スキャンダル辞任の徳田毅議員に基地移転問題の影
「慰謝料1000万円の未成年女性泥酔姦淫」――こう題して『週刊新潮』にスキャンダルが報じられ、国交・復興政務官を辞任に追い込まれた徳田毅衆院議員。医療法人徳洲会理事長・徳田虎雄元衆院議員の息子というサラブレッドのスキャンダルは、以前から一部に知られていたようで、『週刊文春』は徳洲会の内輪もめに起因している可能性を指摘している。となれば、気になるのは安倍政権の“身体検査”。なぜ、スキャンダルを抱えた人物を政務官に抜擢したのか? 与党関係者が話す。
「徳田さんに関しては、女性から損害賠償請求を起こされ、訴状が残っているだけに、“身体検査”の段階で問題視する声もあったはずです。でも、スルーされた。その背景にあったのは、日米首脳会談と言われています。当初、1月の訪米を希望していた安倍さんは、米海軍の空母艦載機の発着訓練(FCLP)の移転先候補として名前の挙がっていた馬毛島(鹿児島県西之表市)を、訪米の際の“手土産”にしょうと考えていたようです。ところが西之表市ほか周辺住民の反対は根強い。そこで、鹿児島選出の徳田氏にその話の取りまとめを任せるために、リスクを承知で政務官に抜擢したのではと言われています」
父親の虎雄氏は現職時代、普天間基地移設問題で移転候補先に上がった鹿児島県徳之島市を選挙区とし、現在も地元に大きな影響力を持つ人物。’10年には米海軍のヘリコプター部隊の移転実現に向けて、鳩山由紀夫首相が虎雄氏に協力を要請したのは記憶に新しいはずだ。そのため、息子を政務官に引き込むことで虎雄氏を味方につけ、普天間基地移設問題の進展を図ろうとしたのでは?という指摘も。
ただし、馬毛島に関しては難問だらけ……。たびたびFCLPの移転先候補として名前が浮上し、防衛省が視察を繰り返しながらも、一向に進展は見られない。地方紙記者が話す。
「馬毛島の土地の99%を保有するタストン・エアポートの立石勲会長は、早くからFCLP誘致に積極的で、私費数億円を投資して滑走路を建設してきたんです。なにしろ、馬毛島は8.2km2で、無人島としては国内2番目の大きさ。移転先としては申し分ありません。ただ、その投資分に見合うレンタル料を要求する立石氏と防衛省との間で、金銭的な折り合いがつかなかった。おまけに近隣住民の反発は根強い。ついには、地元漁師らが、無許可開発で森林法に違反しているとタストン社を告発して、工事は中断。’10年11月には立石氏が『防衛省との交渉を打ち切って、中国に売り飛ばす』と言い出したことが報じられたこともあって、徐々にFCLP移転交渉は後退していったのです」
安倍政権誕生によって交渉の進展が期待されたが……徳田氏のスキャンダルが浮上し、さらに逆風が吹いた。
「2月3日に行われた西之表市の市長選で、基地移設反対派の現職・長野力氏が、移転に柔軟な姿勢を示していた新人の前市議を大差で打ち破りました。この結果を見て、安倍さんも馬毛島を手土産にするのはほぼ諦めたと言われています。それと同じタイミングで、徳田氏の醜聞が出たら、もうかばう意味もない(苦笑)。政務官クラスなら認証官でもないし、首相の任命責任は重くない。政権に勢いのあるうちに、小さな膿を出せて、安倍さんはむしろホッとしてるのではないか」(与党関係者)
前出地方紙記者によれば「そもそも徳田氏は鹿児島選出議員だが、立石氏とも、防衛省ともパイプがなく、馬毛島へのFCLP移転を実現できるような人物ではなかったという声もある」という。今回の徳田氏のスキャンダルは、馬毛島移転案が絶望的になって用済みになったところで、“予想通り”浮上したものにすぎないのかもしれない。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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