エコノミー席「頭カクンで眠れない」問題を解決?航空ジャーナリストが見つけた“ネックピロー不要”の新ヘッドレスト
海外旅行や出張で長距離路線のエコノミークラスに乗ったことがある人なら、一度は全く眠れなかった経験があるのではないだろうか。映画を見終わり、機内が暗くなって眠ろうとしても、頭が前へカクンと倒れて目が覚める。横へ傾けば首が痛くなり、何度も寝返りを打つうちに目的地へ到着してしまう。時差ぼけに加えて疲労感が残り、「飛行機に乗っただけでヘトヘト」という状態になる。
エコノミークラスは「狭い」「窮屈」というイメージばかり語られるが、多くの利用者にとって本当に深刻なのは「まともに眠れない」ことではないだろうか。その課題に対する新しい提案として登場したのが、エミレーツ航空が導入を始めた新型ヘッドレスト「U-Dream」だ。

実は、エコノミークラスのシートは突然進化したわけではない。
U-Dreamを開発したサフラン・シートは、航空機用シートを長年手がけてきた大手メーカーだ。だが、航空会社がエコノミー席に求めてきたのは、長らく「快適に眠れること」よりも、「軽く、丈夫で、多くの座席を搭載できること」だった。
燃料費を抑え、一人でも多くの乗客を運ぶことが優先され、快適性への投資は限られていた。
しかし航空会社同士の競争が激化すると、「軽量化」に加え「快適性」が重要な差別化要素となる。2000年代以降には、高さだけでなく左右へ折り曲げられるサイドウイングを備えた可動式ヘッドレストが普及し始めた。頭を安定して支えることで、長距離フライトの疲労を軽減する工夫が各社で進められたのである。
現在では、多方向に調整できるヘッドレストはフルサービスキャリアでは珍しくない装備となった。しかし、その役割はあくまで「頭を支えること」にとどまっていた。

その進化をさらに一歩前へ進めたのが、エミレーツ航空とサフラン・シートが共同開発したU-Dreamである。
従来の可動式ヘッドレストは「頭を支える」ことを目的としていたのに対し、U-Dreamは「快適に眠ること」を目的として設計された。
左右の大型サイドウイングが頭と首を包み込むように固定し、上下や角度も細かく調整できるため、睡眠中に頭が前へ倒れたり左右へ揺れたりするのを防ぐ。まさに、多くの旅行者が持参していたネックピローを最初から座席へ組み込んだような発想である。
航空機用シートである以上、安全基準を満たす必要もある。大型のサイドウイングを備えながら、離着陸時や緊急時の安全性も確保した点が、この製品のポイントだ。
これは単なるヘッドレストの改良ではない。「頭を支える装置」から「睡眠をサポートする装置」への進化と言ってよいだろう。


U-Dreamの眠れるヘッドレスト ©Emirates
なぜ、エコノミー席は長年「眠れないまま」だったのか
「ネックピローを座席に付けた」という逆転の発想

「U-Dream」が装着されるエミレーツ航空のエアバスA350-900型機(筆者撮影)

ヘッドレストが左右に持ち上がる現在多いタイプのシート(筆者撮影)
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航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「Avian Wing」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。Facebook avian.wing instagram@kitajimaavianwing
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