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初心者ドライブで夜の歌舞伎町を迷走 【新しい肝試しスタイルを検証】

肝試し1 デパート、電車、オフィス。都内各所の公共の場の空調は最低限に抑えられ、家庭内でのエアコン使用もためらわれる日々。そんな電力不足に喘ぐ今夏を乗り切るためにクールビズ・ファッションや節電グッズに頼るのもいいけど、心肝を寒からしめる“肝試し”を夏休みの計画に加えている読者諸兄は多いことだろう。しかし、肝試しの本質である「恐怖、孤独、絶望を味わえる場所」は怪奇スポットだけではないはず。そこで今週より、「新しい肝試しスタイル」を体当たりで検証。夏季限定のシリーズ企画として、記者の“冷却体感値”と合わせて紹介していこうと思う。記念すべき第一回目のテーマは、「ペーパードライバーの運転で肝を冷やす」である。

7月某日。6月末に納車されたばかりの記者の新車・ボルボV50のハンドルを握るのは、ペーパードライバー歴10年のライターS(33歳)。ぎこちないハンドル操作、不可解なアクセルワークに揺られて向かう先は夜の歌舞伎町。区役所通りの西側。風鈴会館裏のホスト店、ラブホテル、雑居ビルがひしめくエリアを最低1時間、大小の路上をあますことなく走破するのが肝試しのルールだ。

ローギアのまま、雑踏を掻き分けるように進む。「なんだぁ? この車は?」的な視線を投げかけてくる“兄ぃ”たちの眼力に、早くも車内の緊張感は高まる一方だ。路上のいたるところに、威圧的に違法駐車をしている高級車の横を通るだけで口から泡が吹き出そうになる。カスリ傷一つつけようものなら、どんな因縁をつけられ、法外な慰謝料を請求されるかわかったものじゃないからだ。

しかし、そんな記者の心配をよそに「いやぁ、必勝法を見つけちゃいましたよ、僕。タクシーの後ろを走ってれば、それほどビビる必要はないっすよ」とノー天気な様子のS。確かに、怪しげな人物が闊歩しているものの、車両進入禁止なわけではない。細い路地を縫うように軽快に走るタクシーのルートをトレースすれば意外と安全かもしれない……が、現実はかくも残酷なものだ。

車2台がギリギリ通れるかといった路地に入り、徐行運転をする我々の前方を、白鯨のごとく巨大なシルエットが立ちふさがる。

白のベントレー――掛け値なしに最高クラスの危険度を誇る高級車だ。対向車である我々に配慮する素振りなど微塵も見せずに、ズンッ、ズンッと前進してきて情け容赦のないハイビームを浴びせてくる。ヘッドライトに照らされる恐怖にひきつった僕とSの顔。それを確認したのかどうかは定かではないが、「どけっ」と言わんばかりに、プゥゥオーッンとアフリカ象のようなクラクションを鳴らしてくる。運転席のSは恐怖で過呼吸状態に陥ったのか、巨大魚を目前にした小魚のように、口をパクパクと開けて唇を震わせている。

「バッ、バッ、バックだ、逃げろ、早く!」

「ふぁっ、ふぁい!」

細い路地を通行中。この直後、白ベントレーと遭遇することに

慌てた手つきでギアチェンジをしてアクセルを踏むS――が、エンジンは空回りするばかり。「えっえっ?なんで?」とSはパニック寸前。よく見るとギアはN(ニュートラル)の位置で止まったままだ。悲鳴を上げるエンジン音を“挑発”と受け取ったのか、再びプゥゥオーッンとクラクションを連呼してくる。明かりに慣れた目で対面を見すえると、案の定、“悪役紹介”のような黒スーツ&スキンヘッドの闇紳士がこちらを睨みつけている。

ほうほうの体で脱け出し、足早に職安通りを抜け大久保方面へと退散。肉食獣の檻の中へ丸腰(初心者運転)で入る無謀さ。恐怖からくる冷や汗の量は推して測るべしであろう。

【今週の体感“冷却”値 80%】

※次回は「初心者ドライブで夜の首都高を爆走」をお届けします。




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