「世界最大のラーメングループを目指す」吉野家HDに、京都発ラーメン店が決断「社員の幸せを考えて…」
牛丼チェーン「吉野家」やうどんチェーン「はなまるうどん」を運営する吉野家ホールディングス(以下、吉野家HD)は、牛丼・うどんに次ぐ「第3の柱」として“ラーメン事業”に注力している。
2025年5月に発表された中期経営計画では、2024年度の売上高80億円から400億円へと引き上げ、店舗数も125店舗から500店舗に拡大する目標を立てている。
すでに煮干醤油ラーメンの「せたが屋」や豚骨鶏ガラ醤油ラーメンの「ばり嗎」といったラーメンブランドを傘下に持ち、直近では鶏白湯らーめんと台湾まぜそばを主力とした京都発のラーメンチェーン「キラメキノトリ」をグループに迎え入れるなど、M&Aによる体制強化にも乗り出している。
そんな吉野家HDにグループインした「キラメキノトリ」を運営するキラメキノ未来株式会社 代表取締役の久保田雅彦さんに、大企業の傘下に入った理由やラーメン事業の拡大戦略について話を聞いた。
そんななか、2025年1月には吉野家HDの完全子会社となり、大手傘下に入る形で新しい一歩を踏み出した。
久保田さんは、これまでもいくつかの企業からM&Aの打診があったものの、そこから話を進めることはほとんどなかったと話す。しかし、2024年6月に吉野家HD側から働きかけがあった際は、「M&Aに興味がないとはいえ、誰もが知るビッグネームだったこともあって心が動かされた部分もあった」と語る。
「その頃は業績も悪くないタイミングでしたし、経営者として自分の力で会社を今まで引っ張ってきたという自負がありました。そのため、外部資本に頼るというM&Aの選択肢はあまり関心がなく、本音としては、むしろ事業を自分たちの力で伸ばしていきたいという想いが強かったです。
ただ、吉野家HDというビッグネームからお声がけいただく機会はそんなにないと思い、まずは話を聞いてみようとトップ面談をさせていただいたのが始まりでした」(久保田さん、以下同)
M&Aに対して積極的でなかった久保田さんの考えを変えたのは、「世界最大のラーメングループを目指す」という吉野家HDの大きなビジョンだった。中期計画に基づく成長戦略の中で描くスケール感は、中小企業の経営者ではなかなか想像し得ないものだったからこそ、強いインパクトを与えたのである。
「初めてM&Aに対してポジティブな感情が芽生えた瞬間でした」
そう振り返る久保田さんだが、真っ先に考えたのは“社員の幸せ”だったそうだ。
「私たちは10年以上かけて20数店舗まで成長してきましたが、吉野家HDの一員に入れば倒産リスクなどの不安要素が減り、海外展開や新規ブランドの出店といった成長スピードが今よりも速くなるのではと考えました。それに伴って新しいポジションも生まれ、店長からマネージャー、マネージャーから部長へといったキャリアアップの機会も確実に広がると感じたんですね。
大きなグループの中で新しいステージに挑戦できることは、社員にとっても大きなメリットだと強く思いましたし、吉野家HDの掲げるラーメン事業のビジョンに対し、『その一端を担える存在になれるかもしれない』と思えたことが最終的な決め手となりました」
今回のM&Aにあたり、久保田さんはいろいろな先輩経営者に相談したそうで、上の世代からは「創業者としての誇りや魂を売るのか」といった厳しい意見も少なくなかったとのこと。一方で、同世代の経営者と話すと、ポジティブな意見をもらうことが多く、世代間で価値観が大きく変わってきているのを感じたという。
その背景には、この10年でラーメン業界の有名店が次々と大手資本の傘下に入る事例が増えていることが挙げられる。
「創業や出店はいわば『0→1の世界』で、そこからどこまで伸ばせるかは経営者の実力が問われます。私もこれまで20数店舗まではつくることができましたが、50店舗、100店舗といった規模になると、背負うリスクは一気に増え、危険な領域に足を踏み入れかねないという感覚もありました。
だからこそ、さらに成長を求めるのであれば、どこかのタイミングで外部の力を借りるという選択は正しい判断なのではないかと、トップ面談を機に考えるようになりました」

キラメキノ未来株式会社 代表取締役の久保田雅彦さん
吉野家HDからオファーをもらうまで「M&Aに興味がなかった」
2013年4月に創業し、現在は京都と大阪を中心に24店舗を展開するキラメキノトリは、濃厚な「鶏白湯らーめん」と旨辛な「台湾まぜそば」を看板メニューに持つ繁盛店だ。京都発祥のラーメン店ということから、特に地元の大学生から“ソウルフード”としての支持を得ており、人気の下支えとなっている。
台湾まぜそばの写真

鶏白湯らーめんの写真
真っ先に考えたのは”社員の幸せ”
M&Aに対して積極的でなかった久保田さんの考えを変えたのは、「世界最大のラーメングループを目指す」という吉野家HDの大きなビジョンだった。中期計画に基づく成長戦略の中で描くスケール感は、中小企業の経営者ではなかなか想像し得ないものだったからこそ、強いインパクトを与えたのである。
「初めてM&Aに対してポジティブな感情が芽生えた瞬間でした」
そう振り返る久保田さんだが、真っ先に考えたのは“社員の幸せ”だったそうだ。
「私たちは10年以上かけて20数店舗まで成長してきましたが、吉野家HDの一員に入れば倒産リスクなどの不安要素が減り、海外展開や新規ブランドの出店といった成長スピードが今よりも速くなるのではと考えました。それに伴って新しいポジションも生まれ、店長からマネージャー、マネージャーから部長へといったキャリアアップの機会も確実に広がると感じたんですね。
大きなグループの中で新しいステージに挑戦できることは、社員にとっても大きなメリットだと強く思いましたし、吉野家HDの掲げるラーメン事業のビジョンに対し、『その一端を担える存在になれるかもしれない』と思えたことが最終的な決め手となりました」
今回のM&Aにあたり、久保田さんはいろいろな先輩経営者に相談したそうで、上の世代からは「創業者としての誇りや魂を売るのか」といった厳しい意見も少なくなかったとのこと。一方で、同世代の経営者と話すと、ポジティブな意見をもらうことが多く、世代間で価値観が大きく変わってきているのを感じたという。
その背景には、この10年でラーメン業界の有名店が次々と大手資本の傘下に入る事例が増えていることが挙げられる。
「創業や出店はいわば『0→1の世界』で、そこからどこまで伸ばせるかは経営者の実力が問われます。私もこれまで20数店舗まではつくることができましたが、50店舗、100店舗といった規模になると、背負うリスクは一気に増え、危険な領域に足を踏み入れかねないという感覚もありました。
だからこそ、さらに成長を求めるのであれば、どこかのタイミングで外部の力を借りるという選択は正しい判断なのではないかと、トップ面談を機に考えるようになりました」
1
2
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
記事一覧へ
記事一覧へ
【関連キーワードから記事を探す】
うどん・天ぷら・カレーが「968円で食べ放題」。異常コスパの“行列ができる”うどん新店を実食した結果
【2025年はすでに682杯】「毎日2杯の麺」を食べ続ける31歳女性を直撃。「麺以外の食事はお寿司やステーキ」健康診断の結果は
「世界最大のラーメングループを目指す」吉野家HDに、京都発ラーメン店が決断「社員の幸せを考えて…」
資さんうどん「年間540万個売れる」和スイーツが存在するワケ。“うどんと交互に食べても”違和感がない
業界1位「丸亀製麺」と2位「はなまるうどん」の序列が決まったワケ。「資さんうどん」はうどん業界の序列に変化をもたらすか
この記者は、他にもこんな記事を書いています




