スマホ時代の浮気攻防戦
浮気を隠したい男と、浮気を発見したい女。その攻防の主舞台は「ケータイ」であったが、ここ2年ほどでスマートフォン(以下スマホ)が普及してから、従来とは異なる戦模様が展開されているようだ。その様子をレポートする。
かつて「浮気携帯」として勇名を馳せた端末があった。ドコモの富士通端末(Fシリーズ)である。着信履歴やメールボックスにパスワードをかけるような平凡な浮気対策では、むしろ「ここに見せたくないものがありますよ」とパートナーに教えているようなもの。その点F端末では、ヤバイ相手から着信やメールがあったことを、履歴ではなく電池アイコンの変化で知らせるなどの小細工を駆使し、「隠していること自体を隠せる」のがウリであった。あまりにも有名になったため「F端末を持っているだけで浮気予備軍」と警戒する女性が登場したほどである。
こうした細やかな機能は、いわゆる「ガラケー」ならではのものであり、今どきのスマホでは、ここまでのいたれりつくせり感は望めない。かくして、スマホに乗り換えてしまった男性たちは「自分仕様の浮気携帯」の構築を余儀なくされている。
「ガラケーのシークレットモードの流れを汲む機能は、一部のスマホ端末には受け継がれています。僕の持っているISO3(au)でも、特定のメールフォルダを非表示にしたり、受信履歴を非表示にできたりしますしね。ただ、メーカーによって機能にはバラつきがあり、かつてのF端末のような“決定打”もない。富士通が浮気隠し機能を充実させたモデルを出すまでスマホには乗り換えない……なんて言ってるユーザーもいるほど(笑)」と語るのは、ITライターのA氏。
「ですが、スマホの強みはアプリによってさまざまな機能を追加できること。浮気隠しに使えるアプリも結構あるんですよ。僕も、仕事柄、友人たちに尋ねられることが多いんですけどね(笑)。いちいちアプリを入れなくてはならないのが面倒と言えば面倒ですが、それがイヤな人はスマホに乗り換えちゃいけません」(A氏)
同氏によると、一番聞かれることが多いのは「いかにメールのやりとりをバレないようにするか」という質問だという。
「僕は、gmailに2つアカウントを持てばいいと思うんですよ。浮気相手とのやり取り専用にアカウントを取得し、そちらは(標準搭載のメーラーではなく)ブラウザで見るようにする。でも、それじゃ面倒だってヤツも結構いますね。別の手としては、特定のアプリを非表示にできるアプリ(『Launcher Pro』など)でメーラーそのもののアイコンを隠してしまう。パッと見、どこにメーラーがあるのかわからなければ、盗み見しようとする気も萎えるんじゃないかと。面白いところでは、電卓を装った通信アプリなんてのもありますよ。アプリを通じてやりとりした通話やSMSの履歴は、すべてアプリ上で保護される。知らない人がいじってもただの電卓ですから、まずバレないのでは」(同)
絶対にバレたくないという執念のようなものを感じます……。
こうした状況は、女たちにとっては不利と言えるかもしれない。ある程度手口が決まっていたガラケーならば「シークレットモードとか設定してないよね♪」などと揺さぶりをかけることもできたが、これだけ多様なアプリが揃えば、デジタルに強くない女子にとってはまったくのお手上げである。
一方で「用途のわからないアプリは全部ググります!」(32歳・主婦)という勉強家も存在するので、ゆめゆめ女を侮るなかれ。アイコンを隠しても「落としたアプリはandroidマーケットの履歴でチェックできますよね?」(27歳・出版)というIT強者がいるので、詰めの甘さは命取りだ。
さらに、夫や彼氏がスマホに乗り換えたのを機に「GPSによる位置お知らせ」を強要してくる女もいるから、男性陣は気が抜けない! 実は筆者の隣席の青年が、まさにその問題で頭を抱えているところである。浮気の片鱗を嗅ぎつけられ、以後は「GPS機能を常にON」にしておくよう申し渡されたというのだ。GPS追跡ツールを使えば、キャバクラで遊び呆けているのも、どこぞのラブホにしけこんでいるのも一発で判明する。こうした要求に対して「イヤだよ!」と抵抗したり、逆切れしたりするのは「クロです」と申告しているようなもの。なにか対策はあるのだろうか?
「iPhoneなら、GPS位置情報を偽装できる『Location Spoofer』というアプリがあります。ただし、このアプリを入れるにはjailbreak(iPhone端末の不正改造)が必要なので、オススメはしません。端末を2台持って、奥さんに把握されている端末を会社などに置いておき、電話やメールはもう一台の方に転送するというのが現実的ですかね」(A氏)
どっちにしろ大変そう……。
結局、「うちの旦那(彼氏)は浮気しているのではないか」という疑惑を抱いた女たちをかわす方法など、最終的には存在しないのではないかとすら思えてくる。ちなみに、こういう記事のせいで女に知恵がつくじゃねーか!というクレームは受け付けません。本欄では、隠したい男と摘発したい女のイタチごっこを、これからもウォッチしていきたい所存である。それではまた。
取材・文/琵琶子
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