防空識別圏の設定に中国国民は呆れている
昨年末、日本のみならずアメリカをも巻き込んで話題になった中国の防空識別圏設定問題。新年を迎えて一旦落ち着いた感があるが、果たして今年はどうなるのだろうか? 今後の中国共産党の動きを予想するべく、天安門事件の中心人物として二度投獄され、アメリカに亡命を果たした中国民主運動家の陳破空氏に話を聞いた。
◆中国国内世論はしらけムード
昨年末、日本では初めてとなる著書『赤い中国消滅 張り子の虎の内幕』(扶桑社刊)を上梓した陳氏。アメリカのラジオやテレビでも活躍し、中国民主化に関する論客として台湾や香港で注目を集める陳氏の目に、防空識別圏問題はどう映ったのだろうか?
「昨年11月9日から12日まで中国では第18回三中全会が開かれました。同会で『国家安全委員会』というスーパー機構が設立され、習近平自らが管理することになったのです。その10日後に中国は『東海防空識別圏』の設定を発表した。これはこの『国家安全員会』が点けた『最初の火』であり、このように肝っ玉の大きく無茶をすることで、同委員会の存在感と権力を示そうとしたのです」
習近平が防空識別圏を設定した裏には、国内に対して自らの権力を誇示する狙いがあったのだ。中国共産党の権力強化に日本が出汁として使われるのは今に始まったことではないが、なんとも迷惑な話だ……。では、防空識別圏の設定というパフォーマンスを行う中国政府について中国国内の世論はどう考えているのだろう。
「中国国内の自由派の知識分子は、『わざとごたごたを起こし、東シナ海での衝突を挑発している』『民族感情を煽動して仮想敵を作り出し、中国内部の矛盾から目をそらさせようとしている』『自らをだまし人をだます行為で、いわゆる防空識別圏の設定とは喜劇である』と中国政府を批判しています」
威勢のいい言葉を並べ日本を挑発する中国共産党に対し、中国国内は冷めていく一方というのが現実なのだ。
◆習近平の「身内」毛沢東左派からも批判噴出!!
しらけムードになっているのは知識層だけではない。陳氏によれば習近平を支持する毛沢東左派からも落胆の声が上がっているという。
「初めは喜んで鼓舞した毛沢東左派ですが、アメリカ、日本、韓国の軍用機が通常どおり同区域を飛行し、中国側が何ら反撃しなかったことを知り、おおいに失望しました。『中華民族の面子を丸つぶれにされた!』『これほどまでに赤っ恥をかかされて、これから中国人は世界でどうやって生きていけばいいのか!』と、中国政府を口ぐちに罵ったのです」
ネット上でも世論は沸騰している。中国ネットユーザーは中国共産党を張子の虎であると罵り、『我が国の識別区に進入した敵機は、我が軍の強硬な識別に遭遇した』『我が方は我々を無視する敵をしっかりと監視した』『自業自得。自分で自分の足に石を落とすようなものだ!』と皮肉る始末だ。
知識層、毛沢東左派、ネット世論とまさに360度から批判がわき起こり、面子が丸つぶれとなった中国共産党。権力を知らしめるという意図とは裏腹に反発が強まっているが、そこまでして防空識別圏にこだわる理由とは一体何なのだろう?
「アメリカを試し、脅そうという意図がありました。しかし、アメリカが恐れずに通常通り米軍機をこの区域に飛ばしたのに対し、北京はなすすべがなかったのです。結局中国は非常にアメリカを恐れています。面子をつぶされた中国政府は面の皮が厚く、中国人民に向かっては『中国軍は全行程を監視し、米軍機の種類を直ちに識別し把握していた』とうそぶきました。のちになって『中国の殲‐11など主力戦闘機がスクランブルをかけ(アメリカと日本の軍用機に)対処した』と嘘をつきましたが、このような嘘をつくのは中国民衆を騙すためです」
中国政府の算段とは、中国国内で面子を保てば政権を維持できるというもので、国際社会における面子の問題についてはそれほど多く考えてはいられない状況のようだ。また、陳氏によれば加熱するパフォーマンスが軍事的衝突に発展しても、腐敗にまみれた中国人民解放軍では日本に太刀打ちできないという。果たして今年の日中関係はどうなるのか……。
【陳破空(Chen Pokong)氏】
1963年四川省生まれ。上海同済大学在籍中に学生運動の中心メンバーとして天安門事件に参加。2度の投獄を経てアメリカに亡命。現在はニューヨーク在住。2009年に共産党の内部事情を鋭く描いた『中南海厚黒学』、中国とアメリカについて書かれた『もし中米が開戦したら』がともに香港、台湾でベストセラーに。ほかにも著書多数。テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍中。昨年末には扶桑社より日本初の著書「赤い中国消滅 張り子の虎の内幕」を上梓。自身の半生から腐敗する人民解放軍、習近平と薄煕来の親子二代にわたる血で血を洗う政争など、中国の国内事情に鋭く斬り込んでいる。
<取材・構成/SPA!中国問題追及班>
『赤い中国消滅 張り子の虎の内幕』 中国共産党の内情から尖閣問題、対日政策など崩壊寸前のあきれた国の実情とは? |
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