下げドミノ”

海老原:氷河期でも、よく言われるように「大手の採用が全然なかった」なんてことはないですよね。今回の本に載せていますが、最悪期の2000年に大企業が大卒を何人採用したか、『就職四季報』で片っ端から調べたんです。そうしたら、名だたる大企業が数百人単位で採用していて驚きました。業界によって例年の4割減~例年並み、とバラつきはありますけど。 山口:超大手企業は、いつだって就職は難しいんです。求人倍率0.4~0.6倍ぐらいの幅で、景気に関係なく厳しい。ですので、景気が悪い時は学生に対して「今でもちゃんと採用はあるから」と言いますし、逆に、景気が良くて就活を舐めてかかる学生が多い時期には「いつでも厳選採用は変わらないよ」と話すようにしています。 海老原:結局、氷河期でも、上位大学は就職先を1~2ランク落としたぐらいの話なんですよ。Sランク大学で、例年ならメガバンクだったのが、氷河期は地銀とか。そうやってランク下げのドミノが起きた結果、D~Fランク大学にしわ寄せがいって、大量の無業・フリーターが出た――というのが僕の実感です。
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氷河期世代の大卒は、大半がもう正社員になっている
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「就職氷河期世代論」のウソ

詳細なデータが解き明かした、意外すぎる氷河期世代の実像とは?