廃墟写真にはオスとメスがある!? 新宿で廃墟写真展開催
廃墟に行ったことはあるだろうか? 軍艦島がGoogleストリートビューで公開されるなど、いま再び廃墟に注目が集まっている。そんななか、廃墟ブームの黎明期にあたる2005年から廃墟をテーマにした写真集と映像集を作り続ける同人サークル「廃墟探索部」が、初の写真展「世界が失った時を求めて」をギャラリー新宿座にて開催している。
⇒【写真展】の様子はこちら https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=489218
●廃墟探索部 同人写真集展「世界が失った時を求めて」
http://shinjukuza.jp/130806.html
会期:8/6(火)~8/18(日)
営業時間:12時~20時(日曜17時まで)
休廊日:月曜休廊
入場料:無料
【廃墟探索部】
稲葉渉と成宮澪による廃墟をテーマにした写真集・映像集を作り続ける同人サークル。2005年からは毎夏・冬にコミックマーケットで新作を発表。同人誌として写真集20冊以上、DVD30本以上を頒布している。8月11日、コミックマーケットにて個展の図録写真集を頒布予定(西あ64)
Twitter⇒ 稲葉渉 @inabawataru 成宮澪 @NarumiyaRei
【林 佑樹】
編集・ライター、ときどきフォトグラファー。2010年「グローバル・フォトウォークKEK賞」にて、最優秀作品賞、研究者委員審査部門最優秀作品賞を同時受賞。8月11日、コミックマーケットにて軍艦島写真集を頒布予定(R-34a)
Twitter⇒ @necamax
<取材・文・撮影/林健太>
ギャラリーには、廃墟探索部の稲葉渉氏と成宮澪氏が撮影した、軍艦島やチェルノブイリ、ヨーロッパに眠る廃城など、国内外の廃墟写真が多数展示されている。また、廃墟系同人サークルのフォトグラファーなどをギャラリーに招き、トークセッションをUstream放送で行なっている。
会期初日の8月6日には、編集・ライターで軍艦島などの廃墟や研究施設などを多数撮影してきた林佑樹氏と、稲葉氏によるトークセッションが行われた。この日のテーマは軍艦島。稲葉氏が撮影した映像を流しながら、廃墟探訪の裏話などを披露した。トークセッションで語られた廃墟の魅力あふれるエピソードをいくつか紹介する。
◆廃墟写真にはオスとメスがある
2つの違いについて林氏は、「明らかに撮り方が違うんですよ。普段の視点が反映されるもので、私の場合は『これカッコイイ!』で、構造や廃れ具合などによって撮っています。オスは説明的です。メスは雰囲気が出ている写真です」と解説。この違いを意識すると、廃墟写真の見方が変わってきそうだ。
◆ここは絶対歩けない! 危機感を大事に
両氏が廃墟訪問時を振り返って、たびたび口にしていたのが「ここは絶対に歩けない」という危険箇所についての話。稲葉氏が軍艦島で最も危ない道と思ったのが「学校と65号棟の上の階同士をつないだ3メートルくらいの一本橋」だという。もちろん渡りはしなかったが、林氏は「非常通路で、実際に使われることはなかったらしい」と解説。
他にも強引に増築した箇所についてなど、廃墟の建築的経緯についてのトークは盛り上がりをみせた。さらに、実際にその場で行った者同士ならではの話だったのは、足の裏の感覚について。林氏が軍艦島の床について「ふわふわしてる。基礎が危うくなっている感じがハッキリわかった。ちなみに幕張メッセと東京ビッグサイトの床のやわらかさも違う」と語りだすと稲葉氏もやや困惑気味であった。
床の感覚について、稲葉氏は「廃墟に行くなら土木関係会社の息子と」と言っていたが、素人が気軽に廃墟に足を踏み込む危険性を改めて感じた。廃墟写真を通して、床の硬さにまで思いを馳せてみるのもいいだろう。
◆その場で生活していた人の話
軍艦島は炭鉱として多くの人が労働に従事していた。上陸時に林氏は、元炭鉱労働者のガイドに様々な話を聞いたという。「島で一箇所だけカップルの逢引きスポットがあって、建物の屋上から子どもたちが覗きこんで『なんかやってんでー』と上から騒いでいたそうです」という。
さらに、「当初は炭鉱のなかにも若い女性もいたそうなのですが、汗で服が貼りついた姿に男性が目を奪われて集中できないため、女性は地上で働くことになった」という話も。色っぽい話については特に積極的に話してくれたという。
◆廃墟にハマったキッカケ
トークセッションに参加しなかった廃墟探索部の成宮澪氏には、終了後に廃墟にハマったキッカケを聞いた。
「元々、他人が撮った写真なんて見たい?と思っていて、廃墟写真集なんて誰も欲しがらないと、作品づくりには消極的でした。ずっと渋っていたのですが、稲葉さんに誘われて今では年2回新作を作りつづけています」
また、成宮氏がはじめて廃墟に触れたのは、小学校3年生頃だった。
「写真が元々好きで、レンズを替えたり色々撮っていたのですが、ある時マンネリ化していることに気づいて。そんな時に『バトルロワイアル』に出てきた廃墟を見て、小学校3年生くらいのときに遊んでいた近所の給食センターの廃墟を思い出しました。それで、廃墟になったホテルに行って撮ってみたら廃墟撮影にハマりました」
初日、ギャラリーには多くの人が訪れ、写真と廃墟トークを楽しんでいた。トークセッション以外の時間でも、両氏がギャラリーにいる時は、写真の解説なども気さくに話してもらうことができる。新宿に立ち寄ることがある方は、廃墟写真を味わいに、ギャラリー新宿座に足を運んでみてはいかがだろうか。
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