更新日:2012年09月13日 14:38
デジタル

ファミコンは世界一売れている電子楽器だった?

ニコニコ動画黎明期から、ファミコン曲の演奏動画で人気を得た面々が今、飛躍している。なかにはファミコンやスーファミなどのゲーム機を楽器に改造してしまった人もいるようだ。彼らは一体、何者なんだ?
NES BAND

NES BAND

【NES BAND】 右から、1ch、2ch、3ch、4ch。右から2番目の2chを担当するのが、リーダーのマツケン先生。鍵盤・ノイズ機材はすべて真ん中のファミコンに繫がっている ◆本物志向のストイック集団  本物のファミコンの音にこだわりすぎたがために、ファミコン実機を楽器として演奏してしまったのが、NES BANDだ。ファミコンの音楽を、ひとり1音を担当して弾いているというのだが、一体どういうことか。リーダーのマツケン先生はこう語る。 「ファミコンの曲は、3和音と1ノイズで構成されているんです。それぞれ、1チャンネル、2チャンネル、3チャンネル、4チャンネルと呼ぶのですが(以下ch)、多くの曲では1chがメロディ、2chがハーモニー、3chがベース、4chがパーカッション(ノイズ)を担当しています」
NES BAND

1~3chまでは鍵盤で演奏するが、4chの担当者が使用しているのはpadKONTROLという機材。MIDI規格に対応した機械なら、電子ドラムや鍵盤ほか何を繫げてもOK

 つまり、ひとりがひとつのチャンネルを担当し、4人で合奏する形で、ファミコンの曲をそのまま再現しているということだ。ライブでは、上の写真のように、4人並んで演奏する。 「もっと専門的なことを言うと、3chから出るのは三角波、1chと2chはパルス波で、鍵盤の左についているホイールで音色が切り替えられます。その音色(Duty比)は12・5%、25%、50%、75%の4種類です」  しかし、ファミコン実機から出る音と、シンセサイザーからファミコンに似た音を出すのは、そんなに違うことなのだろうか。 「全然違いますね。どんなにシンセでファミコンっぽい音を作っても、実機の音には及ばない。本物の音であるからこそ、聴いてる人に懐かしさをより感じてもらえるところもあります。実機の音を使って、アレンジを加えず原曲に忠実に演奏することで、ファミコン曲がいかに工夫をこらされて作られているかを感じてもらうのが我々の目的です。ファミコンだって専用の機材に繫げば楽器になるんだから、もはやファミコンは電子楽器と言ってもいいはず。となると、6000万台以上売れているファミコンは世界一売れている電子楽器かもしれません(笑)。ちなみに、僕たちのライブでは、MCのマイクすらもコントローラーについているマイクを使います。世界で最も2コンマイクを有効活用していると思いますね(笑)」
NES BAND

鍵盤を弾くと、まずグレーの機械(MIDIパッチャー)に信号が入り、ファミコン、左の白い機械(ノイズゲートエフェクター)の順で伝わり、スピーカーから音が出るという仕組みになっている

機材撮影/田所英一郎 取材・文/朝井麻由美 ― 名作[レトロゲーム音楽]の魅力【2】 ―
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