更新日:2014年01月27日 16:16
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【タイ反政府デモ】非常事態宣言が発令され死者も…いまだ“静かな混乱”が続く

タイ反政府デモ

「バンコク・シャットダウン」の標的となったアソーク通りは夜になると反政府集会が繰り広げられる

 昨年12月に「タイ反政府デモ座り込みの現場に行ってきた」(https://nikkan-spa.jp/553832)を報じたが、その後動きがあり、2014年1月下旬現在はさらに先行きの見えない泥沼へと落ち込んでいる。  インラック首相は、とっくに下院の解散総選挙という最大の譲歩を見せているが、反政府派は選挙を経ずに政権を譲れと政府に迫っているのだ。  解散総選挙は2月2日に行われる。ただ、野党の多くも反政府派であり、ボイコットにより出馬自体もしていないため街頭に出されている選挙ポスターはすべてタークシン派のものばかり。1月24日に、選挙日の延期の可否を仰がれた憲法裁判所は政府側と選管の判断で可能とした。しかし、政府の判断を反政府側が受け入れる可能性は低く、事態はなんら収拾する見込みがない。  反政府派は1月13日から「バンコク・シャットダウン」と称して、バンコクの主要幹線道路や交差点を封鎖して座り込みを続けている。完全に交通や経済が麻痺しているわけではないが、今後経済活動に大きな影響を与えるのは間違いない。  この反政府派は2008年11月ごろにタイの玄関口であるスワナプーム国際空港を占拠したグループと同じと見られており、外国人や中立派のタイ人からは「こいつらが運動を始めると嫌がらせにしか見えない」と不評を買っている。  今回のデモは、主要交差点を占拠する座り込みと、そこを起点にして公官庁や政府の施設へのデモ行進になっている。まだ暴徒化はしていないが、それでも1月17日などに2回ほど、デモ行進に何者かが手榴弾を投げ、死傷者が出ている。  とはいえ、現状の街は大きな変化はない。  座り込みなどの抗議行動である「バンコク・シャットダウン」の標的になっているバンコクのビジネス街であり、多数の日系企業もオフィスを構えるアソーク通りも、営業時間を変更させられている企業も少なくないが、道路の封鎖により渋滞は激しくなっているものの、事務所閉鎖にまで追い込まれていない。デモ隊の集会にしても18時ごろから深夜にかけて開かれるため、反政府支持者の従業員も出勤はしてくるので昼間の業務には差し支えない状態である。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=575310  1月20日になってインラック首相らは非常事態宣言を発令し、これにより座り込みやデモ行進は取り締まりの対象となった。しかし、反政府デモを主導するステープ・トゥアクスパン氏は、非常事態宣言については無視すると公言し座り込みもデモ更新も継続。にも関わらず数日経った今でも強制排除の動きはないのである。  軍隊の動きも不気味なほどない。クーデターが起こるのではないか? 強制排除に動き出すのか?……などなど、憶測が飛び交う中、まったく動きが見られない。  さらに言えば、バンコクのデモが行われていないほかの地域は、1月下旬時点では影響はまったくなく、大きな変化はない。飲食店なども通常通り営業しているのだ。  ’10年のタークシン派による反政府集会のときも後半の暴徒化するまでは平穏そのものだった。今も嵐の前の静けさといったところなのだろうか。  解散総選挙というひとつの着地点を失った今、宙ぶらりんのままデモも終わらず、政府側も強制排除する力もない。打ち上げられた以上いつかは着地しなければならないが、それが着陸なのか墜落になるのか、もう誰にもわからない。 <取材・文・写真/高田胤臣>
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