元議員秘書が語る[陳情の舞台裏]
秘書時代、毎日のように陳情はありました。突然、事務所を訪れる人もいましたが、大抵は事前に連絡をしてくるので、まず内容を聞きます。困るのは「どこそこの役所の対応が悪い」なんて個人的な問題ですね。そう言われても何もしようがないし……。地方の方で「労災申請が認められず、何とかしてほしい」というものも。方々を当たったあげく、切羽詰まって連絡してきたのだろうと思うと門前払いもできず、会って話だけは聞いたこともありました。
やはり多かったのは、議員が取り組んでいる活動や政策に関する陳情です。議員に求めることが明確で、時間を取ってほしいと言われれば秘書が会うようにします。初めての人と議員が直接会う物理的な余裕はありませんからね。ただ、「こういう陳情があった」という報告はすべてしていました。
陳情する場合、一回で終わらせようとしないほうがいいと思います。陳情者サイドも何ができるかなどの話し合いを重ねることで、こちらのやるべき内容が見えてくるし、意思の疎通も図りやすくなる。そうして段階を踏んだ結果、議員も含めてアクションを起こしていくのが本来の陳情なんです。
そもそも陳情という語は「何かをしてもらうようお願いする」って意味。だから、たとえば反対したい条例なり法案なりを推し進めている議員に陳情してもムダですよ。その場合は「これだけの問題があるから反対します」との意思表明をするべき。陳情するなら、反対に向けて動いてくれそうな党や会派でないと。誰に陳情すれば効果的かということを、まず考えることが大切だと思いますね。
【石本伸晃氏】
’65年生まれ。ドイツ銀行などを経て司法試験に合格。司法修習終了後、川田悦子議員の政策担当秘書に。現在は弁護士として活躍中。著書『政策秘書という仕事』
― 「陳情したらこうなった!」(驚)報告【10】 ―
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