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杉田成道(演出家・映画監督)インタビュー【後編】

生命が有限であるとは、思いたくない

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――『願わくは、鳩のごとくに』のカバーには、杉田家の家系図がデザインされていますが、本当に大家族だったんですね。

杉田 それは今も一緒ですよ。まるで昭和の家族。寝るところがないから、皆で雑魚寝しています。子供たちがだんだん大きくなって、最近は困っているんですけど。大変は大変で、「堪忍してください、これ以上は死にます」という気持ちもありますが、それでも3人いると面白い。途端に賑やかになりますね。とにかく毎日子供たちの騒ぐ声と親の怒鳴り声が響いている。「ダメって言ってるだろ!」とか「いい加減にしなさい、キーッ!」とか。

――そうした描写の中には、少子化時代に向けてのメッセージなども含まれているのでしょうか?

杉田 いや、全然(笑)。

――(笑)。あるいは子育ての哲学とか……。

杉田 それはもう、成り行きでやっていくよりしょうがないですよ。性格だって驚くほど兄妹で違うし、しつけといっても、とりあえず、飯を食うときには立つな!とか、そんなことを言うぐらい。子供に対しては、昔の人が言ったように、人のお役に立ちなさい、お天道様に恥ずかしくない生き方をしなさい、このふたつで十分じゃないの、と思いますね。

――では、この作品でもっとも伝えたいことは何でしょうか。

杉田 うーん。地球はそれでも回っている、ということぐらいですかね。私の人生もどうせそろそろ終わりだけれど、人間はバトンリレーのように次の世代に何かを渡してゆく。そういうことが描けて、読んだ人がいいなぁ、と思ってくれれば、それだけでうれしいですね。

――命を繋いでゆく、ということでしょうか?

杉田 この年になって子供を育てていると、生命が有限であるという考え方を、受け入れたくないという気持ちも強いんです。肉体が死んでも霊魂として残る――みたいな感じはしないんですけど、なんとなく大気として空中に残っているんじゃないのかなって。「人間は遺伝子の乗り物である」というような冷めた考え方とも違って、親父やその上の世代のじっちゃんのエネルギーが自分に通っていって、そんな自分のエネルギーをまた、その子供たちが吸っている、って思いたいんですね。そういう連続性があるほうが、夢があっていいですよ。

――何か大きな流れの一部として、自分という個人をとらえるわけですね。そういう感覚が希薄だと、俺ひとりで生きて、俺ひとりで死んでいくみたいな、淋しい今どきの若者みたいなことになってしまうのかも。

杉田 かつては全体があって個があるという考え方だったのが、今は、個があって全体があると、常に個が中心にあるというふうに変わってしまった。だから、個がなくなれば世界がなくなるっていう考え方になってしまう。

――『SPA!』の読者世代にも、そう考える人は多いでしょうね。

杉田 個というのは、孤独に耐えうる精神力があってこそなんだけれども。大きな流れのなかに身を委ねれば、大したことを考える必要はないんですよ。結局、なるようにしかならないんだから、もうしゃあないんです(笑)。

Shigemichi Sugita

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’43年、愛知県生まれ。’67年にフジテレビ入社、
’81年より『北の国から』シリーズを手がける。
映画監督作品『最後の忠臣蔵』は12月18日公
開。現在、日本映画テレビプロデューサー協
会会長、フジテレビエグゼクティブディレク
ター、日本映画衛星放送代表取締役社長


願わくは、鳩のごとくに

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「60歳の育児日記を戯文のように綴った年賀状」が各方面にウケたのがきっかけで執筆開始。
『en-taxi』23~27、29、30号にて連載(小社刊/1470円)


※詳細・ご購入は、コチラから。

取材・文/土屋 敦 撮影/尾藤能暢

― 杉田成道(演出家・映画監督)インタビュー【3】 ―




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