相関関係を知り、販売不振店の改善をせよ【統計学入門3】
統計学が“最強の学問”だという。ならば数字オンチは最弱かよ!?とクサしたくもなるが、何かと根拠が求められる今、数字を避けては通れないのも事実。そんな「最弱リーマン」へ必要最低限の統計知識を、明治大学准教授で経済統計を専門にする飯田泰之氏、ビジネス数学コンサルタントの深沢真太郎氏、日産自動車に勤務し、経営課題解決プロジェクトに携わる柏木吉基氏の3人が解説!
⇒【前回】「バラツキを知る」はコチラ https://nikkan-spa.jp/499845
<Step3.関わりを見よ!>
◆関わりの強さ=相関で“優先順位”がわかる
平均だけでなくバラツキも含めて考えることで、データの特徴が見えてくる(※前回を参照)。が、そこからもう少し頑張って、複数のデータの関わりの強さ=相関を考えていくと、仕事の意思決定に役立つ発見があるという。
「例えば、気温の上昇とビールの売り上げに相関関係があるとわかれば、天気予報を見て、ビールの売り上げを予測できる。相関係数はその関わりの有無と強さを示します」(飯田氏)
その計算式は当然、略。出た相関係数が±1に近ければ近いほど関係が強くなる。「関わりアリ」と判断する基準は一般的に±0・7とだけ覚えておけばいい。
「宣伝などの現場では、過去の成功体験に基づき、販促費用が割り振られていくケースが多く見られます。カンと経験に頼りがちですが、相関を用いれば、どの販促方法の効果が高いのかを分析できる。その結果、どのコストを削り、何にコストをかけるべきかという優先順位がつけやすくなるんです」(柏木氏)
つまり、相関を使うというのは仕事の精度や効率を上げていくことなのだ。
例題にあげた、ドラッグストアの体重計と血圧計(https://nikkan-spa.jp/506449「Step3」参照)。商品ごとではなく、店ごとの体重計と血圧計の関わりを見ると、相関係数は0.89。基準となる0.7以上で、ここから2つの商品の売れ行きの関わりの弱さがわかる。
つまり、「体重計が売れている店は、血圧計も売れている」ということ。平均値から売れ行きのよくない(ように見えた)血圧計単体の販促を考えるよりは、売れている店の理由を探り、売れていない店をカイゼンすることが効率的に利益を上げるのに繋がるのでは、と考えられるわけ。
「逆に言えば、相関を考えないということは、数字の大小の要因を特定しないで直感だけのギャンブル的な仕事をしていくことになる。結果、仕事の精度を下げることになります」(深沢氏)
◆相関関係があっても、因果関係があるとは限らない
2つの数字の関係性をとらえるのに便利な「相関」。だが、思いがけない落とし穴もある。
「例えば、学生意識調査をすると、学生の成績と朝食の摂り方には相関関係が出る。しかし、『朝食を食べれば成績が良くなる』とは言い切れません。関係はあったとしても、『規則正しい生活を送っている“いいコ”だから成績が良いと考えたほうが自然」(飯田氏)
こうした例は少なくなく、例えば、テレビの普及率とがんによる死亡率にも相関関係はある。日常的にテレビを見るようになると、がんになりやすくなる……わけでは、もちろんない。
「ここで無視されているのは経済成長という要因。経済成長が進めば、テレビの普及率も健康水準も上がる。経済的に豊かになると“がんにでもならない限り、死なない”というだけ」(同)
都合のいい相関関係のデータを示し、説得するという手法は日常生活のさまざまな場面で行われている。データ同士の関わりに敏感になる。それは、都合よく抽出されたデータに都合よく説得されない、ダマされないための自衛策にもなるのだ。
⇒【次回】「予測する」に続く https://nikkan-spa.jp/499847
●【統計学実践例】具体的な流れはコチラ https://nikkan-spa.jp/506449
<相関>
ある2つのデータの、関わりの強さを教えてくれるのが相関だ。エクセルが出してくれた相関係数は、±0.7を目安に相関関係があるかどうかを判断する(あくまでも一般的な基準であり、絶対ではない)。また、相関が強いからといって、それが必ずしも「因果関係がある」ということを示すわけではないのは、要注意だ。
<正の相関、負の相関>
Aの数値が上がればBの数値も上がる、Aが下がればBの数値も下がるのが「正の相関」。その逆で、一方が減ると他方が増えるのが「負の相関」となる。「正の相関」のとき、相関係数は+、「負の相関」のとき相関係数は-となる。βとδのエリアにデータが多いとき、正の相関となり、αとγのエリアにデータが多いとき、負の相関となる。
⇒【図解】はこちら https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=499965
【飯田泰之氏】
明治大学政治経済学部准教授。『考える技術としての統計学』、『経済学的思考の技術』など著作多数。その経済統計の手腕は本誌連載「週刊チキーーダ!」でもお馴染みで、9月にこれまでの調査分析データをまとめた本が刊行予定
【柏木吉基氏】
日産自動車組織開発部ビジネス改革チームマネージャ。経営管理、数値解析、意思決定論を専門に執筆・指導なども行う。著書に『「それ、根拠あるの?」と言わせないデータ・統計分析ができる本』『Excelで学ぶ意思決定論』などがある
【深沢真太郎氏】
BMコンサルティング代表、ビジネス数字・カレッジ学長。ビジネス数学を専門に、企業や大学でコンサルティング活動を行い、これまで約3000人に指導。著書に『「仕事」で使える数学』『数学女子智香が教える仕事で数字を使うって、こういうことです。』がある
イラスト/YAGI
― [超実践]偏差値45からの統計学入門【3】 ―
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