続・年内85円「まさかの円安シナリオ」の現実性
―[「まさかの円安シナリオ」の実現性]―
私は前々回のコラム(https://nikkan-spa.jp/310028)で、年内85円「まさかの円安シナリオ」の現実性について書きましたが、その後じわじわとドル高・円安が進み始めました。私は、そのコラムの中で、「79円を越えたら別世界」と書きましたが、さて、今週はその79円を越えるドル高・円安の動きも出てきました。では「別世界」に入ったのでしょうか。
◆「別世界」のドル高・円安が始まったのか?
なぜ79円が「別世界」との境界線なのかということについて、私は、それが相場のリード役であるヘッジファンドなどが売買戦略で重視する「120日移動平均線」が足元で位置している水準だからと説明しました。
<資料1>は、今年に入ってからのドル円と120日線との関係を見たものです。ドルが120日線を上抜けたのは、2月上旬と6月下旬の主に2回ありました。このうち前者は、ドル一段高に向かうところとなりました。
※<資料1>はコチラ⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=313675
まさに、120日線を越えたら、ドル/円は「別世界」に入ったわけです。一方で、6月下旬の場合は、120日線のドル上抜けも一時的に終わりました。さて、今年3度目の120日線のドル上抜けとなった今週の動きは、2月のような「別世界」入りが始まったのでしょうか、それとも違うのでしょうか。
<資料2>は、ドル/円と日米金利のグラフを重ねたものです。このように、ドルと米金利は基本的に似た動きをするので、2月にドルが120日線を越えて「別世界」のドル高・円安局面に入ったのは、米金利が大幅に上昇し、日米金利差も大幅に拡大したからであり、一方で6月下旬に、「別世界」入りが未遂に終わったのは米金利が上げ渋ったからです。
※<資料2>はコチラ⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=313676
では、2月と6月で、米金利上昇に大きな差が出ることになったのはなぜでしょうか。<資料3>は、欧州の信用リスクを示す指標の一つ、欧州CDS指数ですが、これを見ると、2-3月は欧州の信用が急ピッチで回復に向かっていたのに対し、6月下旬は信用回復が進まなかったことがわかります。つまり、2月と6月で米金利を取り巻く大きな違いに、欧州情勢があったわけです。
※<資料3>はコチラ⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=313677
◆2-3月「まさかの円安」との類似
今年も欧州債務危機は、世界の金融市場においてリスク回避の「元凶」の扱いとなってきました。その欧州危機が改善に向かった2月、米金利は大幅上昇となり、欧州への懸念が続いた6月は米金利も上げ渋ったというわけです。
では、最近、そんな欧州への信用リスクは、2月と6月のどちらに近いでしょうか。<資料3>を見る限り、欧州への信用は、今年の最高水準まで回復してきたようですから、その意味では2月に近いのではないでしょうか。
さて、私は、ドル/円がドル高・円安の「別世界」に入った2-3月と、「別世界」入りが未遂に終わった6月下旬と、最近はどちらに近いかを考察してきました。これまで見てきたことからすると、2-3月に近そうです。
そんな2月は76円程度でドル円の取引が始まったのに、約1か月半で84円までドル高・円安が広がるところとなりました。「まさかの円安」が起こったわけですが、さて今度はどうでしょうか?(了)
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など
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