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日本人学生が現地で見た「リトアニアの原発国民投票」

リトアニアの原発反対を促すポスター。「国民投票と(同日に行われた)国政選挙の時期なのでもっと盛り上がってるかと思いきや、現地はいたって平静。原発に関するポスターもほどんど見られなかった」(どっきょさん)

 昨年10月に行われた、リトアニアの新規原発建設の是非を問う国民投票。その結果は反対が62%を占め、賛成の34%を大きく上回ることになった。リトアニアに建設予定の「ビサギナス原発」は、日本の日立製作所とアメリカのGE社が事実上受注している。そういった経緯もあり日本でも注目を集めることになった投票の結果だが、「反対派が多数を占めたのは個人的には少し意外でした」と話すのは、その模様を現地で見ていた日本人学生のどっきょさん(ハンドルネーム)だ。彼は「日本でも原発国民投票を実施しよう」という運動を進める市民グループの一員として、リトアニアの国民投票を現地視察していた。

「僕は『みんなで決めよう原発国民投票』というグループの調査団の一員として、リトアニアで数百人の方にアンケートをとってきました。アンケート内容は『国民投票をすることに賛成か?』など、直接原発の是非を聞くものではなかったのですが、その際に聞いた声だと、推進派の人のほうが多かったんです。もちろん、僕が話したのはごく限られた人だし、しかも主に同世代の若者に話を聞いていたので多少の偏りはあると思います。ただ、彼らがよく話していたのは『原発は危険な物だ』という前置きの後に、『それでも、こういった理由で必要だと思う』ということでした」

 その理由とは主に、「雇用」と「電気料金」の問題だったという。

クラブでインタビューをしたバンドマンとどっきょさん(中)

「リトアニアはチェルノブイリ原発事故の現場からも近いので、『原発は危険』という意識が根底に根付いていると感じました。けれど、現実問題としてある失業率の上昇の打開策にもなるし、あと、現在の高い電気料金が下がるだろう(リトアニアは大部分のエネルギーをロシアなど他国に依存しているため電気料金が著しく高い)、という考えもあるようでした。それらの要素を踏まえ、『原発に賛成だ』と話す人が多かった。僕は主に首都のヴィリニュスに滞在して、メイン通りを通る通行人の方や、夜にはバーやクラブでも話を聞いてまわりましたが、クラブで演奏していたバンドマンも大真面目に語ってくれて、その姿に意識の高さを感じました。ほかにも喫煙所にいたら『ヘイ、ヒタチ!』と男性に声をかけられて、『日立っていつ知ったの?』と聞くと、『原発をきっかけに知ったんだよ』と。彼は『ヒタチの技術はすごいからキミたちのことを待ってるんだ』なんて言ってました。飲み屋のような場所で話したので、ちゃかされただけかもしれませんけど(笑)。あとは、『日本は地震とか天災が多いからダメだけど、リトアニアは津波や地震が(ほぼ)ないから大丈夫』という声もありましたね」

 そうした意見を聞いた後に発表された投票結果を受けて、どっきょさんにも心境の変化があったという。

リトアニアはこれまで11回の国民投票を実施。ただし、結果に法的拘束力はない

「僕は震災以来、ずっと反原発の立場で行動をしてきました。だから、たぶん日本で単にリトアニアの投票結果だけを見たら『やった、リトアニアも反対だ』と感じるだけだったと思うんです。けど、今回いろんな人の意見を聞いて、『あぁ、そうなったんだな。じゃあ仕事がないと言っていた彼らはこれからどうなるんだろう』と。原発がなくなったからOKじゃなくて、その後のことも考えないといけないんですよね。僕は国民投票っていうツールがあればなんとかなると思っていたけれど、そうじゃなくて、それをどう使い、単なる言い合いの場じゃなくて建設的な意見を言える場をどう作るのか……。あと、印象的だったのは原発に賛成すると言っていたリトアニアの男性が、結果を受けて『そう決まったんだから従わないとね』と話していたこと。もし自分の意見と違う結果が出たときにどう受け止めるのかを、もっと考えないといけないと思いました」

 投票結果だけでなく、そのプロセスも含め、リトアニアの姿から我々日本人が学べるものは多いだろう。 <取材・文/日刊SPA!取材班>




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