更新日:2026年01月22日 14:06
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「山上被告は信者だった」報道は本当か…統一協会が“TM文書”を全面否定、取材で見えた食い違い

韓国の進歩系のハンギョレ新聞が昨年12月29日、世界平和統一家庭連合(統一協会)の内部文書<トゥルーマザー(TM、「真のお母様」>に「我々が応援した国会議員の総数は、自民党だけで290人」「高市早苗氏の後援会と我々は親密な関係にある。高市氏が総裁に選ばれることが天の思し召し」などの記述があり、日本の政界と統一協会が密接な関係を示す記述があるとスクープした。『週刊文春』も3200頁に上るTM文書を入手し詳報している。

TM文書の成り立ちと、日本政界との関係を示す記述

「TM文書」は、韓国統一協会による政界工作の捜査の過程で警察が捜査で押収した文書で、徳野英治・日本統一教会会長(当時)が韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁に当てた222回の報告メモが元になっている。教団本部“ナンバー2”の尹煐鎬(ユン・ヨンホ)元世界本部長がまとめた。文書の期間は2018年から22年までで、徳野氏は安倍晋三元首相と同席した自民党の萩生田光一氏(衆院議員、現自民党幹事長代行)にエルメスのネクタイも贈呈するなど、萩生田氏が連絡役だったと記され、高市氏の実名も32回載っている。 また、安倍氏と教団の関係は、彼が首相の座を退き、暗殺事件によって死亡する直前まで続いたとされる。安倍氏は首相を退いてから1年後の2021年9月、旧統一教会が主催した「シンクタンク2022 希望前進大会」で、映像を通じての基調講演を行った。暗殺事件直前の2022年7月に統一協会は「安倍元首相の依頼で我々が応援している」(TM報告)と述べ、参院候補者である井上義行氏に対する水面下の選挙運動を展開していた。 ハンギョレ記事によると、徳野元会長は「安倍首相が推薦する北村経夫参院議員を我々団体がどこまで応援するか、決意を聞きたかったのは明らかだった」とし、安倍首相との面談の目的は「選挙応援」であったと報告。さらに「(我々は)これまでは10万票だったが、今回は30万票とし、最低でも20万票は死守すると宣言した」として「(安倍首相が)それ(選挙支援)について非常に喜んで安心しているようだった」と伝えた。 その後、統一協会の組織票を基盤に当選した北村議員は、東京都渋谷区の統一協会の「松濤(しょうとう)本部」を自ら訪問し「恩返し」を示したという。 記事には、「長島昭久前首相補佐官は合同結婚式を挙げていた元会員」という記述もあった。長島氏は「学生時代に入会した。霊感商法被害が知られ始めてから、30年以上前に脱会した」とコメントした。また、TM文書は統一協会が応援した自民党の国会議員は290人と報じたが、自民党のアンケート調査では、統一協会と接点があったとされたのは179人で、氏名公表は121人だった。 ハンギョレ記事で、安倍氏ら自民党関係者と統一協会の橋渡し役とされた萩生田氏は18日、YouTubeチャンネル「ReHacQ―リハック―」の生配信動画に出演し、エルメスのネクタイを贈られたと記載されたことと関連し、「事実無根だ。(統一協会から)物をもらったことはない」と否定した。ただし、自身が、統一協会から支援してもらったことはあると認めた。また、「(統一教関係者が)お客様として党本部に来たときに陪席を求められたり、部屋に案内したところで顔を合わせたことはあるかもしれないが、私が直接この団体と何かやっているということはまったくない」と述べた。ハンギョレは19日、「高市首相の側近、旧統一教会の『韓鶴子報告』に登場」と題した続報を報じている。

TM文書に記された「山上被告は信者だった」とする報告

ハンギョレの記事には、2022年7月8日午前10時31分に奈良市の近鉄大和西大寺駅北口前で起きた安倍元首相襲撃事件で逮捕された山上徹也容疑者が、教団信者の息子と確認された後、同10日、「山上徹也が(日本統一教会の)大和郡山家庭教会の所属となっていたため、奈良教区長のキム氏が本部会長の指示で会員記録を削除した」と報告したという記述があった。同日の報告では、山上徹也の母親が数千万円の献金をしたことで家庭内のあつれきが深刻化したとし、「そのような家庭環境ゆえに、犯人も教会に恨みを持っていたようだ」とも報告したとあったという。 昨年10月28日から始まった奈良地裁の山上被告の裁判員裁判は21日に判決が言い渡される。検察側は昨年12月18日の公判で、無期懲役を求刑、弁護側は「懲役20年までにとどめるべきだ」と主張した。被告の母親が統一協会へ約1億円の献金をしたことによる被告の不遇な生い立ちを量刑判断にどの程度考慮するかが注目される。 15回開かれた公判で、山上被告が高校卒業後に約半年、教団施設に週1回通い、母親に連れられ韓国へも行ったことが判明しているが、教団の信者だったという情報は公判では確認されていない。また、統一協会の田中富広会長(当時)は安倍氏の死亡3日後の22年7月11日の記者会見で、山上容疑者の母親が信者と認めた上で、山上容疑者については、「過去においても信者であったという記録は存在しない」と述べていた。
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統一協会トップが語ってきた山上被告事件への認識
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1948年、香川県高松市生まれ。72年、共同通信社に入社。84年『犯罪報道の犯罪』(学陽書房)を発表。ジャカルタ支局長など歴任。94年に退社。94年から2014年まで同志社大学大学院メディア学専攻教授。人権と報道・連絡会代表世話人。『記者クラブ解体新書』(現代人文社)『安倍政権・言論弾圧の犯罪』(社会評論社)『生涯一記者 権力監視のジャーナリズム提言』(社会評論社)など著書多数。あけび書房から2月、『自民党は解党・解散せよ 統一協会・裏金・軍拡の政党は不要』と『安倍元首相銃撃・山上徹也さん裁判傍聴記』を緊急出版する。現在、予約を受け付け中。詳細はあけび書房のHPを参照。 Xアカウント:@hCHKK4SFYaKY1Su
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