【東電末端社員のいま】縁談破談に保険やローン解約…
原発事故への責任追及が東京電力社員に集中している。「事故の責任を取れ」というが、一社員にとってはどうしようもない。それでも脅迫やイジメは続く。そもそも、原発に関わってこなかった人がほとんどの職場。そんな現場の声をリポートした。
◆事故後、突然に縁談が破談
仕事先で知り合った、福島県内の女性と婚約予定だったCさん(20代後半)はこう語る。
「彼女の家族も『東電さんなら将来も安心』と好意的でした。それが事故で一変。急に彼女から『あなたのことが尊敬できなくなった』と言われたんです。どこが?と聞いても答えてくれない。以前は『働いている姿が好き』と言ってくれていたのに……。後で共通の知人に聞いたのですが、東電社員と結婚することに親族から相当反対されたみたいです」
合コンやお見合いパーティでも東電は不人気だという。
「お見合いパーティで何とかツーショットに持ち込んだのですが、東電社員だということを伝えると『将来性がない』『東電の人といると今後が大変そう』と言われました……。合コンではギリギリまで素性を隠しています。以前は東電というだけで向こうから連絡先を聞いてきたのに」(Dさん)
さらに東電社員を直撃している問題がある。給与カット(管理職25%、一般社員20%)と昇給・昇進の凍結、福利厚生の大幅カットだ。東電社員は、安定した待遇をもとに、何をするにもローンを組む傾向が強い。
「ほかの一流企業よりも給与水準は低いものの、年齢に応じて一律に昇給・昇進があり、福利厚生が充実しているという安定感がウチの会社の最大の魅力でした。もともとそういう安定志向の社員ばかり。今回の待遇激変は非常に痛いです。給与カットで今後は住宅ローンの支払いが厳しくなるので、財形を解約しました」(Eさん)
「住宅ローンはなかなか崩せませんから、クルマを売って安い中古車に買い替えたり、保険を解約したり、学資ローンを解約して子供の私立進学を諦めるなどという対応をしている家庭が多い。私は妻にパートに出てもらうことにしました」(Fさん)
― 東電「一般社員」の声に出さない悲鳴【1】 ―
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