[電子コミック戦国時代]オレらはど~なる!?【前編】
今年に入り、電子コミック雑誌の創刊が相次いでいる。
この変化について、電子コミックに携わるマンガ家は何を思う?
電子コミック業界の表もウラも徹底暴露のファミレス鼎談!!
ケータイコミックやWebでの連載マンガでも活躍中のマンガ家、石原まこちん氏、清野とおる氏、見ル野栄司氏。彼ら描き手は、電子コミックをめぐる現状、そして未来をどう見ているのか? SPA!11/16号「デジペディア Trend」では掲載しきれなかった鼎談のノーカット完全版を公開!!
――電子コミックに携わってみて、実際どうですか?
石原 電子化が進んで何が一番大きく変わったかというと、やっぱり漫画畑ではない、IT系っぽい人なんかが漫画業界にいっぱい入ってきたような気がしますね。「漫画って儲かるでしょ?」って感じで。
見ル野 あるあるある。IT系と、あとは元広告代理店とか(笑)。
石原 この間、友人がコミケに行ったら出入口にそういう人がすっごいいっぱいいて、「どうですか~! 漫画配信しませんか~!!」って叫んでいるのを目撃したそうですよ。
見ル野 あと、メールもけっこう来るでしょ。「Webを立ち上げるんで、連載どうでしょう?」っていうの。
清野 来ますね~。でも一斉メールだった(一同爆笑)。文章だけ貼りつけてあって。「清野さま」とか、そういう魂のこもってないメールはシカトですよ(苦笑)。
石原 僕も先日、そういう人に「大丈夫、会社もちゃんとあるから」って名刺をもらったんですけど、もう、ヤマ師のニオイがプンプンして。念のためにウチに帰ってグーグルアースで調べたら……ただの民家だったんすよ(一同爆笑)。
見ル野 アブない、アブない!
石原 紙媒体の漫画誌には、すごい腕利きの編集者が何人もいて。やっぱり編集はうまいんですよ。すごく納得できるんですよね。
見ル野 ギャグ漫画の担当編集って、相性があるんですよ。ヴァギナ的な、こう。
清野 何をおっしゃいますか(笑)。
石原 対して電子のほうは漫画畑じゃない人も多いから、ときどき戸惑うことも……。でも、逆に漫画畑でないスタッフさんだったからこそよかったのが、清野さんの『東京都北区赤羽』(GAコミックススペシャル)だと思うんですよね。
清野 そうですね。たまたま最初の担当さんがそうだったのかもしれないですけど、かなり自由に描かせてもらったんですよ。「我々は初心者なんで、とりあえずお好きに描いてください」って感じで。作家の意見を尊重してくださる方で。正直、最初はケータイマンガはどうだろうと思っていたのですが、アップされたのを読んだら「あっ、これって全然アリじゃん!」って思った。お世辞じゃなくて、1コマ1コマずつ、淡々と見せていくだけじゃなくて、演出をしてくださる方がいるんですよ。その見せ方にすごく新しさを感じたんですよ。
――押すごとにセリフが出たり、驚く場面でバイブが震えたり。
見ル野 モーションコミック、オレもやりましたよ。カメラがずーっと下に行ったらフルチンだった、とか、そういうギャグやりましたねぇ。
清野 (笑)。あれは誰に演出されるかによって、だいぶ違ってくると思うんですけど、僕の担当の人は”当たり”だったんですよね。かなり細部までこだわってくださる方で。編集部に演出専門の部署があって。編集者ではなくてデザイナーというんですかね、完全に職人さんですね。ケータイコミックに関しては、そういう才能がある人に出会えるかどうか、というのも重要だと思います。
――電子コミックは過渡期なだけに、いろんな人がぐちゃぐちゃに入り込んでいて、才能がある人が新しい仕事を産み出したりもしている。面白いですね。
見ル野 僕は期待していますよ。もっとぐちゃぐちゃになってほしい。大手からは全然話が来ないんで(笑)。あとやっぱり、Webは紙よりも連載を取るのがラクなんですよね。紙のほうの青年誌っていうのは、ネーム出して、何度も何度も担当編集者とやり取りして、会議にかけてもらって、みんなに挙手してもらって、最後に編集長の意見を聞いて直して、ネームを10本用意して、それから連載スタートして、人気投票でダメなら半年で終わる……っていう。いまだにそれをやってるんで。でも、そのシステムには感謝してますよ。あの頃に、”筋肉”が鍛えられた。
清野 そうですねぇ。
見ル野 ギャグ筋肉ってね、あるんですよ。ボツに耐える筋肉。それが鍛えられたんで、それを通過しといてよかったな、って。
【石原まこちん氏】
’76年生まれ。代表作にフリーター、ニートらしき若者3人が
ファミレスでダベっている漫画『THE3名様』など。
本誌に連載されていた漫画『』はWebSPA!で
電子コミックとして引き続き連載
◆GENGO
【見ル野栄司氏】
(C)2010 ASCII MEDIA WORKS
’71年生まれ。半導体製造装置エンジニアなどを経て、漫画家と してデビュー。
大人気作品『シブすぎ技術に男泣き!』2巻が発売中。
また12月創刊の電子コミック『電撃コミックジャパン』で『ロッカク』を連載(写真右)
◆『電撃コミックジャパン』 http://comicjapan.dengeki.com
【清野とおる氏】
’80年生まれ。大学在学中に漫画家デビューするも、卒業と同時に連載打ち切り。
実家の両親の”就職しろ”オーラに耐えられず赤羽に独り暮らしをし、
地域密着漫画をケータイコミックで描いたところ大人気に
◆東京都北区赤羽 http://k-manga.jp/
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