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借金1億円、自殺未遂…エリート会社員が双極性障害に

北嶋一郎,生きぞこない

双極性障害が発症した北嶋一郎氏

 年収2000万円超え、愛車はポルシェ、銀座和光を貸し切りで女性と買い物。そんな絵に書いたようなバブルを謳歌した大手IT企業I社の“元”エリートビジネスマン、北嶋一郎氏(46歳)。

 当時、北嶋氏は自身が統括していた部署がまるごと中国企業に買収されたことに愛想を尽かし、I社を辞めた。そこから外資系のIN社や国内大手のF社などに転職をする。だが、I社でこそエリート街道まっしぐらだったが、後の2社ではあっという間にリストラ。そこから彼の人生は豹変した。

 当時付き合っていた彼女にあげた分譲マンション、北嶋氏の趣味だったという高級時計のコレクションや、愛車のポルシェの維持費・改造費、その他税金・生命保険の滞納がかさみ、彼の借金は1億1000万円にまで膨れ上がった。自業自得とはいえ自己破産に追い込まれ、自殺未遂。かろうじて命は取り留めたが、双極性障害2型で「障害者2級」の認定を受けてしまった。双極性障害(躁うつ病)といえば、精神障害の中でも自殺率・再発率が高い難病である。

 そんな壮絶な人生体験を綴った『生きぞこない』(6/5にポプラ社より発行)の著者である北嶋氏に、双極性障害との向き合い方について聞いてみた。

――この病気とうまく付き合う方法は?

「当たり前のことかもしれないけど、まずは自分が双極性障害だと認めること。心の病って、自分で認めないと話にならない。薬も飲もうとしないし、人の話も聞かない。自分の価値観だけで動いてしまう。精神科や心療内科に行っても病気と対峙しようと思わない。今、月に一度だけ病院に行って、薬をもらって治療しています。そのペースでの薬の処方がいいそうなので。でも改善の兆候はものすごい感じています。ちなみに本を書いて色々と過去を思い返していたときは、心がジェットコースターみたいに揺れ動きましたけど」

――もし、今でも仕事を続けていても、この病気にはなっていたと思いますか?

「自分でもまだ病気のことを完全に理解していないですが、遺伝が原因とも言われていて、もし遺伝だったとすると遅かれ早かれなっていたと思います。それに自分には人間力とか、知識とか応用力とかが欠如しているから、会社に残っていてもいずれはぶち当たっていたかと。今思い返せばトヨタのモーレツサラリーマンで、北米支社などへの勤務を歴任し、心筋梗塞で早くに亡くなった自分の父親もこの病気だったじゃないのかと思います」

――今、振り返ると父親以外にも「もしかして、この人自分と同じ病気なんじゃないか」と思うような人はいる?

「I社の中ではかなりいます。自分も参加してきた『出世レース』に精を出していた人たちにはかなり多かったと思う。仕事って“数字”を追いかけだすときりがない。でも、それが楽しかったりもする。それが楽しくて、それが目的になっちゃうような人はもしかしたら病気じゃないかなーと思います。でも、仕事って一人だけじゃなくて、色んな人の力で成り立つものなんですけどね」

 こうして自身の病気と過去の経験を振り返るが、北嶋氏自身もこんな風に思えるようになったのは病気になってからの話だとか。それまでは、仕事で他人を蹴落としたり、カネや高級な時計・車で他人や女性の気持ちを引いていたり、「人間関係なんてカネだ」と思っていたという。本人も「今、思い返すと寒気がする」とのことだ。病気になって金や物以外の価値観が生まれたのは、不幸中の幸いだったのかもしれない。

――双極性障害や心の病に理解のない人たちに対して言いたいことは?

「うーん。すごく難しいですよね。会社でも昔、心の病気で休んでいた人とかいましたけど。昔の自分だったら絶対に心の病なんか認めなかった。でも、病気のことを何もわかりもしないで、無責任にいじってほしくはないですよね。それだけは本当に止めてほしい。脳波検査とか医学的な研究で、心の病にも科学的根拠があるとわかってきている。“目に見えないもの”だから認めないっていうことはしないでほしい」

――同じく心の病で悩んでいる人たちについてメッセージは?

「陳腐かもしれないですけど、まずは自分のことを愛してほしいし、自分のことを認めてほしい。後はきちんとそれを周りにカミングアウトしてほしい。社会はもうそういうものを受け入れる体制が出来ている。中には色々、ネットなんかで罵詈雑言を言ってくる人もいるけど。カミングアウトして、自分についてきてくれる人と本音で語り合ってわかってほしいなと思います。そういう友達を大事にして、その人と大事に人生を歩いて行ってほしい。後は絶対に自殺なんかするなよと。特に双極性障害で自殺する人は、うつ病より多いので。自殺するくらいだったら、自分のツイッターのID( @a_2_f )にメッセージを送ってほしい。是非、語り合いたいと思います。自分が『双極性障害』や心の病だとわかってもどうしていいか分からない人が多いと思う。特に40代~50代とかになるとますます話しにくいかもしれない。SPA!で臨時相談室とかやるのもいいかもしれませんね(笑)」 <取材・文/日刊SPA!編集部  撮影/野口博(フラワーズ)>

生きぞこない

エリートビジネスマンの「どん底」からの脱出記




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