雑学

飲食店で定番(!?)のスベリ芸を披露するとどうなる?【新しい肝試しスタイルを検証】

新しい肝試しのスタイルを記者が体当たりで検証する夏季限定のシリーズ企画。前回「場違いな格好で高級ブティックに潜入」では、万引き客に間違えられて店員からマンマーク。さらには女性店員に「服装は気をつけたほうがいいですよ」と諭される。いわゆる「恥じらい」を感じることで心が寒くなり、シリーズ最高の体感“冷却”値、90%をマークした。冷却値はあくまで記者の主観なのだが、個人的にはこの「恥じらい」こそ、高得点を狙うには一番なんだと確信。というわけで今回のテーマは「飲食店で定番のスベリ芸を披露」である。具体的には、以下の2点を実践する。

【1】フツーのレストランなのに、シェフを呼んで料理を褒める「場違いな“通”気取り」

【2】バーで一人飲みの女子にバーテンを介して「あちらのお客様からです」とドリンクを振る舞う「古くさいナンパ術」

どうだろう? 自分が実践すると考えただけで背筋が寒くなるネタではなかろうか?

まずは【1】の実践。訪れたのは世田谷区にあるステーキレストラン「V」。いわゆるファミレスである。固定のシェフがいるかどうかも疑わしいお店だ。

席に通され、写真付きのメニューをざっと見る。褒めることに違和感がないようできるだけ手の込んだ料理を……ということで頼んだのはサーロインステーキセットとサーモンのカルパッチョ風。広い店内は週末の夜ということもあって、子連れの客で賑わっている。一人客が珍しいのか、向かいのボックス席から小学生低学年と思しき男子児童が、こちらをチラ見してくる。

「お待たせしました~」と料理が到着。うん、フツーにうまいのだが、これからやらなくてはいけない猿芝居の憂鬱を考えると、緊張と不安で飯が喉を通らない。

なんとか3分の1ほど食べたところでナイフとフォークを置き、『将太の寿司』の名物キャラ、通称“柏手の安”もかくやという大音量で「パチーンッ」と柏手を打ち、小声で「うん、うまい」。

ざわざわとこちらに好奇の視線を投げかけてくる客をよそに、「すいません」と近くの女子店員を呼ぶ。

店員「はい、お客様」

記者「シェフを呼んでほしいのですが……」

店員「えっ? シェフ……でございますか? あのう、どういったご用件でしょうか?」

記者「ええ、料理のことでちょっと」

店員「かしこまりました。し、少々お待ちください」

おいおい、本当に呼んできちゃうの? どうしよう、超恥ずかしい……。すでに背中は冷や汗でビッショリ。ふと顔を上げると、先ほどの男子児童がいるボックス席の家族も、食事をする手を止めてこちらの様子をうかがっている。いや~、凍える凍える。

待つこと3分、白の調理服を着た男がやってきた。プロゴルファーの池田勇太を彷彿とさせる、朴訥な面影。推定年齢二十代前半とずいぶん若く見えるが調理長だろうか? 面倒なクレーマー客だと思った店側が、適当なバイト学生を人身御供に出してきたのでは……。そんな記者の思いをよそに、不安げな表情を隠すことなく、話しかけてくるシェフ。

シェフ「あのぅ、お客様。お呼びでしょうか?」

記者「ええ、ちょっと料理のことなんだけど」

シェフ「はっ、はい(涙目)」

記者「おいしかったですよ」(この瞬間、聞き耳を立てていたおっさんがズコーッとこけるのを横目で確認)

シェフ「えっ?」

記者「特にこのサーモンのカルパッチョ……風? 脂が乗ってて絶品ですね。ど、どちらで獲れたんですか?」

シェフ「えっ? いや、それは……海? いや……近海? ……でしょうか?」

もちろん、うまいことは確かだが、シェフを呼んで賛美するほどの料理ではない

近海といえば「それらしい答え」だと思ったのだろうか。たぶん北米あたりで獲れたキングサーモンの一種だろう。料理について深くツッコめばツッコむほど、会話はぎこちないものになり、二人とも目を合わせずお通夜のような問答が繰り返される。

記者「時間取らせてごめんなさい。一言お礼が言いたくて……。また食べにきます」

ようやく解放されるとの安堵感か、この日、初めて笑顔を見せて「お待ちしてます、ありがとうございました」と厨房に戻るシェフ。恐らくこの日の休憩時間は、僕の話題で持ち切りだろう。そう思うだけで恥ずかしさは倍増。そそくさと店をあとにした。

続いては冒頭にも書いた「あちらのお客様からです」プレイを実践するにあたり、未婚女子の“おひとりさま”率が高いと評判の西麻布のバー『K』へ突入。

この実践に限り、お店の協力が得られなければ成立しないので、ひとり飲んでるときに企画の意図を打ち明け、台本通り「あちらのお客さまからです」とバーテンに言ってもらうことにした(余談となるが、店を開けてからの10余年、会話もせずにいきなりお酒を振る舞うケースは一度もないという)。

15席ほどのカウンターの右端に陣取った記者。カウンター中央部にはカップルが2組という状況が続いたが、入店して1時間ほどして、京野ことみと光浦靖子を足して2で割ったような容姿の女性が来店。カウンターの左端に座った。

いよいよ決行……なのだが勇気がわかない。何度も頭の中でシミュレーションしてみるが、脳裏にめぐるのは最悪の結末ばかり。そもそも、「あちらのお客さまからです」と言われた彼女が僕のほうを見たとき、どんな顔をすれば正解なのかがわからない。モヤモヤと考えたのは以下の3パターン。

1.カランカランとロックグラスを揺らし、ドヤ顔で乾杯の仕種

2.トレンディドラマ全盛時代の江口洋介よろしく、「カッ」と舌を鳴らして、指を閉じたピースサインで「よっ」と爽やかさをアピール。

3.正面を向いたままバーボンをすすり、チラッと伏し目がちに彼女を見る

どれも人生を終わせたくなるほど恥ずかしい……っていうか、普通にキモいだろ、コレ?

結局、実行に移ったのは彼女が来店してから1時間経ってからのこと。思い悩んだ末、自己アピールは1番を選択。2番をよどみなくできるほど演技力に自信はないし、3番では記事的につまらなそうだからだ。

そして……賽は投げられた。果たして結果はどうなるのか? 体よく無視されるのか? 企画の意図とはズレるが、成功しちゃったりして?

女性客の前に立ったバーテン。手を記者に向け「あちらのお客様からです」と一言。スラッとその台詞を言いのけるのは、さすが接客のプロだ。

「えっ?」という表情でこちらを見る女性。1番のポーズをしてニヤリとした記者の姿を確認すると、ニコリと笑顔で「いただきます」と口を動かし、カシスオレンジが入ったカクテルグラスを持ち上げて乾杯のジェスチャー。

すわっ成功か? と思い、グラスを持って彼女の元へと移動を開始する記者……しかし、運命はかくも残酷なもの。接近しようとする記者の姿を確認するやいなや、クルリと背中を向ける彼女。それとなく様子を伺っていたカウンター中央の2組のカップルからは失笑がもれ、事情を知っているはずのバーテンも、笑っている顔を悟られまいと、小刻みに肩を震わせながら、下を向きっきりだ。

前回に引き続き、心の中をすきま風がピューッと吹きすさぶ。いやいや、今回の体感“冷却”値は期待どおり……100%超えである(グッスン)。

※4回にわたってお送りした「肝試しシリーズ」、夏も終わったこともあり(というか記者の心身疲労が限界なため)今回が最終回となります。肝試しの本質である「恐怖、孤独、絶望を味わえる場所」は心霊怪奇スポットのみならず――を証明できたのではないかと。

アレンジ次第で無限に出てくるこのテーマ。友人同士の罰ゲーム、おもしろネタ作り、度胸試しに、皆さんもお試ししてみてはいかがでしょうか?(公序良俗に反するテーマは推奨しませんが……)




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