スティーブン・キングのツイッター炎上で「ネタバレ」を考える
作家、スティーブン・キングのツイッターが“炎上”したという。理由は「人気ドラマのネタバレ」だ。
もともとキングのツイッターは「何かといらんことを言う」ことで知られており、今年の2月にも、ツイッターデビューからわずか2か月にして、ウディ・アレンの養女ダイアン・ファーロウ(←養父ウディを性的虐待で告発)をビッチ呼ばわりし、フルボッコに遭ったばかり(この件については謝罪している)。
今回、問題になったのは、人気海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』に関するツイート。アメリカでは現在、最新の第4シーズンを放映中だが(日本でもスター・チャンネルで7月より同シーズンを放映予定)、第2話の放映直後に、ある主要登場人物が“死んだ”ことを、キングは「あばよ(See you later)」という表現でほのめかしたのだ。
マズかったのは、キングが観ていたのは東海岸での放映であり、西海岸では同じ回がまだ放映されていなかったということ。一般人のツイートならまだしも、約40万人のフォロワーを持つキングだけに、「こういうヤツはツイッターやるなよ」という怨嗟の声が吹き荒れた。
とはいえ、キングにも言い分はある。
「おいおい、この話は15年くらい前に本になってるんだぜ?」
シリーズ第一作『A Game of Thrones(邦題:七王国の玉座)』の刊行は’96年。以後「世界各国でベストセラーとなり、現代最高のファンタジイ・シリーズとの評価を不動のものとしている」(Amazonの紹介文より)。
さらに、キングはこう畳み掛ける。
「もひとつネタバレ。ロミオとジュリエットは第5幕で死にます」
このエピソードは、「ネタバレはどこまでアリなのか」を考える点で興味深い。
実は先日、編集部でも似たようなエピソードが。筆者の隣席の青年が、『三国志ロワイヤル』にハマったのをきっかけに『蒼天航路』を読み始めたという(それまで三国志モノを読んだことは一度もなかったそうな)。『蒼天航路』ファンである筆者はすっかり嬉しくなってしまい、話が盛り上がるに任せて「●●が死ぬシーンが泣けるんだよね!」と口走ったところ、青年はリアルにショックを受けた顔で「●●、死ぬんですか!?」と言ったのであった。いや、歴史モノなんだから、最終的には全員フツーに死ぬだろ……。
ネタバレがもっとも罪深いジャンルといえば、「ミステリー」だが、今シーズンのTVドラマのラインナップを見ると、ミステリーでも『MOZU』(TBS)や『ロング・グッドバイ』(NHK)など、「古典」を原作としたものが目につく。とりわけ『ロング・グッドバイ』の原作であるレイモンド・チャンドラー作『長いお別れ』は、ミステリーのオールタイムベスト企画で常に上位入りする傑作。大勢の人がすでに結末を知っているわけだ。
『ロング・グットバイ』関連のツイッターを拾い読みしたところ、案の定“ほんのりネタバレ”的なツイートはあった。つまり「▲▲は××していない」という大オチをほのめかす内容である。だが、そういうツイートもあって当然なのではないだろうか。むしろ「あのラストをどう描いてくれるのか」という点について、大いに語り合いたい。
ある書評家はこう話す。
「基本的に、新刊のネタバレについてはセンシティブになりますが、ある程度ネタバレしなければ何も語れないという側面もありますよね。有名本格ミステリー作家のA氏にインタビューをしたとき、取材はとても盛り上がったのに、最後に『話のスジは、本の帯に書いてある以上のことは書かないで下さい。できれば“ミステリーである”ということも言わないてほしい』と言われて驚愕したことがありました。これまでの話、全部書けないじゃん!と」
昨今の小説や映画では、ラストにどんでん返しがある、いわゆる“最後の一撃”ものに人気が集中しているという。どんでん返しがあることをアピールするために、版元や配給会社はこぞって「ネタバレ厳禁」を喧伝する。だが「“最後の一撃”に到達するまでが“苦行”な作品も多い(苦笑)」とは、前出の書評家の弁。オチ以外に見るべきものがない……と読み替えてしまえば、「ネタバレ厳禁」は、一種の地雷であるとも言える。
一方で、本当に面白い作品なら、多少のネタバレは許される……スティーブン・キングにも、そんな思いがあったのではないだろうか。もちろん、登場人物の生死や事件の真相をうっかり先に知ってしまうと興が削がれるのは否めないが、この悲劇を防ぐ手段はきわめてシンプルだ。すなわち「ネットを見るな」!
<文/琵琶子>
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