【WBC】アメリカは今度こそ優勝したい!? 魔球の使い手も選出
今度こそアメリカは本気なのか? そして迎え撃つ侍たちは……?
オフシーズンの間、侍ジャパンを担う巨人軍のスター選手らは、揃ってバラエティ番組に出演。楽しげにゲームに興じていた。主将に任命された阿部も、投手の柱となる内海も、ニコニコ顔で坂本や澤村ら後輩をどやしつけていた。
昔と比べて、随分と上下関係が穏やかなのが見てとれる。決してたるんでいるのではない。オンとオフの切り替えがうまいのだ。WBCのための特別合宿では、ベテランがぐいぐいと若手を牽引するようにトレーニングに励んだという。
この「先輩後輩」を基礎としたチーム力が、侍ジャパンの強さの秘訣だ。今回は“純国産”でメジャーリーガー不在が弱点視されているが、野球はチームプレー。メンバーで唯一メジャーを知る松井稼頭央も「何でもやる」と、献身的な姿勢を前面に出している。日本の若武者が大舞台で勢いを発揮できるムードも高まるばかりだ。
一方で、過去2度の大会で「惨敗した」アメリカが、これまでにない豪華布陣であることは間違いない。監督は名門ヤンキースを4度ワールド・シリーズの頂点に導いた名将ジョー・トーリ。脇を固めるコーチ陣も華々しいキャリアを持つ元名選手なら、戦う選手たちは目を見張るスターが揃った。
◆昨季20勝、230奪三振の超高速ナックルボーラー・ディッキー
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海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!では3月に始まるWBCや、MLBの速報記事を中心に担当
特に“魔球使い”のディッキーは要注意だ。昨季メジャーで20勝を挙げ、サイ・ヤング賞に輝いたナックル・ボーラーのディッキーが投じるのは、今まで見たような低速のナックルではない。前人未到の130km/hを超えて揺れるという「リアル魔球」だ。昨季はこれを武器にナ・リーグトップの230奪三振を記録した。
これを侍ジャパンの打撃陣がバットに当てるのは容易ではないだろう。
しかしチームUSAは、昨季、ディッキーの専属捕手を務めたジョシュ・トーリを召集しなかった。正捕手候補は’09年の女房役で、首位打者三度のマウワーが濃厚だが、最近は1塁手での出場が多く、ブランクへの不安がある。バックアップ捕手もナックル対策の練習を始めたらしいが、ディッキーのナックルは名捕手でも安定して捕球できるものではない。
中日の岩田が投げるフォークを、名捕手の谷繁だってポロポロこぼすのだ。マウアーといえども、久しぶりのディッキーとのコンビ。本番でファンブルする可能性は大いにある。そうなれば機動力に富む侍ジャパンには進塁のチャンスだ。
暫定ロースターには入っていないものの、最速164km/hの剛速球を投げるバーランダーも召集の可能性が高いという。とはいえ昨季のオールスター・ゲームで先発し、散々にメッタ打ちされた記憶は新しい。
アメリカではシーズン開幕の“お祭り的要素”も併せ持つWBC。他にも、かつて阪神やオリックスで活躍、昨季はワールド・シリーズ優勝の立役者となったボーグルソンなど、日本人にとって楽しみな顔ぶれも揃う。
しかし、そんなチームUSAの「結束力」が、侍ジャパンの「先輩後輩力」を上回るとは考えにくい。過去最強と喧伝されるアメリカが立ちはだかろうとも、侍ジャパンは持ち前の機動力とチーム力で切り抜けてくれるだろう。
その前にキューバと韓国という「本当の強敵」に勝たねばならないが……。
<取材・文/スポーツカルチャー研究所>
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