男の娘映画が世界進出! 女装カルチャーのプロは苦言!?
―[オトコの娘サミット]―
性的指向に関係なく、趣味として女装を楽しむ「男の娘(おとこのこ)」と呼ばれる男性が増えている。近年では、専門誌をはじめ「男の娘」写真集が出版される(https://nikkan-spa.jp/104794)など、広く注目を集めているのだが、このたびなんと「男の娘」をテーマにした映画が公開されることになった。
12月1日に公開される映画『僕の中のオトコの娘』である。ひきこもりの青年が、女装を通して社会に歩み出ていく様子を描いた作品で、モントリオール世界映画祭「フォーカス・オン・ワールド・シネマ部門」にも正式出品されたという。
11月20日に同作品の公開を記念して開かれたイベント「オトコの娘サミット2012」では、女装カルチャーの“プロ”たちが作品について、そして女装カルチャーの今について語った。
女装イベント「プロパカンダ」主宰のモカ氏は、「男の娘やドラァッグクイーンさんなどの女装カルチャーは、おねえタレントの影響なのか『みんなゲイだ』って一緒くたにされがち。同作は、最近のリアルな女装文化や棲み分けをわかりやすく伝えてくれたと思います。2丁目界隈の姿もリアルに再現されていた」と、映画での女装文化の正確な描かれ方について高く評価。
性社会・文化史研究家の三橋順子氏は、「女装をする人が出てくる映画は昔からありましたが、だいたい被害者役。真っ先に殺されたり、犯人だったり取り上げられ方がろくなものじゃかった。同作はちょっと理想化されている気もしたけれど、女装を『新しい生き方のひとつ』としてポジティブに扱ってくれたのがよかったですね。こんな時代がくるなんて、感慨深いです」と、作品における女装者の描かれ方の変化について解説した。
一方、同じ女装でも、ゲイ文化から発祥し「男性が求める女性の性を過剰に演出すること」に目的に重きを置くドラァグクイーンの目には、同作はどのように映ったのだろうか。ドラァグクイーンのマーガレット氏は、「そろそろキツいこといっておかないとね」と前置きした上で、「作中にゲイキャラクターが出てくるのだけど、ゲイ界隈の人から言わせれば『あれは違うよなあ』というシーンがあった。つまり、この映画は、ゲイのなかの女装の話ではなく、あくまで女装のなかの女装の話だなと感じたんです。ウエルメイドな青春映画ではあったけど」と、やや苦言を呈した。
マーガレット氏が感じた同作の違和感は、ゲイカルチャーとは一線を画す昨今の「男の娘」文化との違いに端を発しているようだ。
「(性的指向に左右されない)男の娘は、女装してもあくまで『男の娘』を目指しているのであって、女を目指している感じがしない。私が参加するイベントにくる男の娘を見ていても、がにまたで歩いているコをよく見かける。女をやるんならちゃんとやろうよ、っていうヌルさも感じるの」(マーガレット氏)
「それは『男の娘』という言葉にも現れていますよね。(女装をしていても)あくまで男なの」(三橋氏)
そんな女装カルチャーの専門家による評を受けた窪田監督。「定義すらあいまいなのが、『男の娘』のなんともおもしろいところだ」と笑ってみせた。ちなみに、窪田監督が映画を製作したキッカケは、7年前に訪れた女装バー。当時は女装文化に対する社会の認知度が低かったが、近年のおねえタレントの活躍などを追い風に制作に踏み切ったという。
映画のみどころについて、監督は「タイトルの『僕』、つまり主人公は僕自身なんです」と強調。さらに、「この映画は、マイノリティーに対する応援歌です。僕らがいる映画界も、女装子も、周りから何かを言われる狭い文化。でも『僕はこれがやりたい』と思って撮りました。映画を観た方に、その一歩踏み出す勇気を感じ取ってもらえればと思います」と熱く語った。
⇒【画像集】イベント後半では、「オトコの娘総選挙」が開催 https://nikkan-spa.jp/337881 <取材・文・撮影/小野田弥恵>
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