雑学

八代亜紀「人生で初めて生放送中に歌えなくなりました」

― 有名人が告白 震災で変わった「私の生き方」 【3】 ―

阪神大震災、オウム事件、9・11――。これらの出来事と今回の東日本大震災の一番の違いは“当事者感覚”の有無だろう。東京から明かりが消え、余震が続いたなか、人々は原発の情報収集に奔走したからだ。そんな状況を経て、各界著名人の価値観はどう変わったのか?

◆日本人の優しさを感じて
人生で初めて生放送中に歌えなくなりました


八代亜紀

熊本県八代市出身。代表曲に「なみだ恋」「舟唄」「雨の慕情」など。フランス「ル・サロン展」5年連続入選など画家としても活躍

八代亜紀
やしろ・あき(演歌歌手)

 熊本で行われるイベントへの移動中に地震がありました。飛行機は無事に飛び立ったので詳しくはわからなかったのですが、ホテルに着いてテレビを観たときは、こんな大惨事になっているんだってビックリしました。震災直前に大船渡市、仙台市でコンサートを開催したばかりだったので余計に他人事じゃないなと。特に大きな被害を受けた東北の港町には、古くから「亜紀ちゃん」って応援してくださるファンも多く、亡くなられた人たちのことや、残された遺族の方の心痛を考えると、言葉が出ませんでした。

 でも人の心を癒やしたり、皆さんの心の中を映し出して歌うのが私の宿命だと思い直したんです。

 震災後の3月20日、再開1回目の『NHKのど自慢』に出演させていただきました。会場のいたるところから「東日本頑張れ」ってたすき掛けや横断幕が目に飛び込んできたんです。その光景を見て、人生で初めて、生放送中に歌えなくなりました。一時的な無呼吸症候群になったようですが、落ち込んだわけではなく、「ああ、やっぱり日本人は凄いな」って誇りに思えて、逆に私が励まされたんです。

 その後、幾つかのコンサートは延期や中止になったんですけど、少しずつ開催できる状態になって。どこの会場でも、一つになって応援しなきゃっていうお客さんの思いがジンジン、しくしく伝わってくるんです。義援金を募っても皆さん協力的でした。

 私もスケジュールの都合がついたら、被災地を慰問して炊き出しをしたいと考えています。直接言葉をかけて励ますことで、少しでも癒やせたらなって思います。

 今回の大震災で感じたのは、本当に日本人は優しい心を持っているってことです。知らない者同士でも助け合っている姿は、古き良き時代の昭和に戻ったようで感動的でした。復興には時間がかかりますけど、皆で支え合っていけば大きな力が生まれるはずです。




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