[電子コミック戦国時代]オレらはど~なる!?【後編】
エロい描写はOKでもセリフの下ネタはNG
石原 僕も今、ケータイで配信しているんですけど、「エロしかダウンロード(以下、DL)数が稼げない」って言われて、単行本1巻分で終わっちゃったんですよ(苦笑)。
清野 雑誌などの人気投票では、いくつかアンケート項目があるから、多少救いもあるんですけど、DLだと数字がすべてなので、酷っちゃ酷ですよね。
石原 僕にとっては恐怖でしかないです(苦笑)。
――やはりエロ系漫画のDL数が多いのですね。でも、エロ表現の規制は厳しくないのですか?
清野 下ネタは紙媒体よりも、はるかに厳しいですね。ケータイに関して言えば、キャリアの審査があるのかどうかはわからないですけど、「絵」よりも「セリフ」のほうが規制が厳しい気がします。絵は、男女の性行為での結合部分は描いちゃダメらしいんですけど、それをクリアすれば……。でも、セリフは例えば「ちんちん」もダメで、「ち●ち●」に直されました。
見ル野 中国にパンダのチンチンっていたよね? あれは?
清野 あれはいいんじゃないですか?(苦笑) それより見ル野さんこそ大丈夫なんですか? セリフに下ネタ多いですけど。
見ル野 あぁ、それは「手マン」とか「手チン」とかのこと?(一同笑) ケータイはダメかもしれないけど、Webはわりと自由だと思うよ。アップル以外は。
石原 アップルは厳しいですよね。iTunesで、僕の『一杯いきますか!』(マンサンコミックス)を配信しようって話が来てるんですけど、いつも漫画の1コマ目の左端に生ビールのポスター風のビキニの女性を描いてるんです。それが削られるかも、って。
一同 それは厳しい!
◆タッチパネルでは絵が強い人が勝つ! ――技術的な話を伺いたいのですが、今後、電子コミックの形態はどのようになると思いますか? 見ル野 マジメな話、していいですか?(笑) 僕、アメリカのMARVELコミックは強いと思いますよ。映画みたいに何十人ものスタッフで作ってるんです。だから1話のDL料が200円でも、すごく人気が高い。日本でいえば、例えば「井上雄彦先生がフルカラーで描き下ろし!」みたいな。それなら200円でも300円でも売れるでしょうね。 ――絵のクオリティがますます重視されるということ? 見ル野 もしくは『きょうの猫村さん』みたいな絵本形式のもの。今の漫画の技法、例えば「集中線」とかは、手塚治虫先生が「簡単に作れる映画」として生み出したものなので、紙以外には向かないと思うんです。だから絵本。 ――見ル野さんのフローチャート式の4コマ漫画(『東京フローチャート』、IKKIコミックス)、あれはiPadなどのタッチパネル系にとても向いている気が……。 見ル野 あ、わかりました!? あれ、タッチパネルで上下左右、自由にスクロールしながら読めるマンガはどうだろう、と先を見越して、7年前に描き始めたんですよ。 石原 おお~! 見ル野 でも、iPhoneが出る前に打ち切られた(一同苦笑)。でも実際どんなふうに見えるのか気になったんで、この間PDFにしてiPadに入れて自分で読んだんです。そしたら……あんまり面白くなかった(一同爆笑)。読む側が混乱しちゃって。 ――今、さらに新しいアイデアは思い浮かびますか? 見ル野 今はギミックですね。絵を触ったらリンク先に飛ぶとか。物の説明がポンと出たり。 ――触った絵が動きだしたり? 見ル野 全部動くとアニメーションになっちゃうから、一部がムービーになったりするのはいいよね。 清野 ムービーとアニメーションと漫画をうまく融合できたら、と考えたことはあります。 ――あるコマまで行ったら、急に動画になったり。 清野 そうですね。読み手もびっくりするんじゃないかな、と。まぁ、1話作るのに相当な……お金もかかりそうですけどね(苦笑)。ただ、面白いものはできると思いますよ。 見ル野 ハード的には、今は3Dテレビがあるけど、あれが進化して、立体ホログラムになると思う。だから漫画もホログラムに……。 石原 描くの面倒くさそうですね(笑)。 見ル野 そこは飛び出す絵本みたいに、ペラペラのキャラが飛び出したり……って、微妙か(笑)。あと、ハード的には、「めくり」が好きな、こういう「めくりハード」ってのが出るかもしれないですね。有機ELで。10ページくらい出勤前にDLして、電車でめくって読ませるっていう。 石原 見ル野さんそれ、作ったら? 見ル野 いや……無理だ。(笑) ――今後、ハードの進化に伴って、人気マンガのジャンルも変わっていきそうですけど、どうですか? 石原 「俺たち30代は、団塊と団塊ジュニアに向けて描いていくしかない」って、ある方から言われまして。 見ル野 今の20代って、漫画をほとんど読んでないみたいからね。 石原 電子だろうが紙だろうが、それらの世代が上がっていくのを、追っかけていくしかなくて。死ぬまでその層を追っかけていく。 見ル野 じゃあ、年金漫画とか? 石原 あ、いいっすね、年金漫画。 見ル野 人間ドック漫画とか。 石原 不整脈漫画とか(一同笑)。 見ル野 僕ら”不整脈ズ”なんですよ ――清野さんはどうですか? 清野 僕はもう、これが最後でもいいんですよもう。 ――そんな(笑)。 清野 僕は今はもうボーナストラックじゃないですけど。30になったらちゃんと就職して働こうと思ってたところで、29くらいのときに連載決まって、まぁ何とかメシ食わせてもらってるんで、僕はもう、いいです。 見ル野 ちなみにケータイで売れている漫画のジャンルは、エロ以外もあって。3年前に聞いた話ですけど、土田世紀先生の『ギラギラ』とか、倉科遼先生の『女帝』がめっちゃ売れてたんですよ。なぜかというと、キャバ嬢とかホステスとか、待機時間のある人が買っているんですよね。今後もそこをターゲットにしたマンガが売れるんじゃないかと。たとえば、市役所の給食係に向けた給食漫画『シチュー王』(一同爆笑)。「なにぃ、新しいー!」とか(笑)。あと消防団とか。全然火事起こんねぇってときに読ませるマンガ。スキマ産業ですよ。 ――それ、すごいアイデアじゃないですか! 書いちゃっていいんですか? やられちゃいますよ、誰かに。 石原 秘密にしましょう。 見ル野 秘密にしましょう。 ――まあ、もう書いちゃいましたけどね。それでは、みなさんのなかの誰かが描いた『シチュー王』が、将来電子コミックとしてベストセラーになっていることを祈りつつ、ありがとうございました! 【石原まこちん氏】 ’76年生まれ。代表作にフリーター、ニートらしき若者3人が ファミレスでダベっている漫画『THE3名様』など。 本誌に連載されていた漫画『』はWebSPA!で 電子コミックとして引き続き連載 ◆GENGO 【見ル野栄司氏】 (C)2010 ASCII MEDIA WORKS ’71年生まれ。半導体製造装置エンジニアなどを経て、漫画家と してデビュー。 大人気作品『シブすぎ技術に男泣き!』2巻が発売中。 また12月創刊の電子コミック『電撃コミックジャパン』で『ロッカク』を連載(写真右) ◆『電撃コミックジャパン』 http://comicjapan.dengeki.com 【清野とおる氏】 ’80年生まれ。大学在学中に漫画家デビューするも、卒業と同時に連載打ち切り。 実家の両親の”就職しろ”オーラに耐えられず赤羽に独り暮らしをし、 地域密着漫画をケータイコミックで描いたところ大人気に ◆東京都北区赤羽 http://k-manga.jp/
◆タッチパネルでは絵が強い人が勝つ! ――技術的な話を伺いたいのですが、今後、電子コミックの形態はどのようになると思いますか? 見ル野 マジメな話、していいですか?(笑) 僕、アメリカのMARVELコミックは強いと思いますよ。映画みたいに何十人ものスタッフで作ってるんです。だから1話のDL料が200円でも、すごく人気が高い。日本でいえば、例えば「井上雄彦先生がフルカラーで描き下ろし!」みたいな。それなら200円でも300円でも売れるでしょうね。 ――絵のクオリティがますます重視されるということ? 見ル野 もしくは『きょうの猫村さん』みたいな絵本形式のもの。今の漫画の技法、例えば「集中線」とかは、手塚治虫先生が「簡単に作れる映画」として生み出したものなので、紙以外には向かないと思うんです。だから絵本。 ――見ル野さんのフローチャート式の4コマ漫画(『東京フローチャート』、IKKIコミックス)、あれはiPadなどのタッチパネル系にとても向いている気が……。 見ル野 あ、わかりました!? あれ、タッチパネルで上下左右、自由にスクロールしながら読めるマンガはどうだろう、と先を見越して、7年前に描き始めたんですよ。 石原 おお~! 見ル野 でも、iPhoneが出る前に打ち切られた(一同苦笑)。でも実際どんなふうに見えるのか気になったんで、この間PDFにしてiPadに入れて自分で読んだんです。そしたら……あんまり面白くなかった(一同爆笑)。読む側が混乱しちゃって。 ――今、さらに新しいアイデアは思い浮かびますか? 見ル野 今はギミックですね。絵を触ったらリンク先に飛ぶとか。物の説明がポンと出たり。 ――触った絵が動きだしたり? 見ル野 全部動くとアニメーションになっちゃうから、一部がムービーになったりするのはいいよね。 清野 ムービーとアニメーションと漫画をうまく融合できたら、と考えたことはあります。 ――あるコマまで行ったら、急に動画になったり。 清野 そうですね。読み手もびっくりするんじゃないかな、と。まぁ、1話作るのに相当な……お金もかかりそうですけどね(苦笑)。ただ、面白いものはできると思いますよ。 見ル野 ハード的には、今は3Dテレビがあるけど、あれが進化して、立体ホログラムになると思う。だから漫画もホログラムに……。 石原 描くの面倒くさそうですね(笑)。 見ル野 そこは飛び出す絵本みたいに、ペラペラのキャラが飛び出したり……って、微妙か(笑)。あと、ハード的には、「めくり」が好きな、こういう「めくりハード」ってのが出るかもしれないですね。有機ELで。10ページくらい出勤前にDLして、電車でめくって読ませるっていう。 石原 見ル野さんそれ、作ったら? 見ル野 いや……無理だ。(笑) ――今後、ハードの進化に伴って、人気マンガのジャンルも変わっていきそうですけど、どうですか? 石原 「俺たち30代は、団塊と団塊ジュニアに向けて描いていくしかない」って、ある方から言われまして。 見ル野 今の20代って、漫画をほとんど読んでないみたいからね。 石原 電子だろうが紙だろうが、それらの世代が上がっていくのを、追っかけていくしかなくて。死ぬまでその層を追っかけていく。 見ル野 じゃあ、年金漫画とか? 石原 あ、いいっすね、年金漫画。 見ル野 人間ドック漫画とか。 石原 不整脈漫画とか(一同笑)。 見ル野 僕ら”不整脈ズ”なんですよ ――清野さんはどうですか? 清野 僕はもう、これが最後でもいいんですよもう。 ――そんな(笑)。 清野 僕は今はもうボーナストラックじゃないですけど。30になったらちゃんと就職して働こうと思ってたところで、29くらいのときに連載決まって、まぁ何とかメシ食わせてもらってるんで、僕はもう、いいです。 見ル野 ちなみにケータイで売れている漫画のジャンルは、エロ以外もあって。3年前に聞いた話ですけど、土田世紀先生の『ギラギラ』とか、倉科遼先生の『女帝』がめっちゃ売れてたんですよ。なぜかというと、キャバ嬢とかホステスとか、待機時間のある人が買っているんですよね。今後もそこをターゲットにしたマンガが売れるんじゃないかと。たとえば、市役所の給食係に向けた給食漫画『シチュー王』(一同爆笑)。「なにぃ、新しいー!」とか(笑)。あと消防団とか。全然火事起こんねぇってときに読ませるマンガ。スキマ産業ですよ。 ――それ、すごいアイデアじゃないですか! 書いちゃっていいんですか? やられちゃいますよ、誰かに。 石原 秘密にしましょう。 見ル野 秘密にしましょう。 ――まあ、もう書いちゃいましたけどね。それでは、みなさんのなかの誰かが描いた『シチュー王』が、将来電子コミックとしてベストセラーになっていることを祈りつつ、ありがとうございました! 【石原まこちん氏】 ’76年生まれ。代表作にフリーター、ニートらしき若者3人が ファミレスでダベっている漫画『THE3名様』など。 本誌に連載されていた漫画『』はWebSPA!で 電子コミックとして引き続き連載 ◆GENGO 【見ル野栄司氏】 (C)2010 ASCII MEDIA WORKS ’71年生まれ。半導体製造装置エンジニアなどを経て、漫画家と してデビュー。 大人気作品『シブすぎ技術に男泣き!』2巻が発売中。 また12月創刊の電子コミック『電撃コミックジャパン』で『ロッカク』を連載(写真右) ◆『電撃コミックジャパン』 http://comicjapan.dengeki.com 【清野とおる氏】 ’80年生まれ。大学在学中に漫画家デビューするも、卒業と同時に連載打ち切り。 実家の両親の”就職しろ”オーラに耐えられず赤羽に独り暮らしをし、 地域密着漫画をケータイコミックで描いたところ大人気に ◆東京都北区赤羽 http://k-manga.jp/
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