“ぶつからないバス”なのに実はぶつかる!?
関越自動車道・藤岡JCT付近で発生した大型バスによる死亡事故から1年がたった。事故の原因は運転手の居眠りだったが、今回はこの事故をきっかけに、新型車は2014年11月1日から、継続生産車は2017年9月1日から義務化された大型バスの衝突被害軽減ブレーキをテストしてみました
西村直人=文 Text by Nishimura Naoto
池之平昌信=撮影 Photographs by Ikenohira Masanobu
◆乗用車とバス。ぶつからないクルマの違いを比較してみた!【後編】
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最初に乗用車「SL550」をテスト。センサーが障害物を検知して危険な状態になると、「ピーピーピー」と警報音で注意喚起する。そのまま直進すると、ぶつかる約1.6秒前に急ブレーキの約40%の力でブレーキが作動する。それも無視して突っ込むと、ぶつかる約0.6秒前に100%の力で急ブレーキ! このときの車速が時速30km以下ならぶつかる前に止まり、それ以上だと、ぶつかるが被害は軽減される。
続いて大型バス「エアロエース」。乗用車とほぼ同じタイミングで警報音が鳴るものの、約1.6秒前のブレーキ力は極めて緩く、衝突から約0.6秒前の急ブレーキもやっぱり緩い。時速30km以下ならぶつからない「SL550」に対して、「エアロエース」は時速30km以下でも、最終的には時速10km程度でぶつかる。そう、大型バスだとぶつかってしまうのだ……。
「ボディが重いから止まらない」というわけではなく、実はこれ、そういう国の指針なのだ。
乗用車の“ぶつからないクルマ”のTVCMを注意深く見ればわかると思うが、急ブレーキの瞬間、ドライバーの体はものすごい勢いで前のめりになる。例えば、これが大型バスの車内で起きたとしたら、座席を移動しようと車内を歩いている乗客は確実に前方へぶっ飛び、最悪フロントガラスを突き破り車外放出なんてことも。大型バスでは、緩いブレーキから強いブレーキへと滑らかに制動力を増幅させることで、乗客の安全確保に配慮している。そのため、あえて急ブレーキをかけず、ぶつかるようにしているわけだ。
昨年4月29日、関越自動車道・藤岡JCT付近で発生した大型バスによる乗客7名の死亡事故は、今年1月27日に法律として施行された「バスに対する衝突被害軽減ブレーキの義務付け」を早めた一因となった。あれから1年、改めてご冥福をお祈りいたします。
【結論】
スバル「アイサイト」の最新版は、登場から3年弱で装着車の累計が10万台を超えたとか。昨年12月には簡易型ではあるものの軽自動車のダイハツ 「ムーヴ」にも装着できるように。この流れは止まらないだろう
写真/時事通信社
― 乗用車とバス。ぶつからないクルマの違いを比較してみた!【2】 ―
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