渡辺竜王「どうぶつしょうぎ」で武井壮に敗れる
マンガ『3月のライオン』最新9巻の発売を記念して、陸上十種競技の元日本チャンピオンである武井壮氏が、将棋のプロ棋士である渡辺明竜王と「おでかけニャーしょうぎ」(第9巻の限定版付録)で真剣勝負を行うという前代未聞の企画だ。
⇒【写真】真剣勝負の模様はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=520413
「百獣の王」を目指す筋肉タレントとして知られる武井と、あの羽生善治三冠にも互角以上にわたりあう(※)最強将棋棋士である渡辺「竜王」が直接あいまみえるという夢の異種格闘技戦というわけだ。しかし、そもそも対決の舞台となる「おでかけニャーしょうぎ」は、将棋の駒の動きを簡略化した「どうぶつしょうぎ」のルールが元になっている。ほぼ竜王の土俵と言ってよい状況で、いったい武井はどんなパフォーマンスを見せたのか。
※10月10日現在、渡辺26勝、羽生25勝。
◆初対面は、武井ペースで進行
武井と竜王は、この日がもちろん初対面。番組が始まり、まったくことなる領域での人類最強の2人が握手を交わす。
「筋肉がヤバいっすよ!」(渡辺竜王)
「駒を握る繊細なタッチが握手にも出ていて、猛獣のオーラとはまたちがった、知的生命体の強さを感じますね。将棋は戦術とかいろいろありますけど、最終的にはどんな勝負もハートですから! どれだけ勝ちたいか、どれだけ筋力を積み上げてきたか、そういうものがこう、将棋盤にドーーーン!(力の限り激しく駒を打ちつける仕草)宿ると思います。」(武井)
このように番組はいつもの武井のペースで進んでいたが、勝負を決めるのは筋肉でも根性でもなく「おでかけニャーしょうぎ」である。武井はこの番組に先立ってタレントや芸人仲間と練習をしてチャンピオンになったと話していたが、大丈夫だろうか。正直不安である。
番組では、そのあと武井による将棋の「桂馬」をどのように倒すかといったパフォーマンスが続く。とりあえず「イージー!」らしい。大丈夫だろうか。
◆「おでかけニャーしょうぎ」とは
ちなみに「おでかけニャーしょうぎ」のルールは、基本的に「どうぶつしょうぎ」と同じもの。盤のマス目は3×4マスで、将棋の9×9マスよりかなりせまい。駒の数も先手と後手にそれぞれ4枚しかなく、「おーさまニャー(王将)」「かくニャー(角行)」「ひしゃニャー(飛車)」「ふニャー(歩兵)」の4種類のみだ。
「ふニャー」のみ相手陣内に入ると「キリッとニャー(と金)」になる。「かくニャー」と「ひしゃニャー」は、将棋の角行や飛車とことなり、1度に1マスしか進めず、相手陣内に入っても「成る」ことはできない。「おーさまニャー」を取ることを「キャッチ」と呼び、取ったほうの勝ちとなる。
このように「おでかけニャーしょうぎ」は将棋を簡略化したゲームで、子どもや女性にも親しみやすくデザインされているが、実際に指してみると、将棋とは少しちがった戦術が必要で非常に奥が深いことがわかる。超至近距離で相穴熊になっているような感じ、といえば将棋がわかる方には伝わるだろうか。
番組では、将棋で言う「詰め将棋」の1手詰めや3手詰めのデモンストレーションも行われた。武井は少し考えつつ「キャッチ! イージーゲーム!」と正解を導き出し、出演者やスタッフを驚かせていた。われわれ取材陣も少し安心した。
一方、普段は早寝という竜王は、23時からの番組とあって、眠そうである。こちらも大丈夫だろうか。
◆眠気に襲われる竜王に、百獣の王が挑む
いよいよ「百獣の王」と「竜王」の世紀の対決。手番はじゃんけんで決められ、竜王の先手に(※)。持ち時間の計測はチェスクロックで行われた。
※実は「どうぶつしょうぎ」(=「おでかけニャーしょうぎ」)は、コンピュータによる解析で後手必勝との発表がある(「GPS将棋」の開発も行っている東京大学の田中哲朗氏)。
いくらルールがちがうとはいえ、竜王を相手に盤をはさむのは緊張するもの。筆者も『週刊SPA!』の取材で竜王と盤をはさんだときは、駒を持つ手が震えたものである。しかし、武井は臆することなく早指しでテンポよく応じている。さすがの勝負度胸だ。
ところが、開始3分も経たないうちに、盤面は早くも大ピンチに。
「これはマズイな! どうしたらいいんだ!」(武井)
「マズそうですねえ」(渡辺竜王)
「つええなこの人! 今とても心細いよ!」(武井)
「これはキャッチでいいんですか?」(渡辺竜王)
「あ!」(武井)
というわけで、第1局はアッサリと竜王の勝利に。不安的中である。この番組は武井が竜王に勝つまで続くというから、これは大変だ。ここで武井からハンデの要求があり、武井のみニコ生のユーザーコメントを見ながら指してよいことに。
「羽生善治さん、今すぐニコ生を見てください! コメントは赤文字でお願いします!」(武井)
しかし、第2局もあっという間に竜王が「トライ」(※)で勝利。開始早々に武井がチェスクロックを物理で破壊するところしか見どころがなく、番組の成立が危ぶまれた。
※「おーさまニャー」が相手陣の一番奥まで到達すると問答無用で勝利扱いになる。
第3局は、竜王の「ふニャー」を武井の持ち駒扱いにするハンデも追加。ユーザーコメントも参考にしつつ指した武井の手が好手で、はじめて有利に進む。
「いやあ、ヤバいッス」(渡辺竜王)
ヤバいと言いつつも、竜王はおそらく最善手で応じているのであろう。ルールの考案者である北尾まどか女流二段からは感嘆の声が漏れる。それでも大きなハンデのため、局面はいかんともしがたい状況に。さすがにこれは武井勝勢という局面だ。
ここが勝負どころと見たのか、武井は時間をかけて真剣に考えている。竜王は武井が指すとノータイムで応じる。これは、相手をあわてさせて間違いを呼び込む勝負術だ。だが、武井の集中はとぎれない。
「キャッチ! ドーーーン!」(武井)
最後は5手詰めをしっかり読みきった武井が見事に勝利。
◆竜王に勝った武井、物理での倒し方も披露
「なんなのあの威圧感! 1匹の猫を、俺と室伏広治とディーン元気と川尻達也で囲んでるのに、もしかしたらやられるんじゃないかってくらいの!」(武井)
「ちょっと間違えてもらおうと思って指してたんですけど。3局目で負けちゃったって、台本とちがいますよ!」(渡辺竜王)
台本では5局目まで行く予定だったようだが、武井のポテンシャルが竜王やスタッフの想像以上だったということであろうか。勝利コメントの意味は不明だが、大金星で将棋界まで制覇してしまった武井壮、恐るべしである。
番組は、最後に武井が物理的に竜王を倒す方法を披露して大団円となった。番組終了後の武井は「身体能力的には負けるところがない」竜王から感じたという底知れないプレッシャーを、終電をのがした取材陣に雄弁に語ってくれたことを付記しておく。この世紀の一戦は、ニコニコ生放送のタイムシフト機能で今からでも視聴が可能なので、ぜひご覧いただきたい。 <取材・文/坂本寛 撮影/林健太>
●【3月のライオン特番】武井壮が教える渡辺竜王の倒し方 – ニコニコ生放送
http://live.nicovideo.jp/watch/lv153747648
10月7日、ニコニコ生放送にて「武井壮が教える渡辺竜王の倒し方」と題した特別番組が放送された。これは
『
3月のライオン 9 おでかけニャーしょうぎ付限定版』 大人気の「どうぶつしょうぎ」と「3月のライオン」の素敵なコラボ!! 駒のニャーは、羽海野先生の描きおろし!! |
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