あのOLヒーローたちがついに初ワンマンライブ 【カリスマドットコム】
「ちゃんと歌えてない。もっとMCもうまくやれたはず」
意外な一言だった。11月24日に渋谷WWWで行われたカリスマドットコムの初ワンマンライブ。チケットをソールドアウトさせ、大盛況な会場を沸かせきったあとに聞いたMCいつかのこの言葉には、驚きを禁じ得なかった。なぜなら、圧倒的なパフォーマンスを見せつけた直後だったからである。
今年7月にミニアルバム『アイアイシンドローム』でデビューしたカリスマドットコムは、各業界の注目を集め続け、モテキナイツなどの注目度の高いイベントや、ロックインジャパンフェスティバル、BAY CAMPなどの大舞台も経験。普段はOLとして働きながらも今年は50本以上のライブをこなしてきた。デビュー前から大小問わず各会場を沸かせる2人のライブを何度となく見てきたが、特に夏以降はそのパフォーマンスにさらに磨きがかかり、新たなファンを開拓し続けてきたのだ。
特にいつかの書く同性への攻撃的な歌詞は、女性ファンに強く突き刺さるようだ。最近、カリスマドットコムにどっぷりとハマっている講談社エッセイ賞受賞作家の内澤旬子氏はこう語る。
「私は音楽に詳しいほうではないんですが、どうも『まっすぐ前向き』な歌ばかりが世の中に溢れている気がしていて。こんな混迷している時代なのに、なんでだろうって思っていたんですが、カリスマドットコムの歌詞は毒気もあり新鮮でした。カラオケにまだ1曲しか入っていない『HATE』を歌おうとしたらラップが難しすぎて断念しましたけど(笑)」
このように同性の支持を集めている2人だが、ワンマンライブの2日前、ヒップホップ業界の大先輩であるライムスターとの対バンを果たしたあとの楽屋で初ワンマンへの意気込みを聞いたときの2人は完全に対照的だった。
「あまり普段と変わらないですね。コヤブソニックのときは出番が小林幸子さんの後だったので、若干の高揚感があったんですが(笑)、むしろ共演者の方がいるとどなたに対しても『負けられない』という意識のほうが先立つんです。ワンマンだと自分たちしか出ないから。むしろ、ゴンチが緊張することが気になります(笑)」(MCいつか)
「どんなライブも緊張するんですが、当日は緊張で倒れないか心配です。チケットが完売しましたけど、7人ぐらいしか来てなくて『ふざけんなよ』って言われる夢を見て。それ以来、『本当に完売したのな』って思ったりして(笑)」(DJゴンチ)
余裕すら感じさせるいつかと、初のワンマンに向けた不安を隠さないゴンチ。
ただ、そのゴンチの不安はワンマンのセットリストに理由があったのかもしれない。まだミニアルバム1枚しか発表していない彼女たちはたった8曲を武器に、各地でのライブを戦ってきた。新曲が2曲あるとは事前に聞いていたが、10曲でも普通にこなしたら40分程度でライブは終わってしまう。ワンマンをどのような構成にするのかは興味深かったが、「お楽しみに」と語るマネジャー氏の言葉を胸に当日を待つことにした。
当日の渋谷WWWは、男女半々ぐらい、高校生ぐらいから中高年まで、性別も年齢層もまんべんなくバランスのよい観客でぎっしりと埋まっている。カリスマドットコムの初ワンマンを見届けようという熱気が場に充満していた。
照明が暗転すると、オープニング映像が流される。有高唯之氏の撮影によるライブ写真が数多く映し出され、観客の期待度をさらに煽ったところで、盛大な拍手に迎えられ、2人が登場。
1曲目は代表曲と言える『HATE』。かと思いきや、途中で『NOW』に移行するという普段のライブでは見せない構成だ。さらに、レーザービームやプロジェクションマッピングなどワンマンライブならではの演出も冴えている。
『歪LOVE』『メンヘラブス』など女性の気持ちを代弁する曲を、いつも通りのハイレベルなラップとダンスで観客に叩きつけるいつか。やはり「緊張している」と言いつつ明るく場内を盛り上げるゴンチ。そんなゴンチにいつかは「緊張しているとか、知らねぇよ」と軽妙なツッコミを含んだトークで観客を笑わせる。
そして、やってきたのがゴンチによるDJタイム。「なるほど、これなら曲数の少なさもカバーできるな」と思っていると、なんとゴンチが1人だけでDJをするのは初めてだという。しかし、ゴンチは5曲を繋いで観客をノセ続けた。「温かいお客さんで助かりました」とは終演後のゴンチの弁だ。
「じゃあ、後半戦行くよ」とステージに戻ってきたいつかは、「新曲をやります。『Sodai ゴミのkoi』」と、また刺激的な曲名を発表。続けて、『nodatte』という新曲も。実はこの2曲は1週間前に行われた大坂でのライブで披露されていたのだが、今回のアンコールでは『train HELL』という3曲目の新曲も初披露された。
そして、最後は『HATE』できっちりと締め、約1時間半のワンマンライブは終了。見事なステージングを見せつけた、と思っていたのだが冒頭に書いた通り、いつかは「反省点がいっぱいだ」と語る。
「歌に関しては力の配分がうまくいかなかったです。次の目標は次回のアルバムに向けてのかっこいい曲をいっぱい作りたい。そして、もっと大きなステージでも通用するようなライブづくりをしていきたい」
何度も書くが、1時間半、彼女たちは観客を興奮させ続けた。もしかすると、初ワンマンでハイレベルではあるが「普段通り」のパフォーマンス以上のものを見せられなかったのが、演者としては悔しかったのかもしれない。その意識の高さは見習うべきものがある。
「集まってくれた皆さんには感謝の言葉しかない」と2人は口を揃えるが、これからも続くカリスマドットコムの道のりにとって、初ワンマンは飽くまで通過点。さらに高い目標を見据えているからこそ、反省の言葉も出てきたのだろう。逆に言えば、現時点でこれだけのパフォーマンスのできる2人はもっともっと成長していくということだ。
来年発売予定のアルバムを待たずとも、これからもライブを連発していくであろう2人。さらなる飛躍を遂げることは間違いないが、現時点でのカリスマドットコムを目撃しておく価値は十分にある。
<取材・文/織田曜一郎(本誌) 撮影/有高唯之>
◆2013年11月24日「ごきげんよう、Charisma.comです」@渋谷WWW セットリスト
OP
1.HATE(最初のサビまで)
2.NOW
MC
3.歪LOVE
4.メンヘラブス
5.Lifefull
DJ time
MC
6.sodaiゴミのkoi(新曲)
7.nodatte(新曲)
MC
8.OLHERO
9.automade
MC
10.GEORGE
<アンコール>
ドットテレビジョン(映像)
MC
11.TrainHELL(新曲)
12.HATE
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