もう“大卒”の肩書きに意味はない!? 大卒余りで、ホワイトカラーの職が足りない
1993~2004年に就職し、現在40~50代になっている「就職氷河期世代」。この世代が就職難で“損をした”のは事実だが、どの程度の損なのか?氷河期が原因なのか?
それを精緻に検証したのが、雇用ジャーナリスト・海老原嗣生氏の新著『「就職氷河期世代論」のウソ』だ。
このほど、経済動画メディア「ReHacQ(リハック)」の高橋弘樹プロデューサー、元衆議院議員で人材派遣会社に勤務経験もある宮崎謙介氏を招いて、海老原氏との鼎談が行われた。
激論と笑いで盛り上がったトークの、ごく一部をお届けする。
「大卒だからホワイトカラーになれる時代は、もうとっくに終わった」。
今回の鼎談で、海老原氏はそう語った。氷河期から現在にかけて、大卒余り、ホワイトカラーの受け皿不足が深刻化しているというのだ。
だとしたら、今から転職を考えている大卒ミドルや、子どもを将来大学に入れる世代にも、大いに関係がある話だ。
職業に貴賤はないが、ホワイトカラーを希望する大卒が多いのは事実。だが、もう「大卒」に意味はないのだろうか?
海老原:氷河期に求人が激減したのは事実です。でも、就職難はそれ以外の要因も多々あるんです。
そのひとつは、大学卒業者の急増。バブル期の1980年代、四大卒は年37万~40万人でした。それが氷河期に急増して、2001年には年54万人を超えた。約1.5倍ですよ。
これは大学をめちゃくちゃに新設したからで、増えたのはほぼ偏差値50以下の大学ばかりです。つまり大学が下方に広がったわけ。その結果、職にあぶれる大卒も増え、大卒の平均収入も下がったんです。
ちなみに現在は59万人以上 です。それなのに今、みんながもっと大学に行けるように、授業料をタダにする「大学無償化」をしようとしている。この政策、合ってます? 僕はおかしいと思う。
宮崎さん、いかがですか?早稲田の法学部ですっけ?
宮崎:いや商学部です。10年ぐらい前、僕が議員だった当時から、これはずっと議論されてました。大学全入時代(入学者より募集定員のほうが多い)なのに、さらに枠を広げようという話があって、「果たして、みんなが大学に行ってホワイトカラーの仕事に就くべきなのか?」という議論をしていましたね。
海老原:もう、大卒だからってホワイトカラーにはなれないですよ。
昔なら大学出た人がなかなかやらなかった仕事、“非ホワイトカラー”に就職する大卒が増えているんです。お店での販売員や、飲食店での接客、介護、工場の生産管理とか。
大卒で“非ホワイトカラー” (※)に新卒就職した人数を調べてみたら――1985年に7万人強だったのが、氷河期の2000年には9万5000人、2020年には15万人に激増しているわけ(学校基本調査より)。
つまり、氷河期のせいじゃないんです。大卒余りでホワイトカラーの受け皿がないという、現在に続く問題なんですよ。
よく氷河期世代の人が、「大卒でも量販店とか外食に就職する人がいた」と嘆くけど、もう大卒ならスーツ着てオフィスで働ける時代は終わったんです。日本経済の低成長や、産業構造が変わったことで、新たなホワイトカラーの職が生まれないから。
※“非ホワイトカラー”は以下3分類の合計
①販売従事者(商品等の販売、一部営業など)
②サービス職業従事者(飲食店での接客、調理、介護など)
③保安・技能・運輸・生産(工場の生産管理、ドライバーなど)

「大卒→オフィス、スーツ」という前提は過去のもの(画像はイメージです)

低偏差値の大学をつくりすぎて大卒が激増

写真左から高橋さん、宮崎さん
“非ホワイトカラー”に就く大卒が急増中
よく氷河期世代の人が、「大卒でも量販店とか外食に就職する人がいた」と嘆くけど、もう大卒ならスーツ着てオフィスで働ける時代は終わったんです。日本経済の低成長や、産業構造が変わったことで、新たなホワイトカラーの職が生まれないから。
※“非ホワイトカラー”は以下3分類の合計
①販売従事者(商品等の販売、一部営業など)
②サービス職業従事者(飲食店での接客、調理、介護など)
③保安・技能・運輸・生産(工場の生産管理、ドライバーなど)
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『「就職氷河期世代論」のウソ』 詳細なデータが解き明かした、意外すぎる氷河期世代の実像とは?
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