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黒木渚、渋谷公会堂を決め、武道館を見据える【ワンマンライブルポ】

 昨年12月にデビュー、今年2月に福岡県から上京し、活躍の場を広げている黒木渚が、11月30日に東京で2回目のワンマンライブを東京キネマ倶楽部にて行った。ライブ中には来年6月1日に渋谷公会堂でのワンマンライブを行うことも発表、今後さらに注目を集めていきそうだ。

黒木渚※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「黒木渚の真実はライブにある」という言葉が気になっていた。これまでに2度、イベントとインストアライブで黒木渚のステージを観てきたが、その両方で彼女はこの言葉を発していた記憶がある。彼女の言う「真実」とは何か、前回の取材のときに聞いてみた。

「ちょっとでも『後ろめたいな』と思うことを人前でやれないんです。例えば、曲を作るときでも『歌詞の中にこの言葉を使えば売れそう』とか、『このコード進行は王道だからそのまま使っちゃえ』といったようなことができない。自分から沸き上がったものと付随していないと、真摯じゃない感じがするんです。もしも私がステージで嘘を歌っていたとしても『素敵だな』と思ってくれる人がいるかもしれない。だけど、『素敵だな』と思ってくれる人に対して恥じないでいられるようにしないと、ステージに立つ意味がない。そうじゃないと公務員を辞めた意味がないっていうか(笑)、それがやりたいから公務員を辞めたんでしょって。私の言う『真実』ってそういうことだと思います」

 そして、その「真実」を最も発揮できるというワンマンライブ。それはイベントなどでのライブよりも演劇性の高い演出が施されたものだった。

 中高生のときに「軍隊のような寮生活」を送っていた黒木渚は、抑圧された経験からかステージへの憧れを持っていた。そして本人曰く「解放された」大学生活が始まったときには演劇サークルかバンドサークルに入るかで迷ったという。そういう素養が、現在のステージングに生かされているのかもしれない。

 それを感じたのはまずオープニング。

 開演前のステージ上には白い幕が貼られていたのだが、そこに映像が映写される。映像が終わりその幕が落されると、背中を見せながら観客席を振り返り、観客をにらみつける黒木渚がいた。その視線の力強さには目を見張るものがある。そのまま『プラナリア』という曲を、ステージを縦横無尽に動きながら歌い、会場を煽っていく。

 演劇性とは関係ないが、今日も裸足だ。「歌いやすいから」という理由らしいが、ステージ中央には絨毯が敷かれている。確かに、この時期にステージに直に裸足で立ち続けるのは厳しいだろう。福岡パルコのモデルも努めている黒木渚だが、その美しい素足も存分に見せてくれていて、男性ファン的にはうれしいところだ。

黒木渚 その猟奇的とも言える歌詞世界から真面目にとらえられることが多い黒木渚だが、ステージでは遊びの演出も取り入れている。

「ただライブでスプーン曲げをしたいから作った」という4曲目の『エスパー』では、「指先に 曲がるスプーン」と歌いながらスプーン曲げを披露。

 そのほかにも「2か月前、私はこのバスルームで死んだ」という長いナレーションの導入からバスルームに留まる幽霊の嘆きを唄った『ウェット』という曲や、エリック・サティの『ジムノペティ』を曲中に入れ込んだ『安藤麻衣子』という曲での衣装替え、時計の音とともに再びナレーションからはじまる『はさみ』などの演出に、黒木渚の表現したいことが詰まっているように感じた。

 そして、ライブの後半では来年6月1日に渋谷公会堂ワンマンを決めた、と発表。会場から歓声が上がる。

 今年の6月1日に200人キャパのCLUB Queでワンマン、そして11月30日に600人キャパのキネマ倶楽部をフルハウス。ここまでは口コミで順調に観客動員を伸ばしてきたが、2000人キャパの渋谷公会堂を半年後に埋められかは正直不安とのことで、「まるでマルチ商法みたいですが、ここにいるみんなが3人ずつ友達を連れてきてください」と笑いながら話す。

「今まで『武道館に行く』と言ってきたけど、その約束は2年後ぐらいにして。とりあえずは渋谷公会堂を成功させたい」とも。

 さらにライブの終盤では、こんな決意表明も飛び出した。

「今回、ワンマンツアーを回ってきて、いろんな人に会いました。サイン会もやったので皆さんと話ができたんだけど、『黒木渚に出会うまで死のうと思っていた』と言った人が何人かいて。そして『黒木渚の武道館を観るまでは死なないことにした』と言ってくれたんだよね。そんなの聞いたら、やめられないじゃん。さっき『みんなを武道館に連れて行く』と言ったけど、本当は連れて行くんじゃないよね。私たちが連れて行ってもらうんだよね。で、きっと武道館を観たら、その人たちももう死なない気分になっていると思う。だから、2年以内に、武道館行くぞ!」

黒木渚 表現者とは、いろいろな人たちの期待を背負うものだ。黒木渚に救われた人々の思いも飲み込んで、彼女は武道館への決意表明をした。彼らの思いを敢えて語ったところが冒頭で紹介したように「後ろめたいことができない」黒木渚らしさであり、不退転の覚悟が秘められている。

 演出面、パフオーマンス、そして魂の決意表明。見事なまでに「黒木渚の真実」を見せつけられたライブだった。そして、渋谷公会堂の次に武道館に「真実」を持って行けるのか。その道のりを見守っていきたい。

<取材・文/織田曜一郎(本誌) 写真提供/ラストラム>

●2013年11月30日
黒木渚 2nd Single 「はさみ」 RELEASE ONEMAN TOUR 「やわらかなハサミ」@東京キネマ倶楽部セットリスト


1:プラナリア
2:クマリ
3:マシリョーシカ
4:エスパー
5:あしながおじさん
6:あたしの心臓あげる
7:ウェット
8:安藤麻衣子
9:はさみ
10:テーマ
11:赤紙
12:骨

【アンコール1】
13:ダニーボーイ(カバー)
14:ロマン(新曲)
15:カルデラ

【アンコール2】
16:ノーリーズン

はさみ

交差する二本の刃が 真ん中できつく抱き合えば暗闇でさえも切り裂ける 美しいひとつのはさみになる

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