「黒田緩和=円安」が幻だった可能性はないか!?
<資料1>のように、ここ数年のドル/円は日米の中央銀行の資金供給量の差、つまりベースマネー、別にマネタリーベースとも呼びますが、その比率で説明できるように見えます。「黒田緩和」とは、そのベースマネーを2年で倍にするというもの。それを単純計算すると、円安は2013年末には110円に、2014年末には130円になる見通しになるわけです。
※<資料1>はコチラ⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=433496
ただ、本当に中央銀行の資金供給、つまりベースマネーで為替が決まるのでしょうか。<資料2>のように、ドル/円と日米ベースマネー比率の関係をより遡って見ると、最近にかけての両者の相関関係では、2006年以前についてはまったく説明できなくなってしまうのです。なぜこんなふうに、ベースマネーと為替の関係は、説明できる局面とできない局面があるのでしょうか。
※<資料2>はコチラ⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=433505
<資料3>は、<資料2>と同じ期間について、ドル/円と日米2年債利回り差のグラフを重ねたもの。これを見ると、ベースマネーで説明が困難だった2006年以前についても、金利差ではある程度説明できそうです。
※<資料3>はコチラ⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=433506
以上3つの資料から考えられるのは、ベースマネーで為替が決まるというより、ベースマネーと金利差が似たような動きになっているときには、両者はともに為替の説明が可能になっているに過ぎない可能性があるのではないでしょうか。
そういった見方に立てば、<資料3>のように金利差で説明できない最近のドル高・円安は、たとえそれが「黒田緩和」が示唆しているものでも、その通りになるかは微妙でしょう。最近の動きは、「異次元の黒田緩和」という熱狂が少しずつ落ち着く中で、改めて「黒田緩和の円安効果」を試す動きと見ることもできなくないでしょう。(了)
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など
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4月4日の「黒田緩和」後に一気に進んだ円安が、じわじわ円高に戻してきました。それでは、「異次元の黒田緩和」を行っている中では、円高への戻りにも限界があるのでしょうか。
◆為替を決めるのは本当に中央銀行なのか
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