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会議では“笑いを盛り込む”意識が大事

石黒謙吾氏

石黒謙吾氏

 著述家で編集者の石黒謙吾氏による新著『7つの動詞で自分を動かす』(実業之日本社)が注目されている。「愚直に動くこと それは誰だってできる簡単な問題解決法」と謳う同書では、「ぶつける」「分ける」「開ける」「転ぶ」「結ぶ」「離す」「笑う」という7つの動詞を提示。それらを入り口に、「<名詞で受動的に考える>から、<動詞で能動的に考える>」ことの重要性が解説されている。  著者の石黒氏に聞く「サラリーマンの日常を“7つの動詞”で見直すと……?」というテーマの7つ目は「笑う」。タフな仕事人として名高い石黒氏の熱いメッセージを見逃すな! ◆その7「笑う」 ――最後に「笑う」です。これはポジティブなので、わかりやすいですね。 石黒:ええ。にこやかにしていると、単純に場が楽しくなるし、人も寄ってきますよね。でも、ファーストフードの窓口的、マルチ商法の説明的な、無理な作り笑いをするような人はかなり苦手ですが(笑)。 ――ただ笑顔を作ればいいってもんじゃない、と。 石黒:無理やり笑っているのって、わかるじゃないですか。「あ、作り笑いだな」と察知したときの信用できない感じってありますよね(笑)。営業マンでも、ドアを開けた瞬間にもう笑っているような人っていますが、実に気持ち悪い。それなら、緊張気味の表情のほうがはるかに信頼できる。 ――では、どうすればいいんでしょうか? 石黒:作り笑いは論外として、まずは自分が楽しもうとすることでしょう。それから、相手が喜んでくれるのって、楽しいことですよね。その結果として、笑顔になれるのがいい。青臭いようですが、内側から湧き出る笑いを大事にしたい。これは自分が楽しいと思わないと出ないでしょう。  あと、別に自分自身が笑うことありきでなくてもいいんです、バカなことをやったり、くだらないことを言ったりして、周囲の人を笑顔にする。それを見ていれば、自分も自然と笑顔になるはずだし。  もうひとつ付け加えるなら、愚痴をクチにしたときほど、最後は笑ってシメることを意識したい。仕事終わりで飲みに行って、愚痴ばかりになることってありますよね。時にはそうやって吐き出すことも大事なんだけど、せめて最後はオチを付けて笑って終わりたい。そうすれば、楽しい飲み会の記憶として残るじゃないですか。こういう、ささいだけど真髄をつく心がけって大事だと思います。 ――しかめっ面をして仕事をしても、あまりいいことがない、と。 イメージ石黒:ですね。仏頂面ばかりの会議なんて出席するのもイヤになりませんか? 人間、機械じゃないですから。事務的な会議とか、ぶっちゃけ楽しくないでしょう?  もちろん僕も、会議そのものは好きじゃないですよ。でも、せっかくみんなで時間を繰り合わせて場を設けるのだから、笑う時間を半分くらい作りたいとは思いますね。こう言うとふざけているように感じる人もいるかもしれませんが、会議の目的を阻害することなく、気持ちのいい笑いを盛り込むのってなかなか高度なセンスです。構成力とかプレゼン能力、言葉選びのセンスが求められるから、かなり知的な取り組みといえます。クリエイティブセクションとか営業セクションあたりの部門はとくに、会議における笑いをしっかり意識してみるといい。 ●おわりに…… 石黒:最後にお話しした「笑う」にも通じるのですが、最近、笑われることを恐れ、パッと見ばかり取り繕って、小ぎれいに仕事をこなそうとする人が多くなっているように感じるんです。そのくせ、マインドそのものはヘタを打ちたくないのか、待ちの姿勢……受動に終始してしまっている、みたいな人がやたらと目に付く。  能動的であろうとすることは、時としてカッコ悪いこともあります。ミスもするし、至らない自分を開示しなければならないこともある。バカにされたりすることもあるでしょう。  何だか、「バカ」と思われることを過剰に恐れている人が多いように感じるんですよね。それで、自分を「盛る」ことばかり考えているような。  笑われたっていいじゃないですか。バカだと思われることを恐れて、自分を「盛る」なんて、どんだけ臆病なんだよ、と。自分のバカさを自覚すれば、自然に謙虚になれるし、真剣になれるから、最終的に成長できる。  周囲からちょっとバカにされているくらいがちょうどいいし、カッコいいと思うんですよね。バカだと思われている人間が、ちょっと気の利いたことをしたら、それだけで周囲は「おぉっ」と感心してくれる。最後方から一気に差しきるカッコよさってありますよね(笑)。常に下からいこうと!  たとえば、僕はSNSで「こんな本を読んだ」みたいな話題を持ち出して、解説するようなことはほとんどしません。なんか、カッコ悪い気がして。もっといえば、いつもくだらないダジャレを言っている、ふざけた人と思われているのが好きだから。あ、誤解してほしくないのですが、実はダジャレって高度に知的な営みなんですけどね。疑ったあなた、「ダイヤモンドオンライン」で僕が連載している<「科学するダジャレ」~地アタマが良くなる知的メソッド>をぜひ読んでください(笑)。  だいたい僕は、何につけても人と同じってのが嫌いなんですよ。大ヒット中の映画はそのときは観たくないし、ベストセラーも読みたくなくなるようなところがある。他の人にも同様の姿勢を求める気はまったくありませんよ。ただ、みんなで同じようなことをやって、同じようなことに注目して、同じようなことを言ったら、人間がどんどん平準化していくでしょ。それはみんなが面白くないだろうなあと思うわけです。まわりを意識しすぎて、人間がだんだん平均化、平準化していっていると肌身感覚でわかるので、そこは憂いていますよ。だから、こういう熱いメッセージの本を出したくなったのです。  他者の目線を意識すればするほど、つらくなります。なぜなら、他者の目線なんて、折々でどんどん変わっていくものだから。結局、自分もそれに合わせていくことに終始することになる。それで、自分を盛っていくことを重ねるような人生にハマまってしまう。そういう生き方、幸せなんでしょうか。  受動から能動へ、という意識転換を僕がすすめる理由は、そういう他者目線に縛られた生き方を見直してほしいからでもあるんです。自分の足でしっかりと立って、自分で自分に責任を持ったうえで、いかに楽しく暮らしていくか。そのヒントを7つの動詞に散りばめたつもりです。“論理的な松岡修造”からの(笑)メッセージをどうぞ。 【石黒謙吾氏】 編集者・著述家・分類王。1961年、石川県金沢市生まれ。講談社『PENTHOUSE』、『Hot Dog PRESS』の雑誌記者・編集者を経て、32歳で完全フリーに。以来、書籍の編集やプロデュースに注力し、これまでに200冊以上を手がける。著書は87万部で映画化もされた『盲導犬クイールの一生』はじめ、『2択思考』『図解でユカイ』『ダジャレ ヌーヴォー』など多数。プロデューサー・編集者としても、歴史・社会ネタからサブカルまで、硬軟織り交ぜたさまざまな本作りを展開する。全国キャンディーズ連盟(全キャン連)代表。日本ビアジャーナリスト協会副会長。草野球歴34年、年間40試合という現役プレーヤーでもある。 <取材・文/漆原直行> ― 7つの動詞でサラリーマンは変われる!【7】 ―
7つの動詞で自分を動かす - 言い訳しない人生の思考法

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