「スイス銀行は犯罪資金を隠してくれる」は本当か?
兜町の住人たちは、とかく噂好きである。なかには、真偽不明で噂の域を出ないものから、事実なのに噂だけが独り歩きし都市伝説化しているものまで多数ある。金融業界にまつわる数々の都市伝説の真偽を事情通に聞いて、それらの真相を究明した!
◆スイス銀行なら犯罪資金も隠してくれる
答えは、「以前はイエスだったが、今はノー」。
「永世中立国スイスには、昔から欧州の貴族や財閥が戦乱を恐れて資金を退避させてきました。スイス政府も法律で銀行に高い守秘義務を課し、警察、司法当局などのどんな権力も、スイス銀行の顧客情報の開示を求めたり閲覧したりすることは禁じられています。ところが、テロと戦う米国などの圧力を受け、3年前、スイス政府は守秘義務条項を緩和し、外国捜査機関の口座照会にも応じるようになりました。犯罪資金のマネーロンダリングなどが判明した場合には、当局への通知が義務付けられています」(株式ジャーナリスト・大神田貴文氏)
ちなみに「スイス銀行」という銀行は存在せず、スイス銀行法に基づいて運営されているスイス系銀行の総称、通称のこと。
◆日本銀行は今も新興市場企業
日銀はジャスダックに上場し、4万円前後で売買されている“新興市場企業”。では、日銀株の半分を買い占めれば、日銀総裁にもなれるし、金融政策も思いのまま?
「それは無理(笑)。上場しているのは株式ではなく、議決権のない出資証券。株券が電子化された2年前まで、日銀出資証券は100単位(400万円相当)が1枚の紙で、換金しやすく持ち運びしやすい高額資産として、裏社会でも人気だったとか……」(大神田氏)
◆K氏を操っているのは外資系証券という噂
「明和産業は大物仕手筋K氏が操っていると言われますが、兜町では『操られているのはK氏のほうで、外資系証券が“カードカウンティング”の手法で稼いでいる』との声がチラホラ」(大神田氏)
カードカウンティングとは、トランプで配られたカードをすべて記憶し、次に目当てのカードが出る確率を予測する手法。株では、1人で大量に取引すれば、値動きの主導権を握ることができる。
「突然、大量の売りを出せば小口投資家のパニック売りを誘えるし、小口投資家の売りが収まったときに買えば、急騰を演出できる。売買シェアが6割を超えたあたりから相場のコントロールは可能になり、外資系証券が得意とする手法。数十万株の大口取引が交錯しますが、こんなのは無担保で発行株数を超えて無限に売買できる証券会社が絡んでいないと説明できない、という見方があるようです」(同)
取材・文/金融都市伝説取材班 図版/エフスタイル
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