野茂や松井への影響は?MLB殿堂入りに「該当者ナシ」の深い事情
読売ジャイアンツの阿部慎之助捕手によると、対戦して最も驚かされた打者はバリー・ボンズだという。「ボールがキャッチャーミットに収まると思った瞬間、遥か彼方にボールが飛んでいった」と、究極の引きつけ、スイングスピード、その技術を称える。
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そのボンズら37名の候補選手が名を連ねた新春の風物詩、野球殿堂入りの記者投票選出が、先週行われた。今年はドーピング疑惑の渦中の選手がズラリ。選者である勤続10年以上のMLBベテランライターたちからは、史上3番目に多い569票が寄せられた。75%(427票)以上を獲得すれば殿堂入りの栄誉となるはずだったが、残念なことに今年は、’96年以来となる「該当者なし」という結果に終わった。
影を落としたのは薬物の使用疑惑だ――。
しかし、問題が指摘されるようになった当時は、規制や検査方法などが確立していなかったうえ、果てしなく“クロ”に近い疑惑の選手らも、使用の事実は公的には証明されていない。とはいえ “殿堂入り”は名誉の勲章。
有権者である野球記者たちが、そうした彼らに栄誉を与えることはなかった。
今回は、MLB史上最高とも称されるスラッガーとピッチャーが落選。バリー・ボンズとロジャー・クレメンスだ。20年以上コミッショナーの座にあるバド・セリグ氏は、「必ずしも毎年、誰かが選出されなければいけないことはない。投票方法を変える必要はない」と語ったが、反対意見もある。
実は、投票を棄権をした記者もいた。理由のひとつは「一票が重い」というもの。薬物使用という過ちを犯したかもしれないと言って、切り捨てるのはどうかというのだ。
別の記者は、「殿堂入りは博物館。であれば、”そうした背景”も含めて展示する方法もある。葬り去るのはおかしい」と異を唱える。
事実、これまで殿堂入りした選手がすべて清廉潔白なわけでもない。プレイボーイとして名を馳せたミッキー・マントル、ウィリー・メイズ、ハンク・アーロンらは、現役時代にアンフェタミン(覚せい剤の一種)の使用を認めている。近年の研究ではアンフェタミンの運動能力向上は証明されている。
また、フェアプレー精神に欠けるというのなら、白いボールに白い歯磨き粉をつけ、変化球のキレを増したゲイロード・ペリーはどうなのだ。
前述の記者は、「殿堂入りに値するかどうかの明確なガイドラインが必要。これは今後も議論していくべきだ」と訴える。となれば、来年ついに候補者の資格を得る野茂英雄や、’18年には候補者となる松井秀喜にも影響するだろう。
セリグ氏は先日、薬物使用の検査については大幅に変更する、と規制を強化する姿勢を明らかにしたが、後を絶たない薬物使用。
アメリカン・ドリームとのイタチゴッコはまだまだ続く……。
<取材・文/スポーツカルチャー研究所>
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